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アヴェク・トワ  作者: リラ
Ⅰ Chicken and God
11/49

The calm before the storm

1、


 放課後になった。


 翔は荷物をまとめると、まだ教室にいるアイを尻目にそそくさと教室を出る。


 一応アイには、周りに怪しまれないようにバラバラに教室を出ようとは伝えておいたので大丈夫だろう。


『しかし、アイの用事ってなんだろうな…』


 本当は家に帰ってから合流でもいいかな、と翔は思っていたのだがアイが用があるから付き合ってくれと言ってきたのだ。


 そのため、生徒たちが少なくなるどこかの街中で合流するということになったのだが…。


『この辺でいいかな』


 しばらく歩いてきたところで翔は歩みを止める。


 そこはいつも食材を買う商店街の入り口の前だった。


 適当に歩いててここに向かう辺りに、翔の主夫スキルが見て取れるがまぁそこはとりあえず置いておこう。


 流石に商店街の前なら、学校の生徒はなかなかいないだろうしいいセレクトな気がする。


「いたいた。…待った?」


 しばらくすると、アイが翔のいるところまで歩いてきた。


 場所をすぐに当てたのも驚きだが、結構翔より後に出て来たくせに既にここに来ているのにも驚きだ。


「あ、アイさん。そんなに待ってないですよ」


「そりゃ良かった」


 そう言って少し笑うアイを見て、心臓がドクンと音をたてる。


 なんだかこのやり取りは、傍から見たらデートみたいではないだろうか…?


 そんなことを考えてから、翔ははっとするとぶんぶんと頭を振ってその考えを追い出そうとした。


『いやいや…! 相手も僕なんかまったく意識してないのを何を考えてんだか…!』


「あ、で、用事なんだけど、」


「あ、はい、なんですか?」


「…ちょっと、買い物付き合ってくれない?」


 ふへ? と思わず間抜けな声が出てしまう。


 しばらく状況が呑み込めないでぽかーんとしてると、アイは商店街の方へ向かってスタスタ歩き出してしまったので、翔も慌ててその後を追う。


「え、あの、買い物って…」


「言ったまんまよ。こっちで生活するにあたって、私何も持ってきてないからさ」


「ああ、生活必需品を買いたいってことですか?」


「それ以外に何かある?」


 まぁ、それなら丁度翔も晩御飯と明日の朝ごはんの食材などを買いたかったのでちょうどいい。


 アイの生活必需品を買うついでに自分の方のおつかいも済ますこととしよう。


 しかも今日は丁度商店街のセールの日だし…などと考えだす主夫翔。


 高校生のくせになんとも所帯じみた少年である。


「あ、で、アイさんは何が欲しいんですか?」


「そうねぇ…とりあえず服とかその辺かしら。天界から持ってきても良かったんだけど、現地で買った方がそこになじめるかなと思って昨日着てたのくらいしか持ってないから」


 なるほど、と頷く翔だが内心そういうもんかねーといった感じだった。


 いや、現地で買った方がなじめるのは間違いないかもしれない。


 しかし、ここ日本で銀髪碧眼の美少女がなじむかと言えば……答えはノーだ。


 当然先程からこの美少女は商店街の注目の的である。まぁ本人はあまり意識していないのだろうが。


「そういうわけだから、とりあえず服屋よ。案内して頂戴」


 はいっ! と元気よく返事をした翔だが、とはいえ女物の服など翔は買ったことがない。


 故にどの店がいいのか、そもそも女物の店を取り扱っている店がどこにあるのかすら把握できていない。


『って、勢いで引き受けちゃったけどどうしよう…。どっかいい店は…』


 翔はアイに「ちょっと待ってくださいねっ」と言ってから、ケータイを取り出す。


 そして慣れた手つきでメールを開くと、アドレス帳から新橋ユウマの名前を見つけてメールを打つ。


 この時何故かケータイを弄る翔を見てアイが目を輝かせていたのだが、そこは置いておこう。


 ユウマには妹がいる。ということは、妹に聞いてもらえば女物の店などもわかるはず…!


