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第95話 エピローグ

「なあジャン。次の目的地はブリュンヒルデ宮だが、ここからどれぐらいかかるかなあ」


 エルに聞かれて地図を広げるジャン。


「そうだな。当初はリザードマン王国から2日をかけて向かう予定だったが、リヤド岳から最寄りの基地まで戻るにしても転移陣と馬を乗り継いで1週間はかかるし、そこから朝夕2回の跳躍をしたとして、到着は8日目の夜だ」


「うわあ、そのペースじゃ夏休みが終わっちまうよ」


 エルが頭を抱えていると、ソフィアが少し遠慮がちに話しかけてきた。


「・・・あの〜、エル姉様」


「ん? 何だソフィア」


「エル姉様にはわたくしの家にも寄っていただきたいのですが、ダメでしょうか・・・」


「ソフィアの家か・・・悪いけど今回はさすがに時間がない。また今度寄らせてもらうよ」


 エルが素っ気なく断ると、ソフィアはガックリと肩を落とした。


 だがアレクセイが突然、


「それだ! ソフィアの家だよ!」


「何だよいきなり、びっくりするだろ」


「ブリュンヒルデ宮ではなくフィリア宮に行こうぜ」


「だからなんで?」


「フィリア宮とオーガ王国王城は転移装置で繫がっているし、ここから王城へも魔王軍の移動式転移装置であっという間だ」


「つまり馬を使わず転移だけで行けるということか。それにフィリア宮は確かオーガ王国の遥か東にあるらしいし、妖精の森に行くにはこれが最短かもな」


 するとソフィアも満面の笑みで、


「妖精の森に行かれるのですか? それならウチのすぐ近くです! わたくしが案内しますので是非っ!」


「すぐ近く?! 渡りに船とはまさにこのことだな。なら遠慮なくお邪魔させてもらうぜ」




 その後現場指揮官に当面の作戦を指示したエルは、ヒューバート騎士団を含む仲間たちとドラゴ宰相、サキュバス騎士団とドワーフ空挺団の司令官を集めた。


 そして収納魔術具にしまっておいた魔王軍総司令官専用の軍用転移陣を取り出し、カーペットのように広げて魔石タンクと接続。


 それを起動させて、全員を順次オーガ王国王城へと転移させた。



           ◇



 魔王軍大本営のある、オーガ王国王城謁見の間。


 その玉座には、メルクリウス皇帝冠を戴く血染めの聖女エル。


 そして彼女を前に膝をつくのはゴウキ王とレギウス王子、オルレアン王を始めとする鬼人族の王とその側近たち。


 さらに彼らの後ろには、エルの仲間やドラゴ宰相、友軍のサキュバス族とドワーフ族の司令官たちが勢揃いしている。


 その全員に向けてエルは戦果報告を始めた。


「リヤド岳火口へ突撃した俺たちは不死王フェニックスの討伐に成功し、幹部全員も血祭りに上げた」


「おおおおおおおっ!」


「フェニックスの息子ホウオウも仲間や友軍の活躍で倒すことができ、最大の軍事拠点である城塞都市プフレを陥落。鳥人族マフィアは事実上壊滅した」


「わああああああっ!」


 謁見の間に歓声が起こり、そこに集まった王たちが手に手を取って喜びを分かち合った。


 そう。あらゆる犯罪に手を染め、為政者たちを悩ませ続けていた犯罪者集団がようやくこの世から姿を消したのだ。


 もちろん全ての悪が滅んだわけではないが、彼らの国に平和が訪れることだけは間違いない。


「残すは大陸中に広がる末端組織とその構成員の殲滅だが、それはここに居る者たちに任せたい」


「はっ!」


「北方山岳地帯は引き続き魔王軍が掃討作戦を継続。一方アルデシア平原以南はランドン=アスター帝国軍とリザードマン王国軍、サキュバス王国軍、ドワーフ王国軍の4軍が手分けして対応に当たって欲しい」


「はっ!」


「なお、フェニックスの6人の妻と組織ナンバー2のファルコンには精神操作魔法を施してある。構成員に投降を呼びかける際に利用してもいいし、それ以外にも自由にこき使ってほしい。そして逮捕した奴らにはファルコンを含めて全員裁判にかけてその罪を償わせてやれ」


「はっ!」


「それからフェニックスの神殿には古今東西のお宝が眠っている。中に囚われている奴隷女を救出がてら、妻たちを使って全ての財宝を回収して国や村落の復興のために使ってくれ」


「はっ!」




 その他諸々の指示と全ての報告をエルが終えると、王たちの先頭で膝をつくゴウキが立ち上がった。


 そして王たちに向けて号令をかける。


「総員起立!」


 ザザッ!


「魔王軍総司令官エル殿に敬礼っ!」


 ザザザザザッ!


 直立不動で敬礼するゴウキ王と、その背後にズラリと並んで見事な敬礼を見せる王や重臣たち。


 その全員が目に涙を浮かべてエルの偉業を称えた。


「メルクリウス帝国万歳! エル総司令閣下万歳!」





 今後は北方山岳地帯全域を領有するであろう鬼人族連邦メルクリウス帝国。


 大陸中央部を領有する獣人族の盟主、武断国家リザードマン王国。


 大陸中南部を領有する最強国家サキュバス王国。


 大陸西南部を領有しランドン=アスター帝国と同盟を結ぶ、先進工業国ドワーフ王国。


 そんな南方新大陸を代表する4大国を従え、大陸全土に向けて進軍を開始させたのが、神とも崇められた不死王フェニックスをその自らの手で葬ったランドン=アスター帝国の皇女エル。




 今この場にいる全員が、エルこそが大陸の新たな支配者であることを認めた瞬間であった。

 次回新章、お楽しみに。


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