氷熱(ひょういき)のナギ ①
燃え盛る炎の中、織田信長は一人、踊る。
「我は信長。悲しむもない。悔しくもない。明智光秀よ、お前を操作したのはお前自身ではない。奴だ。そして次の時代を作るのは…」
本能寺は炎で燃え続けた。
●●●
織田信長が目を覚ますとそこには美しくも綺麗で危険な香りを漂う女性が椅子に偉そうに足を組み、高い場所から見ていた。
「誰だ、ここはどこだ!?」
「そ~危険視をしなくてもよい。お前さんに攻撃をしようとは思っていない。安心せい」
「ん……。で、俺をここに呼んだ理由はなんだ?」
「まず、お主は死んでるのは理解しているかい?」
「ああ、わかっている。確実に命が止まった感覚は残っているよ」
「それなら話は早い。ほとんどの奴がここで泣き叫んだり、喚いたり、受け入れられなくって時間がかかる者が多いいのでな、お主の様な奴は好きだ。私は女神だ」
「女神? 俺は神は信じるが女神の存在を信じろってのか? まあ~この状況を見れば信じるが」
「お前さんの心を残しづつ新たな人生を送らせてやる」
「心を残したまんまって事は今のままということか?」
「姿かたちは変わるけど。その代わりにだが」
「ん?」
「お前さんには新たな世界に行ってもらうがそこで、その世界で脅威となる敵?となる者を打ち破ってほしいのだ」
「敵…か…」
「敵の名は……皆がその世界ではこう呼んでいる……。怪物の王と」
「怪物の……王?」
織田信長は女神を少し警戒するが今のまんま生き返るならいいかと思い警戒を解く。
「その怪物の王とやらは何をしたんだ?」
「アナタが行く世界で支配者として君臨しているバケモノ。モンスターを世界に散らばらせ、人間達を不幸に落とし絶望させる奴だよ」
「そんなの他の奴にまかせればいいじゃないか?」
「他の奴に任せてはいるけどもっと戦力を増やしたいんだ。その中でアナタは特別枠、ずっと温めて来たんだ」
「温めて来た?」
「魂の保管だよ。まあ~その話はどうでもいい。とりあえず、怪物の王を倒すそれが君の使命だよ」
「ああ、わかったよ。だがそんなヤバい奴と戦うのにメリットがないなあ~」
「そう言うと思ってちゃんと用意はしてあるぞ。怪物の王を倒した者には " 最高の地位 " と " 叶願 " を与えよう」
「叶願? つまりほしい物をくれるって事でいいんだな」
「そいつを倒せばね。どんな願いでも構わないよ。まあ~話がまとまったという事では新たな人生へ、いってらっしゃい」
織田信長は戸惑いを見せるも女神は気にしないで織田信長を飛ばす。
目の前が真っ暗になった織田信長は意識が消えた。
●●●
織田信長がちゃんと意識したのは2歳になった時だった。
東北のド田舎のダイムウ村で幼女として生まれた織田信長は記憶が物凄い勢いで脳裏に流れた。
その日、たまたま両親が外で畑を耕していたので織田信長の叫び声は気づかれずにすんだ。
自分の姿を見た織田信長は幼女の姿に驚くもすぐに受け入れた。
短髪白髪で透け通るような肌の美しい姿。その世界では織田信長は『ナギ』と呼ばれていた。
「ナギ……。ナギ・カルミア。この体のいや、元々この体に生まれ変わる事は確定だった。記憶が蘇るまで時間がかかっただけか……」
は織田信長いや、『ナギ』は外へ出て空を見上げる。
蝶が飛ぶ、小さな雲が動く、青く綺麗な空が広がる。平和な時間、争いがない世界。
「こんな時間があったんだな。忘れていたよ」
その村に住む者達に喜ぶ声、笑い声、子供たちの幸せな声。
それを感じて心を温かくするナギ。
父のキジギンと母のサヨは冒険者ではない、戦う力を持たない普通の一般市民である。
「この時間、いいなあ~」
ナギは女神との約束を忘れ平和な時間を楽しむ。
●●●
数年後、ダイムウ村の近くに国を作る計画が始まった。まずは城を建設から始めているらしく、工事の音が鳴り響く。それはナギが住む家からも微かに聞こえていた。
「うるさいわねぇ~」
