【第4話】12神と始祖龍④敵の敵は国王で、私の敵も国王かもしれません。
主人公・・・12神序列7番
魔法少女であり、ヘリオスのサポート全般を行い、国にあるほぼ全ての魔法が使える。
ヘリオス(死亡)・・・12神序列3番
国内最強の魔法少女、博識で常に知識を欲している。最近は女性同士の恋愛(禁書)についての研究を行う。
ミサ・・・1級魔法少女
ヒーラーとして雇われたが彼女の正体は…
シュレイドの番人・・・???
「フロウ」
ミサの体を持ち上げ、その肉片に飲み込まれずにすんだ。散らばった肉は床を赤く染め、その勝ちに対する代償の大きさを実感する。空に持上げたミサは私を見て顔を強ばらせ、怪物を見るような目でこちらを見てくる。
「近寄るなバケモノ!離せ!」
手は見ての通り青く光るエネルギーで形成され、背中には翼が生えている。この見た目ではもはや人ではないのかもしれない。
「そう言わないで、いくつか聞きたいことがある」
「どうせ私を殺すんだ!私がそうしたみたいに!」
「そんなことしたら、人の心まで無くなっちゃうよ」
どうも情緒が不安定のようで、話そうとしても通じなさそうだ。目の前であんな怪物に同じ同期が何百人と殺されて、自分が殺したと思ったやつが人では無い何かになって蘇ったらそれはそうなる。
「ひとまず落ち着いて、私はあなたを許すことはできないけど、辛かったよね。辛いことさせたね。よく頑張ったよ、私もあなたの立場だったら恨んでたかもしれない。あなたがどうしてそうしたのか、誰にその魔法を教えてもらったのか、聞かせて欲しい。」
「私は…私は…」
「これはいい美談だ」
「ヴォレアス帝」
面識があるのだろう、岩盤から3人のヒト型が姿を現した。
「待たせてすまなかった。その紋章、どうやら禁忌魔法を使いこなせたようだね?彼らは君がやったのかい?」
「助けに来てくださったのですね、私、このとおり結界に結界を解いてくださいませ」
会話と言うよりも懇願に近いような気がする。このヴォレアス帝という人物がこの子に禁忌魔法を与えたのは間違いなさそうだ。明らかに異質な魔力量、12神相手でもこの人物のが勝るだろう。
「ミサ君、よく頑張ったね、今楽にしてあげるからね」
「私やりました、あの12神の一角を、瀕死にまで追いやりました!あなたスゥ」
強固な魔力結界を破り、ミサの体が液状になり空から飛び散る。
変身が解かれたことすら分からないまま白い光が空を舞い、赤い血が降り注いだ。
「〝殺せ〟とは言ってないぞ」
形ひとつ残さず消え、目の前にいた私に血が身体にまとわりつき、欠損した手に着いた血は瞬く間に蒸発した。
「貴様」
「落ち着いてくれ、君と争うつもりは無い」
「何者なんだ」
「シュレイドの番人だ」
「シュレイド…500年も前に滅ぼされたはずでは」
かつて国が反乱を起こし、新しい国を作り直そうとする革命派と、現状維持を貫こうとする保守派に分断された。50年にも渡りその争いが繰り広げられ、現国王のような3mの騎士率いる軍が革命派を滅ぼしたとされる。
「それは間違った情報だ、私たちは滅んでいない。」
「滅んでいないだと…?今、この世界で我が国以外にも存在するのか。」
「そちらのお偉いさんが隠しているだけだ。先程潰した女の魔法を見たか?変身の強制解除、あれは禁忌魔法の1つだ。」
「禁忌魔法?」
「2国分断に繋がった魔法の総称だ。1人の人間が禁忌魔法を作成し王国に反乱を起こした。」
「そんな魔法を作るなんてどうやって王国史にもそんな記載は見たことがない。」
「グウェルという名前は聞いたことがあるか?」
「えぇ、国に反乱を起こした大罪人だ」
「そいつがこの禁忌魔法を作った。」
グヴェル・エリシオン。楽園のグウェルなんて呼ばれたりもする知の巨人。どの分野にも精通し、国を300年〜400年近く進めた人間であると同時に、彼が革命派として国と対立し、大罪人として処刑された。戦争は化学を進歩させると言うどこかの言い伝えは本当なのかもしれない。
「数百年数千年に1度、そういったバグまがいな人間が生まれるんだ。そんな一人の人間が世界を作り破壊する。そいつを生き返らすために生まれたのが蘇生魔法。」
「なんでそんなもの隠す」
「そりゃ隠すだろう都合が悪い。そんなの覚えて誰かが反乱を起こしたらどうなる?蘇生なんてもってのほかだ、医学で国が稼げないではないか。」
「生き返らすことが出来るのか、数多くの研究者が何世紀にわたって命を削って研究しているそれを」
医学や薬学は勇者とほぼ同級の扱いをされ、研究のために王国から支援金が出ている。ただ、他の業種と比べても明らかに短命であり、薬品調合や医療魔法による事故死や、国が指定する違法薬物の生成による処刑などで寿命が短いとされる。
「あれ?12神なんだよね君、12神にも知られてないの?調べたら最後上の圧力で消されるのに馬鹿だよねぇ本当に」
「先陣を侮辱するな!」
「その前に君たちの国のおえらいさんを恨んだ方がいいんじゃない?都合のいいことは世間に言わず、近づくなら殺される。国は下から金を搾り取り、遊びのためにお金を使う。下は階級で物事を制限される。生きる為に働いて何が楽しい?」
「どういうことだ」
「都合の悪いことをわざわざ話すかい?話さないだろう。至極当然のことだ。国の不正を暴こうものなら極刑で即処刑、目立つやつは特に目をつけられる。弾劾と言い張って喉を潰し、文字で書こうものなら腕を斬られる。目を潰されるかもしれないし、耳も聞こえなくなるかもしれない。そんなリスクを世間に見せしめ、あの国の平和は保たれている。」
「そんな」
そんなこと
「信じられないなら確かめてみるといい。私はこの子を生き返らせる。」
「ブックマーク」や「いいね」、さらにページ下部の『評価』をいただけると作者の励みになります。ぜひ応援をよろしくお願いします!