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想い

作者: ともたろ

 夢を見ていたらしい。あの人は、どこにも、いないらしい。何をもって現実と認められるのか。この思いはただの虚像に過ぎないのか?ナキリアンズコ。それが彼女の名前だということは自分の妄想に過ぎなかったのだろうか?

 どうしようもない程、自分は単純である。あの人は僕を見つめた。金色の髪が風になびき、彼女のさらさらした長い髪が輝いている。光は彼女にさしているような、光は彼女から放たれているような...。神々しい、とはこのようなことを指すのだろう。一面の青空と、それに負けないくらいまぶしい彼女を僕は直視できなかった。当然だろう、太陽を肉眼で見ては目がおかしくなってしまう。では、太陽が輝きを保ったままこちらに近づいてきたら?こんな問いに真剣に考えるなんておかしなやつみたいだが、夢だったのならばいいだろう。

 彼女は僕の名前を呼んでくれた。音読みで。宅配便のお兄さんもなぜか僕の名前を間違えて呼んでいるから、もう慣れた。それを指摘しようという気にすらならなかった。でも彼女には間違えてほしくなかった。僕の名前を呼んでほしかった。

 名前とは何なんだろう。自分を特定するための材料で、自分以外の人には決してその価値の大きさなんてわからない。でもだからこそ、自分にとってのそれはたぶんどんなものよりも価値があるんだと思う。僕は彼女に言った。僕の名前を。彼女はなんて言ったんだろう。もう覚えていない。

 僕の記憶は一つだけ。彼女が手を握ってくれたんだ。暖かいその手のひらに僕は救われたような気がしたんだ。彼女の表情すらもう思い出せないけれど、あの暖かさを忘れる事なんてできやしないよ。あの暖かさは虚像だったのか?あの想いはどこにもないのか?

 彼女は別れ際に確かに僕の名前を呼んでくれたような気がするのに、もうそれを確かめることはできないらしい。全てが無に帰したなんて信じられないよ。悲しい、たまらなく悲しい。せめて現実ならば諦めもついただろうに。今日を乗り越えて明日また、いやそれは違うかな。この想いを忘れて過ごすなんて出来そうにないよなぁ...。想わずにはいられないのに想うことで苦しめられるだなんて...。これが現実。これこそが、現実。どこかで聞いたような言葉が身に染みるよ

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