「まあー、この辺の地域がもっとよくなるんだからいいことじゃ~ないか」
「そうだといいんだけどね」
親の声を聞きながらナギは外を見る。
「(動物たちが減ってきている、虫も。まるで戦が始まる前の様な。あの時には感じなかったこの気持ちはなんだ?)」
戦の為に生き続け、天下統一を目指した男は、平和という戦いの中で生きて来た織田信長にとって、本当の平和を知った今、ナギは自然を愛する平和のある場所を守りたいと思うようになっていた。
「(俺はいま何をすべきなんだ。女神の言っていた通り、怪物の王を倒すのか? それでいいのか? 戦いで平和になるのか? 戦はもうしたくない。戦いたくない。 今の生活を続けたい)」
外を眺めていた時、叫び声が聞こえ周りを見渡すと、遠くから大きなヒグマの様なモンスターが人を追って森から出てきて家や木などを壊し暴れまわっていた。
「お母さん! モンスターが!!」
ナギは親に説明し、必要な物を鞄に詰め込み避難し始めた。
外に出ると周りにいる者達も避難していく。戦える者達はヒグマのモンスターの注意を引く。
だが戦えるとは言え、冒険者ではないのでそんなに強くもない。雑魚弱モンスターを倒せるぐらい。
ヒグマのモンスターは強よりも上の危険なレベルの為、次々と人を太い手で投げ飛ばしていく。
母親の手を握りながらナギは走り出していた。振り向きながら走るナギに母親は注意をしていた時、飛んできた人にぶつかってしまった。
「お母さん!!」
母親のサヨは倒れ込み、そこに近づく父親のキジギンが死体をどかして、サヨの手を取る。
そこにヒグマのモンスターが既に近くに立っていた。
「みんな動くなよ」
震える声でキジギンが言って、サヨもナギも動きたくっても恐怖で動けなかった。
ヒグマのモンスター、獣の叫び吠えたあと腕を大きく振りかざしてキジギンの体を投げ飛ばし木に叩き付けられた。サヨはナギを突き飛ばす。
「逃げなさい、ナギ!!」
「お、お母さんは!!」
ヒグマのモンスターはサヨを踏みつぶした。
サヨの返り血が顔に飛んで怯えるナギ。
「(なんで動けない! あんなモンスター、簡単に…。こ、こんなところで終わるのか。俺は、俺はこ、ここで)」
ナギは自分の不甲斐なさと弱さに悔やみ、そして後悔した。
ヒグマは手を大きく太い手を上げてナギに振り降ろそうとした時、バッと、ナギの前に誰かが立った。
ナギの前に立つ者はヒグマの強く重い手を素手で止める。
「悪い、遅くなったんじゃ! ワシがお前さんを守ってやる!!」
「チサ、油断しない。そのモンスター強い」
「わ~てるんじゃ!!」
チサと呼ばれる赤色の長い髪の若い女性はヒグマの手を振り払ってからヒグマの腹を狙ってぶん殴る。
攻撃の衝撃で回りに風圧が飛ぶ。ヒグマは狂い悲鳴を吠えた。
「どうしたんじゃ? さっきまでの威勢はどこいったんじゃ?」
「チサ、気を付けて」
「ヒロマ、も~うるさい」
チサが仲間のボサボサ黒髪で目つきが悪い女性のヒロマの方を見た時、ヒグマは口から吹雪の様な氷系の攻撃を繰り出した。
「おっ!?」
チサが油断したが、スッと避けたと同時にヒロマが剣を抜いてチサが殴った場所に剣を突き刺し横に振り斬ったあと、剣を地面に突き刺し、剣のグリップの方を持ちながら逆立ちになり、体を大きく動かしヒグマに向かって横に蹴り殴る。
「すごい、すごい。ヒロマ!」
「チサ、うるさい。トドメ行くよ」
「分かってるんじゃ」
チサは剣を雑に抜いて高く飛ばし振り回したあと、拳に魔力を溜める。
ヒロマは剣の中の魔力を足に溜める。
「行くよ、ヒロマ」
「チサが遅いんだよ」
大きく叫びを上げるヒグマが二人に飛びかかってきたが、チサの前に剣を落ちて来たタイミングで拳を自身の剣の柄頭の部分に拳を当てる。その瞬間に溜めた魔力を剣に込めてヒグマに向かって飛ばす。
チサの攻撃とほぼ同時に、ヒロマの右足に全魔力集中して溜め込めて、アクロバティックな動きから空中に飛び上がり両脚で蹴りを高速連打つ。