 そう思って送った翔だったが、その後すぐに返ってきたユウマの返事は以下の通りだった。


『ごめん、エリカはあまり服とかに興味ないからわからない』


「………、」


 ケータイを持ったまま、すっかり黙り込んでしまう翔。


 聞く相手をミスったかな…と思い意気消沈していると、続けてユウマからメールがはいった。


『服屋って結構店によって雰囲気とか違うからどういう服が欲しいかで選んだ方がいいんじゃない?

エリカは俺のおさがりとか着てるから参考にならないけど、とりあえず俺が知ってる店で良ければ教えるよ?』


 おおー! とケータイ片手に今度は翔の表情がキラキラと輝く。


 なんで女物の店を知っているのかは知らないが、まぁ彼が超人だからという理由でそこはオッケーだろう。


 持つべきものは親友だなぁ…などとしみじみしていると、またメールが入った。


『地図添付しといたからそれ見て向かったらいいと思うよ。追伸、女装でもするの?』


「いや、しないよ!?」


 思わずメールに向かって叫ぶと、横にいたアイが「え?」とびっくりしたように目を見開く。


 アイだけではなく、商店街にいる人々の視線が翔に向かって突き刺さった。


 あ、すいません…とペコペコ頭をさげる翔。


 それにしても確かにこの質問は誤解を生んだかもしれない。明日直接会って誤解をとかなくては。


「よしっ、お待たせしました…! じゃあお店まで案内するから行きましょうアイさん!」


「アンタ本当に大丈夫…?」


 訝しげな目になるアイに「だいじょーぶですっ」と受け答え、翔は商店街の中をずんずん進んでいくのだった。






 そうして、ユウマから送られてきた地図通りにやってきてついたのは可愛らしい外装のお店だった。


 ショーウィンドウには、もうすぐ夏だからだろうか――水着や浴衣などが飾られている。


「ここでどうですか?」


「うん、可愛いじゃない。合格っ」


 そう言って、満足げに笑うアイ。


 …しかし、合格、ということは変な店に連れて来たら不合格にされていたのだろうか。


 そう思うとなんだか色々と恐ろしく感じる翔だった。


 アイが上機嫌そうにドアを開けると、チリンチリンッと夏を感じさせる風鈴の音がした。


 内装も外装と同じく、緑とピンクのパステルカラーで可愛らしい装飾になっていた。


 翔の感想としては、とても男子校生だけで入れる雰囲気ではないなといったところだろうか。


「いらっしゃいませー、ごゆっくり見ていってくださーい」


 店員さんの声を聞き流しつつ、アイは店に入って早速品定めを始める。


 なんだかんだ真剣に選ぶその姿は、普通の女の子そのものだ。


『なんだ…普通に服とか興味あるんだな…』


 ちょっと安心しながら、翔は真剣なアイの横顔を見つめる。


 目は真剣だが、心なしか口元はほころんでいる気がした。


 そんな女の子らしいアイに少しほっこりしていると、


「彼女さんの洋服選びですかー?♪」


「うぇ!?」


 急に店員さんに話しかけられてオーバーなリアクションをとってしまう翔。


 この場合、彼女さんというのはアイのことをさしているのだろうか。


 翔は焦って「ち、ちがっ!」と言うが、焦れば焦るほど逆効果。


 店員さんは「うんうん、彼女さんには可愛い服きてほしいですよねー♪」とか言い出す。


 …ダメだ、この人聞いちゃいない。


「よしっ。では私が彼女さんを彼氏さん好みに変身させちゃいますよっ!」


「いやいや、だから彼女じゃなくてですね…! ってか僕の好みが分かるっているんですか!?」


「さー、彼女さん試着室へGOですっ!」


「いや聞いて!?」


 アイの方も状況が呑み込めてないのだろう。


 ぽかーんとしていたが、状況を飲み込む前に店員さんに連れて行かれてしまった。


 翔は「あーあ…」と頭を抱えるが、連れて行かれてしまった以上は仕方ない。


 大人しくアイの着替えを待つとしよう。そう思い、翔はすぐ近くのイスに腰掛けた。






「お待たせしましたーっ♪ 彼女さん変身完了ですよ!」


 10分後。


 何故かコスメボックスまで持ってきた店員さんがにっこにこの笑顔で翔の前までくる。


 さらに左手にコームを持っているところを見ると、これは髪なども弄られたようだ。


「もー、彼女さん可愛すぎますね本当…! てなわけで、彼女さん登場です…!」


「いや、だから、彼女じゃないんですけど……、」


 そこで、翔の言葉がピタリと止まった。


 カツン、というヒールの音と共にアイが試着室から出てきた。


挿絵(By みてみん)


