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勇者を利用する者たちの冒険 SPINOFF STORY  作者: とり飼ジン


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氷熱(ひょういき)のナギ ③


 ダイムウ村の近くの森には『鬼』が住む。

そういう噂が広がったのは白髪で純白な肌の少女が魔物の返り血を浴びながらも狂気的な笑顔で魔物を斬り裂いて行くのを見た者達が広めた事が始まりである。

だが現在、『鬼』はいなくなった。『鬼』は村に集まる魔物を退治し、勇者と旅を始めていた。


これは、ナギが勇者パーティと旅を始めて数日後の物語。



 ●●●



 リリネッド、クロウそしてナギはリクスタル街で一休みしていた。

酒場と集会が同時にやっている場所で3人は食事をしていた。

クロウは集会所でお金になりそう仕事を探していたが当日で済ませそうな仕事は見つからなかった。


「クロウ、いいクエストあった?」


「いいや、やっぱり、さっくと稼げるクエストはなかった」


「なんでもいいじゃろう、少しでも金になるのなら文句を言っている場合じゃ~ないじゃろう」


「それもそうだな。じゃ~、これはどうだあ?」


 クロウが見つけたクエストの依頼書を二人は読む。


「深夜の墓場で盗賊が暴れる」


「止めてくれたものに金9千を与える。と書かれているのじゃ」


「金9千っていくら?」


「まあ~、数年は働かなくてもいいぐらいかな。(たしか)」


「つまり、なんじゃ、金持ちになるってことじゃな」


「やった~!」


「で、深夜までまたないとダメってことじゃな」

 

