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生き残った6人

生き残った者達が逃げ込むと、最後に三角帽が呪文で出入り口と窓の全てを塞いだ。

三角帽「鉄の掛け金は内と外を隔てん 如何なる者の訪来も拒む」

魔法の鍵による封印の呪文。ゾンビ達は集団で襲ってくるのが恐ろしいものの、力はそんなに無いので扉をぶち破

って侵入してくることは出来なかった。生き残った者達は今しばらくの安全を確保されたのである。

しかしその間にもゾンビ達は次々と集まり、そのうねりは不気味なざわめきとなって教会の周りを取り囲んだ。

三角帽「持って一晩ってところか・・・」

レオナルド「あ・・あの・・さっきはありがとう。助けてくれて・・・・・」

少し落ち着いたところでレオナルドははにかみながら礼を言った。

レオナルド「あの・・怪我はありませんか?一応看てもらった方が・・・」

レオナルドが三角帽の腕をとろうとした時

 パンッ 三角帽はその手を振り払った。

三角帽「私に触るんじゃない・・・」

瞬間レオナルドはぞっとした。

レオナルド(何だこの人の腕・・まるで・・死人のように冷たい・・・)

おののいているレオナルドを三角帽は死んだ魚のような目で睨んでいる。

避難者の中には負傷兵も混じっていて聖堂の一角で苦悶の声を上げていた。

負傷兵「い・・・いだい・・・くるしい・・・・・・・」

僧侶と思しき女性がその兵士に必死に回復の呪文を唱えていた。

女性「慈悲深き癒しの神よ・・非業の苦しみよりこの者を解き放ち給え・・・」

だが、必死の祈りも届かず負傷兵は傷口がどんどん土気色に変化し、それが全身に広がっていく・・・

典型的なゾンビ化の兆候である。

女性「駄目だわ。通常の回復魔法ではゾンビ化の進行は止められない・・・」

レオナルド「一体どうすれば・・・」心配になって駆け寄った。その時であった。

「どいてろ!!」野太い声がしたかと思うと凄まじいスピードでドッチボールぐらいの黒い塊が負傷兵の頭を砕いた。

 ドチャッ!!!

それは鎖に繋がれた鉄球だった。

2m近くはあるかという大男がその鎖を手繰り、鉄球を手元に引き戻した。

袴に着流し、左手には一升瓶を持ち足下はなんと下駄だった。戦士というよりヤクザの親分のような格好だ。

女性「何をするんです!?まだ彼は助かったかも知れないのに・・・・・・」

三角帽「無駄だね・・ゾンビ化がはじまった者はもう助からない・・・」三角帽がいつの間にか傍に来ていた。

女性「・・・・・・・だからって・・何も殺さなくても・・・」

三角帽「まだ“人”であるうちに頭を砕いてやった方が親切ってものよ・・」

女性「・・・・・・・・・」女性は涙目になって2人を見据えた。

大男「おおっと・・俺を責めるなよ。アンタが悪いんだぜ!

   アンタの僧侶としての力が足りねーから、アイツを助けられなかったんだ」

女性は今にも泣きそうな顔になった。

レオナルド「ちょっと待って下さい!!」レオナルドは立ち上がって抗議した。

レオナルド「そんないい方ってないんじゃないですか・・・彼女は自分なりに一生懸命やったんですよ!それを・・」

大男「ほう・・だからどうだってんだ・・・懸命にやりゃ何か奇跡でも起こるってのか?

だったらちょっくら外に出て周りのゾンビ共を焼き尽くしてくれねえか・・・

大魔法使いさんよぉ!!!」

レオナルドの襟口を掴んで、大男は小馬鹿にした口調で宣った。

 カンッ!

その時投げナイフ大男の鼻先をかすめ、大理石の石柱に突き刺さった。石柱に突き刺さるところを見ると可成りの手練れが投げた物だと判る。

声「オイ、でかいの。男のヒステリーはみっともないぜ・・・」

見ると無精髭を生やしたニヒルな男が数本のナイフを弄んでいた。黒のスーツをスタイリッシュに着こなし可成り文明の進んだ国から来たのが見て取れた。

指揮官「彼の言うとおり・・今はこの状況から如何にして脱出するかが問題だ・・・」

討伐隊の指揮を務めていた青年剣士が生き残った者達の前に進み出た。

指揮官「私の名はヒロユキ・ソードマスター。ジャンパーニ国の近衛隊長にして今回討伐隊の指揮に当たらせてもらった者だ・・」

言い終わらないうちに大男がもの凄い剣幕でドスドスドスっと駆け寄った。

大男「おうっ!!だったらお前が今回の失態の責任者か!!

どうしてくれんだよ、テメエの間抜けな采配で俺達はなぁ・・」

黒スーツの男「よさねえかみっともない・・今奴を責めたところではじまらねえだろ・・・」

一触即発の張りつめた空気を黒スーツの男が冷ややかに宥めた。

大男は少しムッとした表情だったが、少し冷静になったらしく振り上げていた拳を引っ込めた。

大男「チィッ・・これだから貴族階級って奴等は嫌いなんだよ・・・」

ヒロユキ「確かに・・今回の失態は私の不徳の致すところだ・・・

籠城したはいいがこうしている間にも死者の群はどんどん増大している。

とても正面突破は不可能だろう・・・」

三角帽「それに・・おかしいと思わない・・・?」

隅でうずくまっていた三角帽がおもむろに口を開いた。呑気にガム風船などをふくらませている。

三角帽「これだけゾンビが集まっているのに・・・ゾンビ同士は何故共食いしないのかってね・・・」

三角帽「クックックックック・・・・・」そして含み笑いをはじめた。

パン・・とガム風船が破裂した。大男が切れた。

大男「お前状況が分かってんのか!!俺はそういうスカした野郎が一番嫌いなんだよぉ!!!」

 ドガッ!!! と三角帽のもたれかかっている石壁をぶったたく。

レオナルド「ちょっといい加減にして下さい・・!今は争っている場合じゃないはずです。

何とか生き残ったボク達で力を合わせ・・ここから脱出する方法を考えないと」

レオナルドが仲裁に入った。

ヒロユキ「そうだとも・・取り敢えず君たちの名前と出身・・それとクラス(職業)を教えてくれ」

レオナルド「ボクの名はレオナルド。魔法王国のスローベンから来ました。」

女性「私はナイチンゲール・・ここより遙か北のロシキアという国の出身です。クラスは僧侶・・」

黒スーツの男「バレンタイン・・賞金稼ぎをやっている。暗黒街ヨークシティの出身だ」

大男「鬼山だ・・」大男はふてぶてしく名前だけ名乗ると手にした一升瓶をグビグビとあおりはじめた。

バレンタインが眉を上げた。

バレンタイン「“鬼山”だと・・確か手配書で見たことがあるぜ。この国じゃ結構有名な盗賊団の頭じゃねーか・・・そのお前がどうしてこんなところに?」

鬼山「ちょっとまえにドジを踏んで捕まっちまってな・・処刑されそうになったところを特赦の話が舞い込んだのよ。この任務を無事全うできれば無罪放免ってのを条件に俺は討伐隊に加わったってわけよ」

最後に三角帽が静かに口を開いた。

三角帽「ノーボディ・・国はない。ただの流れ者だ・・・」その言葉にその場にいる誰もが訝しがった。

鬼山「ノーボディ(誰でもない)だと・・?ふざけるな!!」

だが、ノーボディはただ何食わぬ顔を浮かべガムを噛むだけだった。その沈みきった瞳からは不気味な眼光を放っている。

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