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第二章・青木ビミョーに覚醒す

愛子 傷つく

青木老人が入院して2日目の夜を迎えた。

夕方の申し送りでは特に注意事項も無く、

青木さんも日中は落ち着いていたようだ。

昨晩は少し混乱していたのかも知れない。

老人になると場所や状況を理解するのが苦手になるので、

突拍子も無い行動をする事がある と、

看護学校でもしっかり教え込まれてきた。

引き継ぎはスムーズに終わり机に戻ろうとすると、

師長さんがニヤニヤしながら声をかけてきた、


「愛子ちゃん、夜勤どうだった?

佐藤さんにかわいがりされてる?」


「はい!勿論!とっても優しくして貰っているし、

すごく勉強になってます。」


「あらそー。そりゃー良かった。気をつけてね。」


師長さんはそう言うと、

少しつまらなさそうな顔をして去っていった。

なんだろうこのビミョーな違和感。

かわいがりって、相撲部屋じゃあるまいし。

そりゃあ私、確かに肥えてますけど。

気をつけてねって何に気をつけるの?


「愛子ちゃん、行きましょう」

ナースカートを押した佐藤さんが

廊下で微笑みながら私を呼んでいる。


我々看護師は夜勤に入る前、必ず病室を回ることになっている。

患者さんに顔見せをし、

夜を安心して過ごして貰うためである。


整形外科病棟は比較的入院患者さんの平均年齢が低く、

病状も安定している方が多い。

そのなかで、青木さんの77歳は高めと言える。

高齢者の場合、病状もさることながら

年齢的な身体の急変にも注意しなければならない。

順調に病室を巡り、次は312号室。

しゃぶジイはいかに!?


「青木さんおかげんは如何ですか?

今夜担当させて頂く佐藤です。

辛かったらいつでも言ってください。

私達二人で青木さんのお世話を致しますから

安心なさってくださいね。」


起きている青木さんに会うのは初めてである。

昨夜あぶくま洞だった口には入れ歯が入り、

少し若返って見えた。

青木さんはボケているのかボケたフリをしているのか判らない

中途半端なお年寄りだった。

耳も聞こえているのか聞こえないフリをしているのか判らない。

でも佐藤さんに声をかけられた途端、

どんよりしていた目がいきなりフォーカスされた。

都合のいい時だけ聞こえるようだ。

そして佐藤さんを失礼な位眺め回すと、


「いちろくはち はちはち ろくさん きゅうまる ふぁ~~~」


と謎の言葉を口走った。

???いったいなんの暗号?

乱数表でも頭にあるのだろうか。

おめーは旧日本兵かっちゅーの。


そして佐藤さんの後ろに控えていた私の事も、

ベッドから首を起こし穴のあく程じろじろ見回し

今度は


「163 90 78 98 ひょぅ~~ぷぇん」と言った。

ん?なんか知ってるこの数字…

あっ!なんと私のスリーサイズではないか。

このドスケベジジイは、私達の肉体を分析してやがったのだ!

しかもかなり正確に。

佐藤さんは気づいているのかいないのか、

淡々と青木さんのバイタルチェックをしている。

私も動揺を隠し、補助をした。


「はい、安定してて良い感じですよ。

またゆっくりおやすみくださいね。」


佐藤さんに触られ、笑顔を向けられ、

ジジイはとても満足そうだった。

病室を出る私達に、後ろから声がかかった


「ぽーく」


はあっ?なんだとお!豚ですか?

私の事かよ 怒

ジジイ許さんっ。

次回の採血の時、思いっきり痛い思いをさせてやるから楽しみに待ってろよ!


「ねぇ佐藤さん。あれって私達のスリーサイズでしたよね。

佐藤さんの当たってましたか?」


「あはは、バッチリ当たってた。びっくりよね」


佐藤さんは屈託なく笑った。

そりゃー見事なプロポーションの持ち主なら平気だろうが、

私みたいなのは多いに傷つく。

にしても何故判るのだろう。


「あれ?愛子ちゃん知らなかったっけ?

青木さんは縫製業を営んでいたのよ。

青木さん自身もかなり腕の良い職人さんだったの。

だから人のサイズ直ぐに判っちゃうみたい。」


そうだったのかー。

恐るべし職業病。

ただのじーさんにみえる青木さんだって、

一線で活躍していた過去があったし、

恋愛もしたし、誰かのお父さんだったのだ。

苛めてやろうと思ったが、やっぱりやめておこう。

佐藤さんの菩薩っぷりが、少し私にうつったのかもしれない。


能力の片鱗を見せ始めた青木老人

果たして前回の暴走を超えるのか!?


次章はパーフェクト佐藤さんの家庭事情について です。

三日後にお会いしましょう

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