虎にあった1話。
少年の名前は椎名 楠。
現在全力疾走中。
歩いて四十~五十分くらいの中学校に通う三年生。
いつもは自転車で行くのだが…残念なことに現在パンク中。
「ぜぇ…ぜぇ…。もう…無理……」
残念なことに楠の体力は限界であった。
走って三分ほど。
楠は体力が無い。
昔から異様にスタミナが無い。
スポーツに関しては技術的にはすごく出来るとはいえないが平均より少し上。
でも体力がすぐに尽きてしまう。
本人曰く改善不可能。
残念なことに毎日ランニングをしていても体力が増えることはない。
0ではないがほとんど変わらないレベル。
それでも続ける理由は特になし。
あえて挙げるとすれば体育で筋肉痛にならないようにするため。
「くそッ…!母め…!」
なぜ今日起きれなかったのかというと目覚ましが壊れていたのである。
一週間ぐらい前に母親に壊されてしまったのである。
なぜか目覚まし機能だけが壊れてしまうという面白いことが起こってしまった。
ちなみにその母親は昨日、
『結婚記念日だから柊さんと一緒に海外に二週間ほど旅行に行って来るから』
などと言って出て行ってしまった。
ちなみに柊というのは楠の父親のことである。
母親の名前は水野である。
二人は金だけ置いて海外に行ってしまった。
目覚ましを使っていないのは母親が壊してからは母親が起こしにくるようになったからである。
「せめて携帯買ってくれよ…」
携帯についている目覚まし機能なんかが使えればいいのだろうが携帯は高校に受かってから…
だそうだ。
「この際もう今日は休むか?」
現在地点から学校までより家までのほうが近い。
「いや、行かないとダメだな…」
楠は出席日数を気にしている。
知り合いに出席日数が足らずに受けた高校全部に落ちた現在ニート(20)が居るからである。
自称漫画家であったりもする。
今のところ全部落ちているが…。
「ん?そういえば人が居ないな…」
人とすれ違うこともない。
人の声が聞こえてくることもない。
周りの家にも人が居る気配がない。
「ふう…。気配とか何考えてるんだよ俺…」
人が居る気配がない(キリッ)
黒歴史が一つ増えただけである。
「それにしても暑いな…。いや、熱いな」
熱があるのかというぐらいに熱い。
決して黒歴史が増えたからではない。
これは楠がさっきから感じていることである。
「体調悪いのか?やっぱり帰ったほうが良いな…」
そして後ろに向けて歩き出そうとしたその瞬間。
《ガルル…》
漆黒の虎がいた。