ヒロマの足技の連続攻撃をくらい、飛んできた剣に突き刺さり真後ろに突き飛ばされたあと剣の魔力が光りだして斬り刻まれた。
「こんなもんじゃろ」
「チサ、がんばったね」
二人が拳と拳でハイタッチをしたところで、ナギに近づく。
「大丈夫?」
「問題ないじゃろう」
ナギは二人に頭を下げ土下座する。
「戦い方を教えてください!、強くなりたい。力をこの世界の戦いを教えてください!!」
「ヒロマ、行こっか」
チサがそこから移動しようとしたがヒロマがチサの腕を掴んで止める。
「待って、チサ。話を聞いてからでもいいんじゃない?」
「ぶっえぇえ~……。なんで戦いたいのじゃ~、お嬢ちゃん」
「元々、自分はある人にある頼みごとをされていたんだ。でも今の自分には力がない。あなた方が倒したモンスターに体が動かなくなった。それが悔しかった。だから!!」
「ヒロマ、もういいじゃろう?。コイツの話を聞くの」
「待って、チサ。私も聞きたい事がある」
頭を下げるナギに、ヒロマは近づき問う。
「君の親が死んだのは君のせいではないよ」
「親は関係ない。悲しいけど…それよりも自分が動けなかったことが」
「君の名前は? 私はヒロマ」
「ナギ…です。親から貰った誇りある名前です」
「そう、ナギ。私が教えてあげる」
「ちょっ、ヒロマ!!」
「どうせ城が完成までの用心棒の仕事をするつもりだったんでしょう? ならその片手間でやる分にはいいよね。私がやりたいの…ダメ?」
「ハァ~……。ヒロマが珍しくわがまま言うじゃなんて。そんなにこの子が気に入ったじゃのか? ガキじゃんな~いか」
「ん? 子供でも才能が有れば強くなれるよ」
「そ~いうことじゃないんじゃが」
「じゃーいいよね」
幼気ない表情で横に首を傾げるヒロマを見て、口を膨らませながら承諾した。
●●●
チサとヒロマが村に来て1年が経ち、ナギは二人の指導を毎日受けていた。
「君、すごいねぇ太刀筋がいいんじゃー」
赤い髪を靡かせながらナギの攻める攻撃を避ける。
この1年でナギは剣の腕を誰よりも磨き上げて村の大人ですら勝てないぐらいに成長していった。
体術、剣術、戦うための覚悟を叩き込まれたナギ。
「ナギ、ここまで強くなればワシ達がこの村を去っても君一人で守れるんじゃろう」
「そんなことない。まだまだだよ。というか前々から思っていたけど、その『ワシ』とか『じゃ』とか、なんだい?」
「これぇ~? なんじゃろうな。口癖みたいなもんじゃな。治しようがない。ハハハァ!!」
ナギはそんあチサを見て言う。
「女子ならもう少し、女子らしい言葉を使うべきだと思うけど」
「ナギもたまに男っぽくなるじゃろうが?」
ナギは言い返す事が出来ず口を閉じる。
チサはナギの頭を優しく触り、ポンポンとたたく。
●●●
翌日、いつもの様にナギはチサ、ヒロマに指導を受けていると、村人たちが騒ぎ始めた。
それと同時に獣のうめき声と叫び声を上げていた。
「あ、あれは」
3人が獣の声の方へと行くとそこにはヒグマの様なモンスターがそこにはいた。
「なんでじゃ! アイツはワシ達が倒したはずじゃろ」
「チサ、よく見て。前に倒した奴より若干小さい。もしかしたら子供? あのモンスタに子供がいたのかも」
「じゃ~、ワシがまた討伐してやるんじゃ」
「そうれはそう。ナギはここで待ってて」
「い、いやだ自分も戦う」
「ダメ、これは私たちの仕事!」
「でも!!」
ヒロマはナギの頭に手をいて髪をわしゃわしゃさせる。
「や、やめお~」
「私達に任せて」
「……わかった」
ナギはその場から少し離れた場所で見守る事にした。
騒ぎに駆け付けた他の冒険者も集まりヒグマの様なモンスターが叫び上げると口から吹雪をまき散らし、体中からも吹雪をまき散らし暴れだす。
その周囲の天候が変わるほどその場所が雪国の様に気温が下がる。
他の冒険者が動けずにいる中、チサとヒロマは目と目を合わせて動き出す。
「チサ、油断しないで」
「解ってるよ」
