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汚い話でしょうか

作者: 雉白書屋

 あ、あああ、ああああああ……うううぅぅぅ……く、く、か、か、かっ! か、あ、ううぅぅ、くうぅぅぅぅ、うぎぎぎぎ……あ、あ、あ、あ、かあぁぁぁ、ふーっ、ふーっ、ふーっ、ふー、ふー、ふーはっ、ふーは、ひー、ひー、ふー、はぁーはぁー、ふぅ、ふぅあ、あ、あ、あ、ぬあ、あ、う、う、う、い、嫌だ、あ、あ、あ、こ、こんな、この、俺が、あ、あ、あ、あ、嘘だ、あ、あ、あ、うーっ、あ、あぁ、た、頼む、頼む頼むうぅぅぅ、む、ま、ま、ま、負けるものか、まままああああああ! ふ、ふ、ふ、う、は、ふ、はう、ふ、はは、はははっ、はっ! あ、あ、あ、ああああああぁぁぁぁ! あー! あー! うぅぅぅ、ああああ! よ、よし、持ち直してきたぞあああああああ! ううぅぅぅ! ひぐぅ、あ、あ、あ、あ、大丈夫大丈夫大丈夫、俺は大丈夫。俺は大人大人大人、だから大丈夫大丈夫大丈夫、ほら、なんてことはなあああああああ! 南無、南無、南無阿弥陀仏……あああああ、あーっ! あーっ! あああぁぁぁ! どうか、どうかどうか、ああああ! あ、あ……あぁぁ、だい、じょう、ぶ、あと少し、持ちこたえられる、あ、あ、あ、あ


「きゃああ!」

「うおっ!」

「うあ!」

「うわ、あの人……」


 え、俺はまだ……俺じゃない? まさか、他にも……あ、あ、あ、でも、駄目だ、あ、あ、神よ、お助け、あ、あ、あ、あああはぁ…………


 体内に巻き起こった嵐は雷鳴を轟かせたのち、わたしの中の何もかもを持ち去っていきました。厚い雲に勝利したお日様を讃えて草木が体を震わせるように、一滴の雫が熱くなったわたしの頬を撫でました。

 それを受け止めたのは、突然わたしの足下に現れた小さな水たまりでした。水たまりは泥を溶かしつつ、まだ広がり続けているようです。

 鼻をすすってみると、鼻腔を突き刺すような刺激的な匂いが漂ってきました。でも、不思議と嫌な気はしませんでした。それは、わたしの体から出たものだからでしょうか。

 わたしは男性ですが、これが母になるという感覚なのでしょうか。……すみません、違いますよね。でも、この匂いが赤ちゃんの泣き声のように「いるよ、私はここにいるよ」と存在を主張しているように感じられるのです。出産も排泄も、同じように尊ばれるべき行為ではないでしょうか。

 そうです、排泄行為は生きている証拠であり、それは忌避されることではないのではないでしょうか。だから、みなさん、どうか声を荒げないでください。冷たい視線もやめてください。スマートフォンをポケットにおしまいなさい。盗撮なんて、人として恥ずべき行為です。ええ、確かにわたしは今、この満員の車内でウンチを漏らしました。おしっこも漏らしました。ウンチが出るとおしっこも出ちゃいますよね。

 お騒がせしたことはお詫び申し上げます。でも、わたしが全面的に悪いのでしょうか? 各車両に一つずつ、トイレの設置が義務付けられていたなら……もし、座席がすべて便器だったなら……いいえ、そんなことが言いたいのではありません。鉄道会社を憎んでいるわけでもありません。先ほどは地獄で仏様に祈るような気持ちでしたが、今はとても晴れやかな気持ちなのです。悟りを得たように……。だからでしょうか、先ほどこんな声を聞いたのです。


『これで2-0ですね』

『馬鹿を言うな。後の者はワシに祈っただろう』


『そうでしたか? でも、心の中で唱えていたでしょう。「南無阿弥陀仏」と』

『いいや、はっきりと心の中で「神よ、お助け」と言った。ワシに助けを求めたんだ』


『わかりましたよ、もう、神様は我儘ですね。お、次の方がそろそろ限界のようですよ』

『おお、来い、来い、来い。ワシに救いを求めよ!』


 ……再び悲鳴が上がりました。どうやらまた一人、お漏らししたようです。これで三人目です。わたしは二人目に漏らした男性と目を合わせ、頷き合いました。彼も同じように晴れやかな顔をしていて、わたしは自分には何も非がないのだと確信と安心感を得ました。漏らすことは恥ではない。そして、すべての不条理はあの方たちの仕業なのだ、と。


 ウーンチは漏れるーよ、いーつーまーでもー。野を越え、山を越え、天におられる神と、極楽浄土におられる仏様の力比べによって……。

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