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青木老人 生存確認の巻

ナースステーションでの葛藤

新人看護師は未だ知らない・・・

「おはようございまーす!」


薫風かおる5月。

いつものように元気よく挨拶をして入った外科のナースステーションだったが、

8人いた先輩ナース達は真剣な面持ちで、何やら相談をしていた。

昨夜 急変した患者さんでもいたのだろうか。

私は急いで自分の机の整理をし、話し合いに加わった。


「じゃあ、今のところは安定してるのね?」


え?そんなに悪いの?誰だろう。


「けど いつまた覚醒するか判らないから私にはムリです」


目覚めじゃなくて か・く・せ・い?


「前回担当してくれてたでしょ。経験済みなんだからお願いよ」


看護師長は眉間にしわを寄せ、本当に困っているようだ。


「だからムリですって!

てか私いま持っている患者さんだけで手一杯なんです。

師長もご存じでしょう?」


断固拒否しているのは、職歴5年になる三枝さんだ。

三枝さんは小柄でチャーミングなとても優しい看護師さん。

めったにこんな我が儘は言わないので私は少し驚いた。


「参ったわねぇ。愛子ちゃんに頼む訳にもいかないし…」


愛子ちゃんとは私。

小和田愛子と言います。皆さん宜しく。

今春、看護学校を卒業したばかりのぴちぴちの新人ナースです。

(ちなみにLサイズの白衣もピチピチ 笑)

小和田愛子という名だけど、天皇家とは何の関係もありません。

実家は肉屋。

この病院の給食課にも食材を卸している。

父も母も健在で、肉屋のお約束、弟ふたり&じーちゃんを含め

家族全員丸々と太っている。

採用面接の時に「太ったナースは動きが悪いから要らない!」

と言う総務部長に、

父はでっかい豚の枝肉を袖の下として部長の自宅に贈り続け、

「もう肉は勘弁して欲しい」と泣かれた部長婦人の意向により、

見事に私が採用されたのは内緒である。


問題になっている患者は青木慶吉、77歳。

昨日18時頃に救急搬送され、そのまま入院となった。

なんでも自宅から25キロも離れた公園の土管遊具の中で

意識朦朧としていたのを、遊んでいた近所の小学生達が見つけ

スマホで通報したという。

大手柄である。

救急車の中でわずかに意識を取り戻した青木さんが

所持品のバックから取り出したのが

この病院の診察券だったそうだ。


「っったく何でよりにもよってうちの病院の診察券持ってんのよ!

あンのクソじじぃ・・・」


小さく呟く三枝さんが一瞬だけ般若に見えた。


私は知らなかったのだ。

青木さんが伝説の老人だった事を。


混乱したナース引き継ぎに終止符を打ったのは、

今年勤続20年になるベテランナース佐藤卓子さんである。

「師長、私で良ければ担当しますよ。こんなことしてても時間のムダだし。」


流石 佐藤さんだ。

私は心の中で喝采を送る。

佐藤さんは私の憧れ。

色白のすらりとした容姿。

壇蜜と内田有紀を足して2で割り宝塚で鍛えたような美人。

そのうえ仕事はミスが無く、しかも物腰が柔らかくてみんなに優しい。

そして何より、どんな時も感情にブレが無いのだ。


さらに佐藤さんは振り返り、私を見て


「愛子ちゃん、良い経験になると思うから私の補助として、

一緒に青木さんを担当してみない?」


と言った。

勿論 私に拒否権などあろう筈がない。

それどころか伝説のナースの仕事を間近で体験できるのだ。


「はいっ!頑張ります!」


ニコッと笑い返してくれた佐藤さんは

ゾッとする程 綺麗だった。

あの伝説の老人は生きていた。

そして再び森村中央メディカルセンターに現れた。

青木VS看護師達の新たな戦いが始まる  のか?

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