 3人はそのクエストの依頼を受ける。そして深夜の時間まで待つことにした。

リクスタル街から少し離れた場所にある墓場に下見しに一人で勝手に誰にも言わずに、リリネッドは来ていた。


「ここがクエストだね。みんなが居なくても私、一人で出来るってところを見せやる」


 そんなやる気満々のリリネッドの背後に怪しい影が近づく。



 ●●●



 深夜、いつまでたってもリリネッドが帰ってこないことに、心配するクロウ。


「こんな時間まで、あの子はどこ行っているのかしら!!」


「お母さん? そういえば、先に行ってくるって言っていたような。どこに行くのか聞いていなかったがまさか」


「絶対にそのまさかだよ。アイツは何しでかすか、わからん奴だ」


「マジか」


「マジだ」


「まったく、困った勇者じゃあ」


「とにかく、行くぞ」


「ああ」


 二人は急いで近くの墓場に向かった。

白い霧が立ち込める場所にある墓場を歩いて行くと人一人の僧侶が墓に手を合わせていた。


「おい、そこの長髪眼鏡男!」


「はい?」


「ここで剣を背負った少女を見なかったか」


「見てないですよ」


「お主はここの者か?」


「はい、そうです。ここの管理を任されている、ゴスゴートスと申します」


「じゃ~、お前がこの依頼をした物かな?」


 クロウは依頼書を見せる。


「はい。確かにその依頼をしたのは私ですね」


「そうか」


 クロウは顎に手を当てて考え事をする。

その横でナギは話しかける。


「なあ、ここの墓場はそんなに広くなさそうじゃあ」


「だから」


「二手に分かれて探せば痕跡ぐらいは見つかるのでは?」


「そうかもな」


 そんな話をしている所にゴスゴートスが話に入って来た。


「ちょっと待ってください、依頼を受けているとは言え、一人で行動しているのは危険ですよ。それに勇者さんがすぐに見つかる可能性は低いですよ」


「じゃ~、サクッと依頼を完了すればいいって事だろうが」


「面倒じゃが、その方が早そうじゃなぁ。で、盗賊はまだ来ていないのか?」


「た、多分。もうそろそろかと思います」


とか話していると剣を持ちながらギギィ、ギギィと歯を食いしばるような音を立てながら一人の盗賊が向かって来た。


「あれか?」


「だと思います」


「クロウ、アレはワシはヤル。お前はそ奴を守っていろ」


「おい、ナギ!」


「問題ない、ワシはお前らパーティの前衛じゃろが!!」


 ナギが刀を抜いて、盗賊に向かって行く。

離れて行くナギの後姿を見つめながらクロウはゴスゴートスに忠告をする。


「俺に魔術を仕掛けるならもう少し魔力操作を抑える努力をするべきだぜ」


 ゴスゴートスはクロウの後ろで二つの指に禍々しい魔力を溜めてクロウに放とうとしていた。


「くっ!!」


「で、説明して……ん!?」


 クロウが立つ地面から手を出てきてそのまま引きずり込められた。

体が完全に土の中に入り顔だけになったその隙を見て、ゴスゴートスは魔術を掛けた。

クロウは完全に地面の中に埋め込まれていった。



 ●●●



 ナギは盗賊と刃の削り合いをしていた。


「お主、なかなかの腕を持っているな」


「・・・・・・」


「どうした、喋り方を忘れたかぁ?」


「・・・・・・」


「そうか、理解した」


 ナギは刀に剣士の魔術を使う。


「(魔力を使うぞ! 魔烈刀!) 『火傷無し内熱(ホットシンフラッシュ)』」


 ナギは盗賊を魔力が込めた刃で盗賊切り裂き貫通させた。


「安心するのじゃあ、切り傷はない。斬ったのはお主の体の中にいる魔物だけじゃ」


 盗賊は苦しみながら口から小さくながい魔物を吐き出した。

出て来た魔物はウネウネと激しく動き終えるとサッサーと消えていった。

嗚咽を多少した盗賊は息を整えてナギに向かって話す。


「あ、ありがとう。助かった」


「お主は」


「俺はニチリクだ! 中央国の七番隊の隊員だ」


「中央国? なんじゃそれは」


「中央国を知らないのかいお嬢ちゃん? わかりやすく言えばこの世界の王が住み、世界王国の管理と最高の貴族達が集まっている場所だよ。まあ一般人もいるけど」


「(上様や将軍の様な物か。この世界もそんな奴がいるのだな) そうか。お主はなぜこんなことをさせられていた?」


「そうだ! 俺以外にも仲間が捕まっている!」


「おい、ワシが話を持ち込んでいるのじゃ。新たに話を作るのではない」


「急がなければ」


「おい、待たれ!」


 急に走り出した、ニチリクだったが一瞬にして体が赤く黒く膨らみだして爆発した。


「な、なんじゃ!!」


 ナギが驚いている背後から殺気を感じて振り向き、すぐに刃を向けて攻撃を止める。

向かってきた者はニチリクと同じ様な歯を食いしばったような状況であった。


「お主もかあ。これをやった奴は相当な外道じゃな。吐き気がするほどのクソ野郎じゃあ!! (だがどうしたものか……。そうだ!) クロウ!!」


 ナギはクロウの方を見るが姿が無かった。


「どこへ? あの僧侶もいなくなっておる」


 ナギは攻撃してくる者の一瞬のすきを見て気絶させる。


「すまぬ、今は少し考え事を…な!?」


 気絶させた者の体が膨らんで爆発した。

ナギは目を見開き口を開け、呆然としていた。

と同時に強くたまらないほどの怒りが湧き上がって来た。


「本当にこれやった奴は、最悪なクソ野郎じゃあ!!」


 ナギは目を瞑り。全体に全身に集中して気配を感じ取る。人の呼吸、人の魂、人の熱、そして人の来た者の魔力。それらを感じ取るために。

気配はいくつもあった。その中で一番、邪悪な魔力を上空から感じ取ったナギは魔力を込めた刃を上に向かって斬撃を飛ばした。大きく鋭い斬撃は何かを斬り裂た。

ナギの目に入ったのはいくつもの結ばれた糸といくつかの手足が生えた人が下りて来た。


「お主だな、すべての元凶は……ゴスゴートス」


「くっ!!」


 ゴスゴートスはナギに斬られた左腕を抑える。


「なぜ!?」


「いくつか聞きたい事があったのじゃあが、もうよい。お主の顔を見たらそんなことどうでも良くなったわい」


 ナギが斬りつけようとしたその瞬間、ゴスゴートス顔が膨らみだした。


「まさか!」


「そうだ、私も同じだ」


 ナギは怒りだして叫び上げる。


「改めて聞こうじゃないか、ゴスゴートス。これはなんじゃ!?」


 ゴスゴートスは何かの気配を感じながらどこかの誰かから返事をもらいそれを頷く。


「私はここの僧侶ではなくただの旅人だった者です。でもお金がなくよく墓場から食べ物やお金になる物を拾っ売ったりしてました。そんな時、彼と出会った。魔帝界の住人のクースパーモという者に」


「クースパーモ」


「その者の肉片を微力な魔力を人の体に飲み込ませて、肉片が離れると残った魔力が爆破する仕組みをしてあるんです。クースパーモは肉片を取り出さんくても無理やりでも爆発させることが出来ます。彼は決して姿を出しません。突然出てきて、突然体に肉片を埋め込ませるのです。は、早く、私達を救ってください」


 泣き出すゴスゴートスを見てナギは冷たい目をする。


「なあ、ゴスゴートスよ」


「はい?」


「お主、鏡で自分を見たことがあるか?」


「それはどういう」


「お主の姿はまるで魔物の姿じゃだぞ」


「な、なにを」


「どうしてそうなったのか。ワシには理解はできないが。 (魔物の自分と人である自分の両方の人格があるのか、それとも騙しているのか? そんなこともうどっちでもいいこと)」


