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不協和音

ヒロユキ「兎に角・・我々の力を団結させてなんとかこの危機を乗り切り・・・」

鬼山「お断りだ!!」鬼山はノーボディの方を見つめて怒鳴った。

鬼山「こんな不気味な野郎と手を組めるか!!それにお前もだ!!」鬼山はヒロユキを指さした。

鬼山「俺はな・・昔から騎士や貴族って連中がでえ嫌いなんだよ!!奴等は自分達を特別な人間だと思ってやがる・・そんな奴等を信用できるか!!」

ノーボディ「クックックックック・・・・・」再びノーボディが含み笑いをはじめた。

ノーボディ「盗賊のアンタが言えた義理かい・・」そしてゆっくりと立ち上がった。

ノーボディ「それに・・最初から変だと思ってたのよね・・この討伐隊、あまりにも外国人が多くない・・・?」

皆がハッとした。

バレンタイン「言われてみれば・・さっき頭を砕かれたヤツも肌の色から見て山岳地帯のダタール族の出身だ」

レオナルド「変ですね・・自国民からも多数の志願兵が募ったというのに・・・」

一同の中に奇妙な疑念が湧き起こった。

ノーボディ「たまに自国の民がいたとしても・・・彼のようなすねに傷を持った連中ばかり・・・」

ノーボディは鬼山に軽く目配せした。

鬼山「な・・」鬼山は何か言おうとしたがノーボディは構わず続けた。

ノーボディ「軍隊は何よりも規律を重んじる。普通、彼のような輩は選考で真っ先にはじかれるはず・・ところが、わざわざ特赦の話まで持ち出して犯罪者を軍に加えたのみならず、自国からの志願兵達は悉く排除されている・・・この奇妙な選抜から導き出される答えはただ一つ」

ノーボディはヒロユキ近衛隊長の周りをコツコツと歩きながらその距離を詰めていった。まるで法廷で罪人を尋問している検察

官のような足取りだ。

ヒロユキ「・・・・・・・・」ヒロユキは額に汗を浮かべていた。

ノーボディ「この戦・・ 

端 か ら 勝 つ 気 な ん て な か っ た ん だ ろ う・・・」

一同「・・・・・・・・!!」その場の空気が凍り付いた。

ヒロユキ「フー・・ッ」ヒロユキは深くため息をつくと全員に向き直った。

ヒロユキ「やれやれそこまで分かっているのなら話は早い・・出来ればもう少し君たちと一緒に戦っていたかったんだがこうもあっさり見抜かれるとはね・・・」

彼は一同に背を向けると、聖堂の巨大なマリア像の下へとつかつかと歩き始めた。そこで彼は壁に向かって掌をかざすと2,3

言呪文のようなものを呟いた。

しばらくするとゴゴゴと低い音が鳴り響き、壁が割れたかと思うと人が一人通れるほどの通路がそこに現れた。

シークレット・ドア(隠し扉)だ。

ヒロユキ「この通路は外部へ通じている・・ゾンビの軍団を避け、無事に安全なところまで辿り着くことが出来るだろう・・・」

その言葉に一同は驚喜した。

鬼山「やるじゃねえか!!これで俺達は助かったぜ!!」

だが、次の瞬間ヒロユキは悪魔のような凍てつく瞳で腰の得物、名刀村正を抜いた。

ヒロユキ「しかし、悪いがこの道を通れるのは私一人だ・・・」

鬼山「なに・・・?」全員が面食らった。

バレンタイン「どういうことだ・・・」

ヒロユキ「・・・お察しの通り私・・いや、我々シャンパーニの幕僚は今回の討伐隊が最初からネクロマンサーを倒せるなどとは思っていない。そもそもこんな寄せ集めの軍隊だけで勝てるようならとっくにやっている・・・」

ヒロユキは切っ先を向けながら全員の動きを鋭く制止している。その動作にはまったく隙がない手練の技だ。

ヒロユキ「だが・・君たちにはまだここに残ってネクロマンサーと戦ってもらう」

鬼山「ふざけるな!!!」喧嘩っ早い鬼山がヒロユキに向かって鉄球を投げつけた。

 ギィンッ!! だがそれはまるでソフトボールのようにヒロユキに打ち返されて鬼山に返ってきた。

 ドゴーン!! 鬼山の頬をかすめ鉄球は背後にあった燭台を破壊した。

ヒロユキ「・・・かつて私は精鋭部隊を率いてヤツ(ネクロマンサー)に戦いを挑んだ・・・だが、結果は惨敗だった。不死の軍団は人間の軍隊ではまるで歯が立たなかったのだ。ヤツらはその軍隊をも吸収し、さらに強大になっていった・・・

我々はただなす術もなくこの国が死者共に蹂躙される事に怯えるしかなかったのだ・・・

しかしそんな矢先ヤツからあるメッセージが届けられた」

ヒロユキは辛辣な表情を浮かべながらも言った。

ヒロユキ「“勝てる勝てないに関わらず軍を送ってくる限りは国土の安全は保障する、もう少し楽しませてくれ給え”とな・・・」

彼は歯を食いしばっていた。余程悔しかったのだろう・・

ヒロユキ「ヤツは・・遊んでるんだ・・・!!我々の必死の抵抗を楽しんでいるんだ・・・」

瞳には悔し涙を浮かべていた。

ヒロユキ「我々はその挑発に乗ることにした・・ヤツの“遊び”に付き合っているうちにヤツの弱点を見つけ出し、なんとしても反撃に転じるために・・・・!」

バレンタイン「成る程・・それで自国民ではない俺達が選ばれたってわけか・・・」

ノーボディ「つまり私たちはネクロマンサーを倒すためではない・・いわば“生贄”として呼ばれたわけね・・・」

その場にいた全員が絶望に打ちひしがれた。

レオナルド「そんな・・・」

ナイチンゲール「ひどい・・・」彼女はへなへなと床へ崩れ落ちた。

ヒロユキ「・・・否定はしない。私は軍人だ・・何よりも自国の民のことを優先して考える」

ノーボディ「フン・・こっちは飛んだ災難だよ」ノーボディは皮肉った。

ヒロユキ「・・・だが、君たちにもまるで勝ち目がないわけではない。ヤツは言っていた・・これは“ゲーム”だと。プレイヤーにはちゃんとチャンス(勝ち目)を残してやると・・・」

ノーボディ「プレイヤー・・?」

ヒロユキ「これは私の憶測だが・・ここに集まった君たちは偶然生き残ったのではない。ヤツの手によって最初から“生かされて”いたのだ。ゲームのプレイヤーとしてね」

一同「・・・・・・・・」

ヒロユキ「ヤツの言うチャンスというのがどのようなものか分からないが、上手くいけば或いはヤツを倒せるかも知れない本当は私も残ってヤツと戦いたいのだが、私には“次”の討伐隊を率いなければならない任務が残っている・・」

ノーボディ「アンタまた同じ事やる気・・?」ノーボディは少し呆れていった。

ヒロユキ「・・・では、健闘を祈る!」

言うが早いかヒロユキは背後の通路へと飛び退いた。と同時に再び壁がゴゴゴと鳴り響き、今度は内側へと閉じていった・・

あとには元の石壁だけが取り残された。

鬼山「あんの野郎ォォォ〜〜〜!!!!一人だけ逃げやがったーーーーー!!!!」鬼山は激昂して調度品を破壊している。

ノーボディ「フン・・人にクソゲー押しつけといてね・・・自分だけ降りようなんてそうはいかないよ・・・・」

呟きながらノーボディはあいかわらず死んだ魚のような目でヒロユキの消えた壁を見つめていた・・・


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