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【Utopia】

二人の後日談です(*^o^*)



時は廻って、五年の月日が経った。


側には年月を重ねてますます美しくなった愛しの恋人の姿がある。手で招けば、美しい着物に身を包んだ彼女が微笑みながら僕の手を取った。

その手を引いて抱き寄せれば彼女は一瞬驚いたような顔をするが、嫌がることはせずに僕の腕の中にすんなりと収まった。


いつのまにか伸びた身長は彼女を見下ろすくらいになっていて、理想の身長差じゃないかなぁと我ながら思ってる。

確かどこかの雑誌に載っていたカップルの理想的な身長差は20センチ。

つまり、彼女が背伸びをしてようやくキスが出来る、というやつだ。


彼女とキスしたときのことを思い出して、自然に顔がにやける。

だらしない顔になっているのは自覚していて、しかし彼女はしょうがないの一言で僕のことを許容してくれるから、最近益々表情に締まりがなくなっている気がする。


「ねえ茉莉先輩、キスしてもいいですか?」

「ん?……しょうがないわね」


出会った時には許されなかった呼び名を、大事に口にする。

クスリ、と笑って。そんな風に許容してくれたので、お言葉に甘えてゆっくりと顔を近づける。

あと唇まで数センチ…………。






「―――せ?なるせ、成瀬、……成瀬ってばっ!!」




「っうわぁ!はっ、はいぃ!?」

突然の怒声に慌てて飛び起きると、呆れた顔をした先輩の顔が近くにあった。

…………ん?起きる?

「えっ、嘘……夢?」

よく思い出せば、サークルで遅くなるという先輩を中庭にあるベンチで待っていて、夏のベンチのその暖かさにウトウトしてしまったのだと分かった。

「いくら夏だからって、そんなとこで夕方まで眠ってたら風邪引くわよ。……まあ、待たせて悪かったけどさ」

そう言って眉をひそめる姿は夢の中とは違いまだどこか少女じみた美しさがある。そんな眉をひそめた姿さえ美しいのは、最近出来たばかりの恋人。高天たかあま 茉莉まつり先輩。

散々一方的に追いかけ回した日々を思い出すと今更ながらに顔が赤くなるが、当時はいっぱいいっぱいで、なりふり構っていられないくらいののめり込みようであったのは否定できない。

まあ、未だに好きすぎる自分は否定しないけれど。


まあ流石に自分も付き合い始めて4ヶ月ほどたてばそれなりに落ち着いたというかなんというか。

あの周りが見えなくなるほどの熱情は落ち着いてくれたみたいだ。


しかし、彼女のことは実はあまりよく分かってはいない。


付き合うことも許してくれたし(花を使って告白というなんともロマンチックな真似までしてくれた)、愛されてないとは思わないが、そこは年上のプライドなのか絆されてくれたというだけなのか、それ以上のテンションで僕が絡み続けたせいなのか、いまいち蜜月というには程遠い生活だった。



先輩に見えないように小さくため息をつきながらベンチを立つと、同じくらいの目線に美しい彼女の顔がある。

男にしては小柄な僕と、女性にしては背の高い彼女。

夢に見た20センチの身長差は程遠いらしい。


(……というか、そんな日くるのかなぁ)


「僕、スポーツでも始めようかなぁ」

「はぁ?何よ突然に。それに成瀬は運動神経壊滅的なんじゃなかったっけ?」

「うぅ……まあそうですけど……って、なんで先輩が知ってるんですか!?」

「馬鹿ね、あなたが自分でペラペラと喋ってたんじゃない、付き合うより前に」

言われて、確かにそんなことも言ったっけか、なんて思い出した。

「はぁ〜……」

トコトン、僕はダメなやつらしい。


隠すことも忘れ盛大にため息をついた僕を見て、茉莉は綺麗に整った眉を寄せた。

「……まだ、怒ってるの?」

「へ?」

ため息をつくその姿に、茉莉は自分が待たされて怒っていると、そう判断したらしい。

「まあ、想像以上に待たせてしまったのは私だけれど……でも、勝手に待ってるって言い出したのは成瀬だし、私だけのせいではないわよね?」

拗ねたような口調で早口に言葉を紡ぐ彼女が可愛くて、否定しようにも否定しづらいというイタズラ心が芽生えてしまう。

「……」

しょげたような顔をして俯いてみせると、彼女は焦ったように思案している。


……最近気付いたことだか、彼女は僕のこの拗ねたような、狼狽えたりするときの感じに何故か弱いらしい。

全く理由は見当がつかないけれど。


案の定。彼女は焦ったように、彼女にしては珍しく拗ねたような声を上げた。


「あぁ〜もうっ!ごめんって言ってるじゃないっっ」


言うな否や、あっと言う間に襟首を掴まれて唇に何か柔らかなものが押し付けられる。



―――――チュ



音を立て直ぐに離れたそれは、甘い彼女の唇。

硬直した手足と一瞬にして活動を停止した頭でそれに気付いたときには、彼女は早足に学校を立ち去ろうとしていた。



「えっ、ちょ、ちょっと……っ、先輩!待って下さいってばっ!」






それが、僕たちのファーストキス。



僕は、一気に上がったテンションとそれに呼応するかのような早足であまり素直じゃない彼女のあとを追う。



夢じゃ味わえない、高鳴る胸の鼓動とトキメキ。





それは夢を見ずとも続いていく、僕等の理想郷(ユートピア)






END



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