 アイは自慢の綺麗な銀髪を横でざっくりとまとめ、薄らと化粧をしていた。


 服装は淡いピンク色のワンピースで、腰のところの大きなリボンが可愛らしい雰囲気を出している。


 正直、アイは元が良いんだから服装かえてもかえなくても普通に可愛いだろうと思っていた。


 しかし、予想以上に綺麗すぎて――翔はしばらくの間見惚れてしまった。


「あ、あの…ジャケット羽織らないとどうも落ち着かないんだけど…」


「これから夏よー!? あんな暑い物羽織ってどうするのよー!」


 ううむ…とアイは少々渋い顔をする。


 流石のクイーンもこの押しが強い店員さんには敵わなかったらしい。


 アイは少し頬をかきながら、ずっと黙っている翔の方を見て、


「…アンタ、何黙ってるの…?」


「うぇっ!? いや…」翔はかぁっと顔を真っ赤にしてから、「その…あまりにも似合っていたので…」


 と、素直に観念する。


 すると、アイはその言葉の意味を吟味していたのだろう。


 十分に吟味を終え、その言葉の意味を十分に理解したところで。


「………っ!」


 ぼふんっ、とアイの顔も真っ赤になった。


 どっちが赤いか、いい勝負な気もしたが翔はとりあえず恥ずかしくてアイの方を見れない。


 横で店員さんが「初々しいですねー♪」と笑っていたが、最早ツっこむ気にもなれなかった。


「…こ、こほんっ」


 アイはまだほんのり赤い頬のままわざとらしく咳払いをして、


「と、とりあえずこの服は気にいったから買うわっ。あ、あとそこにある奴適当に3着くらい頂戴。サイズはMサイズで大丈夫だから」


「ええー!? 折角彼氏さんの好みも分かったんですし私全部お選び――、」


「こいつは彼氏じゃない…!!」


 アイの気迫に負けたのか、店員さんはびっくりしながら「あ、は、はいかしこまりましたっ!」と在庫確認で店の奥へ引っ込んでいく。


 何故かぜーぜー言いながらアイは自身の財布の中身を確認し始め、その頃にはようやく翔の顔の赤さも引いてきたところだった。







「いやー、でもあのお店結構安かったしいいお店でしたね♪」


 両手に袋を持つアイに笑顔で問いかけると、アイは「まぁね…」とそっぽを向きながら返事をする。


 アイは折角なのでということで店で着た洋服のまま外を歩いているのだが、今は服の上からいつもの黒のジャケットを羽織っていた。


 それにしてもこのジャケットはよほど大切なものか何かなのだろうか?


 アイのにしてはサイズが大きすぎるような気がしなくもないのだが………。


「服は以上で大丈夫ですか?」


「…あんな店が何件も続いたら体力持たないしね…基本は制服だしとりあえずこれくらいでいいわ……」


「な、なんか服屋出てからげっそりしてません…?」


「うっさいばーか」


 翔はううむ…と考え込む。


 さっきから妙に返事が雑なような…、もしかして自分はアイのことを怒らせたのだろうか?


 そういえば、さっき服屋で服を褒めた時真っ赤になっていたが…あれはもしや怒りで真っ赤になっていたのだろうか?


