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その1 第四話 長い旅の始まり

第四話 長い旅の始まり


 私は髙橋彩乃。定食屋『あやの食堂』の店主よ。

 この食堂には雀卓があってそれを目的で来る麻雀好きなお客さんもチラホラ。

 私も麻雀は好きなので遠目にお客さんのやる麻雀を眺めてた。自分で言うのもあれだけど、私は麻雀が超上手いの。ほんとよ? 場況を見れば誰が何を考えてるのかくらいお見通しなんだから。


乾手牌

二四②③④赤⑤⑥⑦67799 伍ツモ ドラ⑥


(とりあえず二萬切りね。六萬や5索はリーチの現物だからこっちがテンパイする前に処理されちゃうかもしれないのが懸念されるけど……)


 と思って見てたんだけど。


打7


(えっ!!)


 ここから危険牌を先に切る? 普通できないわよそんな事。でもこれ、知ってる。この戦術。これは私の友人でありプロ雀士である『とある人物』が新人王戦決勝で見せたことで有名になった戦法。『先勝負』という選択だ。


(まさか先勝負を使うとは…… この人麻雀のルール先週まで知らなかったはずよね。なんてセンス。驚いたわ)


 先勝負という選択は負けるはずの勝負も勝ちにする大技である。どういう事かと言うと、今回のこの手から普通に二萬切りをするとそれはリーチに安全牌を捨てるだけなので他者から見ても何にも感じない。普通の対応だ。つまり無警戒。そうなると他者はここで六萬や5索を捨てるだろう。リーチ者だけを見ていればいいから。

 しかし、ここでリーチを無視した7索切りから先に選べばどうなるだろうか。親にも勝負手が来てるのは明確に伝わるし、下手したらもうテンパイ。だとすると現物牌が逆に危険となるのでもうリーチ者の現物を捨てることは出来ない。そうして先に処分されてはならない三-六や5-8をキープさせる。しかもそれだけじゃない! その後テンパイしたタイミングで手出しするのは今度はリーチ者の現物である二萬。


ツモ三

打二ダマ


となればこれをダマに構えることで(お、オリるか回るかしてくれたかな。それならリーチ者の現物が今なら切れる)と勘違いして先ほどはキープした牌をわざわざ抜き打ってしまうという。つまり、自分の当たり牌を自分がテンパイするまで所持させるという人を操る高等戦術! 


「すごいわね……」


────


(まさかルールを覚えたばかりの素人がこの戦術を使うとは……)と、セコンドについてたメタも驚きを隠せなかった。


「ロン! えっとこれは5800点くらいですっけ?」


乾手牌

三四伍②③④赤⑤⑥⑦6799 5ロン


「正解だ、よく勉強してきてるな。それにしてもさっきの打7といい、その後のダマといい、よく知ってたなこの戦術を。かなり研究しただろ」


「研究っていうか、戦術系は時間があれば動画見てただけっすね。ミオって人の麻雀動画が一番オモロイなと思いました」


「たいしたもんだ。戦術を理解するだけでもけっこうな難易度なのに、それを最適な場面で採用する使い所の良さ。それを実行する胆力。ゲームが得意ってのは本当らしいな」


「へへっ、ありがとうございます。麻雀、楽しいっすね」


◆◇◆◇


「ラストオーダーの時間よ。何か注文ある人いる?」


「じゃあ瓶ビール2本。グラスは6個で。最後に新人歓迎ということで乾杯しようぜ。あやのも仕事は終わりだろ、おごるからこっちで一杯やってけよ」

「いいわね。じゃあ、ごちそうになろうかな♡」



「「かんぱーい!」」


 こうして、この日から乾春人の長い長い麻雀研究という旅が始まったのだった。


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