「ま、まさか私を斬るのですか!?」


「お主はワシらが仲間を訪ねた時から変な感じはしていた」


「ん?」


「まず、盗賊相手に大金を出す事、深夜に危険だと言われている場所に戦闘に不向きな僧侶が一人でいる事、そして何よりもワシ達は一度も『勇者』と呼んでいなかったのにお主は勇者と言ったこと。何よりさっきからお主からは魔物が持つ禍々しい力があふれているのじゃあ」


「本当に私は魔物なんかじゃないです!! 見ていたでしょう。先ほど僕の顔が膨らんだのを!」


「じゃ~その腕や足が大いいのか、どいう説明ができるのじゃ」


「え!? な、なんだよこれは!!  そ、そうだ。これは魔物の奴が私に擦り付けるように」


 そんな言葉も無視してナギは刀を振りかざす。とそこにクロウが現れて殴る、蹴るの攻撃を仕掛けて来た。

ゴスゴートスは急に上半身後ろにそらし、目をギョロギョロと動かして呻く。


「あ~あ。ここは穴場だったのになぁ~……お前へが来なければ!!!」


 クロウの体術先方が早くそれを防ぐだけで精一杯の状況でゴスゴートスは近寄り、ナギが逃げようとしたがクロウが羽交い締めで止める。


「クロウ!!」


「動くなよ、お前も仲間の様に私が面倒見てやる」


 ゴスゴートスはナギに近寄って来て口から小さく細長い物を出してきた。

そんな危機的状況の中にナギは笑い出した。


「お主の負けじゃあ」


「ナニ?」


 ゴスゴートスの後ろにはリリネッドが立ち、そして背中を剣で斬りつけた。

大きな叫びを上げるゴスゴートス。その隙に羽交い締めするクロウの腹にナギは捕まりながらもオモイっきり両足で蹴り付けて離し、その勢いでゴスゴートスに鋭く強くそして怒りの気持ちがこもった力で斬り裂いた。

ゴスゴートス暴れ倒れだしたが仰向けになり、涙を出して安心した顔で灰の様になり消えていった。


「人間が魔物と融合していたとはまったく、ひどいことをする」


 そう言い終わるとナギはリリネッドに心配する表情で近寄る。


「大丈夫か、勇者!!」


「あ、うん」


「な、何もされてないようじゃな」


「いや、何か私の口の中に入れて来たよ」


「なんじゃと!!」


 二人が話している最中にクロウが口から小さく細い魔物を吐き出した。


「そうそうこれ! でも吐き出したらヤバイんじゃなかったけ?」


「いや、元の者が居なくなったからそ奴の魔力も消えたようじゃ。勝手にこのうにょうにょが出て来たのが何よりも証拠じゃあな」

 

 倒れ咳をしながら聞いていたクロウが話す。


「さすが、無駄に数年間、魔物と戦ってないな」


「あったりまえじゃあ。ほめてもええぞ」


 3人が話していると同じ様にクースパーモに捕まっていた者たちが集まって来た。


「お前達が倒したのか?」


「お前は?」


「中央国の7番達隊員のジツネサーンだわ」


「七番隊? すまぬ、お主の仲間のニチリクを助ける事が出来ぬかったのじゃあ」


「仕方がない。命を捨てるのが隊員の仕事だわ。兎に角、助けてくれてありがとう。ココの処理は私達がやるわ。隊長にも報告がしたいし」


 と何かを思いついたクロウはジツネサーンに近寄る。


「コイツ、勇者だ。アンタ達を救ったのは勇者・リリネッドだぁ」


「この子が、そう言えば号外で見たような……。似顔絵とはあまり似てないから、わからなかった。わかった隊長に伝えておく」



 ●●●



 墓場からでた事には朝日が出ていた。


「無駄骨だったじゃなぁ」


「報酬ももらえないしね」


「だが、勇者の名前が広まる」


「それ重要?」


「大切だぞ」


「どうでもいいよ。勇者ってよくわからないし」


「簡単だよ、勇者は人を助けて、困った人がいたら手を差し出す。それだけ」


「めんどい」


「いいか、それが勇者だ!!」


 リリネッドとクロウのそんな会話を見る、ナギは微笑みながら見つめる。


「そう言えば、リリネッドは捕まっている間は何をしていたのじゃあ?」


「それが聞いてよ。青いスr」



 3人の旅は再び始まり、歩き出す。



 ●●●



 全身が凍りつたナギの目の前にユースが座る。


「織田信長がこんな少女の姿になってしまっていたとはなあ。もう少しだけ待っていてくれ。その刀の本質を知れば解決できるかもしれない。あと少しなんだ。 (女神から貰った者なら何か仕掛けがるはずだ)」


 ユースはナギが掴む刀に触れないで意思統一をする。


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