『ど、どうしよう…! どれが原因か分からないけどアイさんを怒らせてしまったみたいだ…!』


 実際アイは照れただけで、別に怒っているわけではなかったのだが鈍感少年翔は気付いていない。


 これは一刻も早くアイの機嫌をどうにかしなくてはいけないだろう。


 そう決意すると、翔はきょろきょろと辺りを見渡し、


「あ、アイさん! あそこにクレープ売ってるんですけど食べますか?」


「…クレープ?」


 と、アイは怪訝そうな目で翔の指差すクレープ屋の方を眺める。


 やはり女の子を食べ物でつるというのはあまり良くなかっただろうか。


 そう焦った翔だったが、


「………、美味しそうねあれ」


 どうやら食べ物でつる作戦は思いの外成功だったらしい。


 そう言えば昨日喫茶店に行った時もこの少女は甘いものを頼んでいたし、甘党なのかもしれない。


「クレープ美味しいよっ。僕奢るから1つどうです?」


「……じゃ、お言葉に甘えて」


 アイの了承をえたので、翔はアイと一緒にクレープの屋台の方へ向かう。


 クレープ屋の周辺は女子高生を中心にわいわいと賑わっていて、盛況なのが手にとるようにわかった。


 翔はざっとメニューを見ると、


「あ、これ1つください」


 と手早く注文を終わらせる。


 先程のアイの反応から、クレープを食べるのは初めてのようだからスタンダードな生クリームとバナナとチョコの入ったやつにしておいた。


 そうして、しばらくして出来上がったクレープを受け取ると翔はアイに手渡す。


「はい、どうぞ」


「……わぁ…ありがとう…!」


 アイはふわぁ…っと周りに花が咲きそうな笑顔で微笑むと、お礼を言いながらクレープを受け取った。


 そして柔らかい生地に少し戸惑いながらもはむっ、と一口かじって瞳をキラキラ輝かせる。


「…む…美味しいー…♪」


「アイさんは甘い物好きなんですか?」


「うん、私甘い物大好きよー…♪」


 ほわほわした笑顔で受け応えるアイ。


 昨日今日通して一番の笑顔だ。食べ物でそれを引き出したっていうのがどことなく複雑ではあったが。


『ああ、でも今日1日でアイさんとだいぶ仲良くなれて良かったー…♪』


 そう思って、微笑んだのも束の間。


 ぬっ、と唐突に翔とアイの前に1つの影が現れた。


 誰だろう。そう思って顔をあげると、そこにいたのは見覚えのある男だった。


 金髪に青い瞳、日本人離れした身長。昨日見た時はフードを被っていたはずのその男は――、


「ライ…!」


 アイがそう叫ぶのと同時に、翔もはっとなる。


 そうだ、この男は昨日翔を空地まで誘導して、金の龍に襲わせた張本人。


 今日の昼、アイとフウが自分たちの最初の敵になるだろう、と言っていた電光を司る神のライだ。


「良いご身分だなクイーン。すっかり人間と慣れあっているようだが?」


 ライは歪んだ笑みのまましかも、と続け


「〝お前があんな目に遭わせた男の弟〟と――…」


「――――ッ!」


 ライの声を聞いた途端に、アイの表情がいっきに苦いものにかわる。


 ただ1人状況を飲み込めない翔は「え?」と首を傾げてアイを見るが、アイは特に何も言ってくれない。


「…えっと…、あんな目に遭わせたって…」


「なんだ、お前知らないのか?」


 何も聞かされていない翔と、何も言わなかったアイを嘲笑うかのように。


 ライは口の端をふっ、と釣り上げると、





「10年前、今お前の横にいる女が――お前の兄を殺したんだよ」





 ひゅーっ、と翔とライの間に冷たい風が吹き抜ける。


 え……と翔の口から声が漏れるが、それに対しての答えはなかった。


 和やかな空気から一転。その場にはしばらくの静寂が続いていた………。

唐突に英語になるサブタイトル…←

いや、普通に日本語で「嵐の前の静けさ」にするつもりだったのですが…「嵐の編入生」とかぶるんですよ嵐が!!←


まぁそんなわけで修羅場に突入の今回いかがでしたか?

今回はアイをいかに可愛く描くかに全体力を使いました←

そのため次回以降の修羅場を書き切れる自信がありません←書け


そんなこんなでいよいよ起承転結の転の部分!

皆様息をのんで次回お待ち下さい!← それではー♪

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