説明回な3話。
「まあ、いいわ。それよりも家に入れて頂戴。のど渇いちゃった」
「普通、男の家にそんな簡単に入らないだろうに…」
まあ、俺の女友達(彼氏持ち)も似たようなものだが…
そんなことを言いながらも鍵を開ける。
「あら、襲ってみる?」
「無理やりは嫌いなんで」
コレは俺のトラウマによるものだ。
二年前に今はいない近所のお姉さん(22)に襲われたことがあるという…。
いや、俺に鞭を…なんでもない。
うん。思い出さなきゃ良かった。
「ふう~ん。女としてはどう反応するべきなのかしら?」
「知るか。とっとと入れ。…お前じゃねえよ」
なぜか虎のほうが入ろうとした。
《ガウ?》
「だから、ガウじゃわからねえよ」
「と、いうか怖くないの?」
「…なぜかは知らんがな」
「ふう~~ん。私は朝神 春美。
ハルってよびなさい。名字で呼んだら殺すわ」
「…楠。椎名 楠だ。好きに呼べ」
とりあえず家に入ろう。
俺ものどが渇いた。
もう、六月も終わりだからか?
「ええ~と?」
「だからね、魔法よ魔法。あなたはそういうファンタジーに巻き込まれたのよ、楠」
絶賛頭の中が混沌とかしている。
なんか、すごいことが起きているのは分かった。
そうでもないとこの虎のことが説明つかないからな。
あ、ちなみにこの虎は現在、黒猫になって俺のひざの上に乗っている。
俺も魔法だとか魔物だとか信じたくないんだけど、目の前で虎が猫になったらね…
もう、幻覚とか言ってられない。
それに…
「時が止まっているとか…」
どう説明しろと?
俺が家を出た時間から一分も…一秒たりとも過ぎていないらしい。
なんか、魔物がどうたらこうたらで…
「もう一回説明する?」
「お願いします」
とりあえずもう一回説明してもらおう。
「とりあえずそういうもんだ、ぐらいの姿勢で聞くこと。
そうじゃないとまた、説明することになりそうだから。
もう五百年も前の話なんだけど、異世界が発見されたの。
なんで、とか、どうやってとかは聞くな。
そのときに神様が現れたの。
『この世界と他の世界がつながってしまった~』以下略。
てきなことがあったのよ。
それで、つながってしまった他の世界から魔物がこちらに来てしまったの。
だけど神様が『魔物が来たときは~』以下略で魔物が来たときには時間を止めてくれるのよ。
とりあえず町はある程度壊れないようになってるわ。
まあ、毎回壊れるんだけど、壊れにくくなってるわ。
それでその魔物に対抗するのが私たち。
この時間が止まっている中で動けて、なおかつ魔法などで戦える人たち。
とりあえずここまでで質問は?」
「あえて、神様の台詞を略したことは触れないでおこう。
俺は今まで普通に過ごしていたんだが?」
「大抵の人たちは後天的に目覚めるのよ。
これは後で説明するから、他には?」
「異世界は一つだけ?」
「今のところ第一~第三まで。
そして、魔界と精霊界、まだ観測されていないけど天界があるらしいわ」
「異世界から人が迷い込むこともあるのか?」
「ないわ」
「どうして?」
「世界と世界をつなぐ空間があるのよ。
異世界の人はソコに入ると死んでしまうの。
なんか世界の拒絶っていうらしいわ。
それで異世界の住人は入れない。
でも、この世界の人間は入ることが出来る。
そのせいで異世界に召喚される人や、迷い込む人がいるのよ。
所謂、神隠しってやつね」
「最後にこの虎は?てか、今は猫だけど」
「これから説明するわ。
さっき後天的に目覚めるって言ったことからね。
人は皆潜在能力と呼ばれるものがあるの。
人によるけどこれが目覚めると力が5~10倍になるのわ」
「10倍…」
「人によってはさらに上よ。
私は低いほうで三倍ぐらいだったかしら。
まあ、鍛えればさらに上がるからなんともいえないんだけどね。
それでなんらかの拍子に目覚めた人たちは覚醒者って呼ばれるわ。
目覚めの前兆は人によって色々あるわ。
高熱が出たり、血を吐いたり…軽いのだと筋肉痛になったとかいうのもあるらしいわね」
「筋肉痛って…」
「全身が痛かったんだけどね…」
「ハルがなったのか!?」
「そうよ。何か文句ある?あるならぶっ飛ばすわよ」
「ありません」
聞いてすらくれないらしい。
「そう。ならいいわ。
それでたまに特殊な人も居るのよ。
楠みたいにね」
「やっぱ特殊っすか」
「そう特殊。あなたの場合は『契約者』の才能があるからこうなったんでしょうね。
あ、契約者ってのは使い魔作ったりまあ、色々出来るわ。詳しくは知らないけど。
他にも魔眼に目覚めたり、体が変形したりする人もいるわ」
「魔眼!?変形!?」
「それであなたの場合はその使い魔を魂で創っちゃったらしいわ。
あ、私も分からないから質問は無しで」
「なんだか、昨日が懐かしく思えてきちゃったよ…」