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第46話 プロローグ

第1部最終章スタートです





 騎士団の先頭に立ち、ヘル・スケルトンを壊滅させたアレス騎士爵は、事後処理を臣下に任せると、急ぎデルン子爵の元に馬を走らせた。


 既に夕刻を過ぎており、デルン子爵は執務を終えて夕食に向かおうとしていた。だがアレス騎士爵の訪問を執事に告げられるとすぐ執務室に通すよう命じた。





「この度は閣下の騎士団に救援頂き、ありがとうございました。おかげであのヘル・スケルトンを壊滅させることができました」


「礼などよい。そなたの騎士団に遠征を命じたのはこのワシだし、臣下の所領に危機が訪れればそれを助けるのが主君の役目であろう。違うか」


「ありがたきお言葉。名君に仕えることができて何よりの幸せにございます」


「世辞などもうよいと言っておる。それよりこんな時間にわざわざ城に来たのは、何か重要な話があるからではないのか」


「実はお耳に入れておきたいことがございまして」


「何だ」


「今回の盗賊討伐では、ある冒険者パーティーが大きな成果を上げたのですが、その中に閣下がお探しの人物がいるのではないかと思った次第です」


「ワシが探しておる人物だと?」


「はい。獄炎の総番長という新人冒険者たちが作ったパーティーなのですが、方法は分かりませんがアジトをあっという間に探し出した上に、オークとの混血である頭目ゴゼルの首を上げてしまったのです」


「なんと新人冒険者がか! ・・・あり得ぬ」


「彼女たちは、我が娘のベリーズのボディーガードも引き受けてもらっていたのですが、娘が言うにはただの冒険者ではないと申しておりました」


「彼女たち・・・つまりヘル・スケルトンを壊滅させたのは女なのか!」


「女3人組です。今回は新たに男1人が加わって4名でしたが、たったそれだけであのヘル・スケルトンのアジトに突入して頭目と幹部3人の首を取り、拉致女性を10人救出してきました。そして最終的に全体の4割もの盗賊を葬り去ったのです」


「バカな、たった4人でそれほどの戦果を・・・我が騎士団の猛者でもそんな成果は得られまいが、何者なのだその女たちは」


「冒険者ギルドに問い合わせてみたところ、リーダーのエルは貧民街出身の今年15になる女で、後の二人は他領から来た17歳と20歳の平民女性とのこと。ですが娘が言うには全員貴族令嬢ではないかと」


「貴族令嬢・・・つまり武者修行中の女騎士が身分を隠しているということか。どこの家門かわかるか」


「いいえ残念ながら」


「なるほど確かにワシが探している人物とはそういうことか」




 デルン子爵は後継者問題を抱えていた。


 跡取りの長男は現在25歳だが、妻との間に子供がおらず、そもそも女性に興味がないのか側室も取らずに騎士団長として遠征中の身だ。


 その下は娘が続き、次男は今年13歳になったばかりである。


 子爵はこの次男の正妻を探していたが、とにかく跡取りが欲しかったので、魔力さえ強ければ家の格式など二の次。それで息子が気に入ってくれれば、もう誰でもいいというところまで追い詰められていた。


 というのも分家には跡取り候補が何人もおり、その筆頭が副騎士団長のナーシスだったが、彼には素行に問題があり子爵家を譲る気にはどうしてもなれなかったのだ。


 他の分家たちにも一長一短があり、お家騒動を起こさないためには本家の息子が次期当主になることが一番いい方法だった。


 そんな子爵だったから、懐刀であるアレス騎士爵の情報に前のめりになるのも致し方なかった。





「一度彼女たちと会ってみたいが、さてどうするか」


「では城に呼んでみてはいかがでしょうか。ヘル・スケルトンの報奨金を渡すとか言って」


「だが報奨金はギルドに払い込んでおるし、彼女たちには既に渡っているはず」


「そんなもの追加で渡せばよいのです。何せヘル・スケルトンを討伐したということは、領内の盗賊を全て一網打尽にしたということ。彼女たちはそれほどの功績を上げたのです」


「ふむ・・・よかろう。では追加で褒美を取らすぞ」


「はっ。それが賢明かと」


「ところでその3人の中では誰が一番良いと思う」


「次男のアイク様のお相手であれば、年齢的にはリーダーのエルがよろしいかと。娘が言うには魔力が高くかなりの美貌の持ち主だと」


「ほう・・・」


「私も遠目に少し見ましたが、娘の言う通りどう見ても平民には見えず、どこぞの貴族令嬢がお忍びで冒険者をしていると言った方が余程しっくり来ました。後は少し年齢は高くなりますが、シェリアという女魔術師も相当な美貌を持ち、強力な魔力も持っていると娘が申しておりました」


「つまり候補はその二人だと」


「はい。それで二人を見定めるためには・・・」




           ◇




 ちょうどその頃、領都デルンの貴族街にあるナーシスの屋敷に訪問者があった。


「どうした、こんな時間に」


 その男は、ヘル・スケルトン討伐の援軍として派遣されていたナーシスの部下だった。


「ヘル・スケルトンが先ほど壊滅しました」


「なっ!」


 ナーシスは男の言葉に絶句した。


「あのゴゼルが殺されたのか。だがアレス騎士団はどうやってあの化け物を・・・」


「詳しくはわかりません。アレス騎士団の情報統制が固く、友軍であるはずの我らデルン騎士団には何も情報が入ってきていないのです」


「くそっ、アイツめ・・・盗賊団に情報を流してヤツの領地を襲わせるように仕向けたのがこの俺だと、まさか気づかれたか」


「アレス騎士爵は頭の切れる男で、本家当主様の懐刀ではありますが、さすがにそこまでは気づいていない様子でした」


「まあいい。ではお前が見聞きしたことを教えろ」


「はっ! 私は最右翼に展開していたのでなぜそうなったのかは分かりませんが、左翼に展開していたアレス騎士団がエクスプロージョンを使用しました」


「エクスプロージョンってあの火属性最強魔法をか。だがそんな大魔法を扱える魔導師など、アレス騎士団にはいなかったはずだが」


「おっしゃる通りなのですが、冒険者ギルドには現在一人だけそれを扱える冒険者が登録されています。おそらく彼女を傭兵として雇い入れたのだと」


「冒険者だと?」


「はい。まだ若い魔術師ですが、桁違いの魔力を誇る美少女だそうです」


「桁違いの魔力を持つ美少女か・・・面白いな」


「あのエクスプロージョンは本当に壮絶でした。彼女をナーシス様の妾にして跡取りを産ませれば、デルン子爵家も安泰かと」


「ふむ。最初に冒険者と聞いた時、あのヒューバート家の縁者の女騎士を思い出して虫唾が走ったが、その女魔術師には興味がわいた。まずはこの俺が直々に品定めをしてやる。すぐにその女を連れてこい」


「はっ!」

 次回もお楽しみに。


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