One misfortune followed ...
1、
「……ライの気配が消えた…」
フウはぽつり、と呟く。
戦闘はあまり得意ではない彼だが、気配を読むのは神の中でも随一のレベルでうまい。
そんな彼にとって、ライが強制返還されたのを察するのは簡単なことだった。
「…しっかしまぁ、ライはよわっちいからともかく残りが曲者ばっかで心配になるぜー」
神の面々を思い返しながら、フウはやれやれとため息をついた。
「で、」
フウはとん、と横にある木に触れると、
「おめー、今回の一件になんか関与しただろ」
「あらあら」
と、木から女性の声が聞こえてきた。
次の瞬間、自分の横にあった大木は気付けば人へと変わっていた。
否、正確には人ではない。フウやアイと同種の存在である――神だ。
「よーくわかったわね。木じゃなくて私だって」
「ふざけんな。俺は気配読むのは得意だっつの、リズ」
名前を呼ばれた女性はくすくすと笑う。
腰のあたりまで伸びる、ウェーブがかった綺麗なオレンジ色の髪に真紅の瞳。
肌は白く、目は少し鋭くキツそうな性格を顕著に表していた。
服装は胸の見えそうなくらいボタンの空いたYシャツにミニスカというなんともツっこみづらいものだったが。
「………、で、木になりすまして何してたんだテメェ」
「やだ怖い怖いー。すぐに怒る男はモテないわよ?」
「別にモテたい願望はない。…お前、天道翔の記憶になんか細工しやがったろ?」
「なんのことかにゃーん?」
瞳をキラキラさせながら、小首をかしげるリズ。
こういうふざけた動作をするときは大体誤魔化されている時なのだが…これは聞いても答えてくれなさそうだ。
「…大体おかしいだろ。アイツの中でのアイの記憶が消えてたのも変な話だし、このタイミングで思い出すのもいくらなんでもタイミングが良すぎる」
「あら、意外とよく見てるのね」
「これくらいは普通だ。お前、今度も何か企んでるのか?」
「安心してよー、これは私個人の企みじゃなくて上位個体からの頼みなんだから」
リズはパタパタと仰ぐ動作をしながらあっさりと白状した。
こうもあっさり白状されると思っていなかったので、フウは少しきょとんとしてしまう。
…まぁ、これが嘘である可能性もあるが…、
「おいおい、嘘なわけねーだろ。この嘘私になんかメリットあるか? よく考えろ」
「…相変わらずえげつねぇ属性だな」
「あらやだ。…もしかしてまだ怒ってるの? …“ヒナタちゃん”のこと…♪」
「――――ッ!」
ドクン、と心臓が大きくはねる。
いや、これは策略だ。ここで怒ったら向こうの思う壺だ。
そう思いながら、フウはリズの方を睨み付け、
「………今度何かしてみろ。…ただじゃおかねぇぞ」
「あら怖い。…肝に銘じとくわ」
最後にウインクだけすると、その場からゆっくりと去っていくリズ。
フウは特にそれ以上はしなかった。
ここで戦ってもメリットはないし、何より今の精神状態で彼女に勝つのは無理だ。
『ちっ…上位個体も他の神も何考えてんだっつの…!』
ただ1つ分かる事。それは――、
『今回のパーティー……一筋縄じゃいかねぇだろうな』
2、
急がないと。急がないと。
少女の心臓はいつもより大きくどくんどくんと音をたてていた。
自分にしては稀に見る全力疾走。二つに結んだ金髪が風になびく。
そんなに急いでいるのには勿論ワケがあって、
『早くしないと、あの人が…!』
慌てて路地裏へと入っていく少女。
しかし、もう遅かった。
少女が目にしたのは大量の血の海に溺れる1人の茶髪の女性。
「……っ、あ…」
どくん、と大きく心臓がはねる。
間に合わなかった。また、死なせてしまった。
その現実が、少女に重くのしかかった。
「…うっ、あぁ…あぁぁ…」
声にならない声が、その場に響く。
泣きそうな少女が最後に呼んだその名は――、
「……助けてください…アイ先輩……」
とある、銀色の髪を持つ綺麗な少女の名前だった。
To be continued...
終わった……
…終わったよアイ編…!!
およそ一年かかったんですね…うん、長い。
ここで一区切りですが、物語はまだまだ序章。
二人の物語は始まったばかり、といったところです。
翔くんはまぁ今後に期待ですね! どんどんヘタレから成長してほしいな、と。
次回からは新章突入ということで新たなキャラが出てきたりとか…にぎやかになります!
私の作品を知っている人ならわかるであろう、『彼』にスポットもあたりますのでどうぞご期待ください♪ ではまたー!