二人が動いたのを見た冒険者達もそれに続き動き出す。
ヒグマのモンスター叫び上がるたびに吹雪の攻撃繰り出す。
炎系の魔術を使う者達を前衛に立たせて隙を見て熱体系の魔術を使う者達が攻める。
だが、ヒグマの様なモンスターの皮膚は親よりも硬くそして、頑丈だった。
冒険者達は怯んでいる中、チサとヒロマは足を止める事無く、手を止める事無く、攻撃を繰り出し続ける そして二人は同じ個所を繰り返し攻撃をし続ける。
「ヒロマ、コイツ今までで戦ってきたモンスターの中で一番強いんじゃが」
「そうだね、でも油断しない」
ヒグマの様なモンスター氷結系の魔法を使った。周りの冒険者は攻撃をくらい体中が凍り付き、ヒグマの様なモンスターの叫びの衝撃で割れてしまった。
チサ、ヒロマはヒグマの様なモンスターの攻撃を避けながら攻撃を引き続き繰り出す。
「ワシら、二人になっちゃったじゃな~」
「元々、二人でやる予定だった。アイツらが勝手に加わっただけ」
「そうじゃな…でどうする? コイツ……」
ヒグマの様なモンスターは地味に少しづつ回復していた。
「これはワシでも心が折れるんじゃが」
「チサ、コイツもしかして」
「ああ、人間だ!!」
ヒグマの様なモンスターは氷結系の魔法を使って二人に攻撃を繰り出す。
二人は避けながら熱結系と炎系の魔術を使って反撃する。
「噂は本当じゃったなあ~。人間が強くなるためにモンスターと融合する者がいるって」
「とりあえず、話はあと、今はコイツを」
ヒグマの様なモンスターは人間の様に笑みを浮かばせた。
二人はその表情に驚きと同時に危機感を感じた。
ヒグマの様なモンスターは体中を光りださせて口からビームの様なものを出して放った。
光の光線は城に直撃した瞬間、大爆発が起きた。爆風波二人がいるところまで飛んできて腕で顔を隠す。
「くっ! チサ気を付け……」
ヒロマの目に映ったのはチサがヒグマの様なモンスターの攻撃に吹き飛ばされていた。
ヒロマは怒りに身を忘れて、ヒグマの様なモンスターに立ち向かって強烈な一撃を繰り出してやっとのことで深い傷を負わせた。
が、ヒロマの体は凍り付き始めた。
「ひ、ヒロ…マ?」
「チサ……逃げ…ろ」
そう言い残してヒロマはヒビが出来、割れて死んだ。
チサはたった一人になってしまった。ヒロマの事を悲しんでいたいがそれどころではないと思い立ち上がり向かおうとした時、ナギが横からヒグマの様なモンスターに石を投げた。
「(隙が出来れば、チサさん一人でも倒せるはず) こっちだ!!」
「ナギ!?」
ヒグマの様なモンスターはナギに向かってビームを放った。
ナギを守ろうとチサは動くも遅く、ナギも凍り付き始めた。
チサはビームを吐くヒグマの様なモンスターにヒロマが浴びせた最後の一撃に箇所に全身全力の攻撃を繰り出しヒグマの様なモンスターを弱らせた。
「そうか、これは…」
チサの体も凍り付きはじめた。
「ハハハ、奴に一定の距離を取ると凍り付くのかやっかいなモンスターじゃなあ~。それにコイツ暴走かと思いきや……まさか意識あるんじゃな~」
ヒグマの様なモンスターは傷を抑えな、悔しさを噛み締めながら逃げて行った。
「に、にが…す…あ……」
チサはナギの方を見る。
最後の力を振り絞りチサはナギを包み込む様に氷の作り出し固めた。
「君は優秀な奴じゃ。生きて…ナギ」
チサは全身が凍り付いた。
900年という年月が経ったいまでもその周囲は雪が降りつづけることになった。
ナギの視点の物語を読んでくれてありがとうございます。
一部本作品の一部を流用しましたが、部分部分を再構築して書き直してます。
(まあ~、ナギの思い出と、実際の出来事って少しだけ違くない?)
元々は去年の11月か12月ぐらいに投稿予定でしたが、世間体の都合により変更しました。
違うモンスターにすればよかったんですが……ねぇ。
という事で前編?はここまでです。
ここまで読んでくださりありがとうございました。




