オーガキングを討て‼︎
「があっ⁉︎」
激しい痛みが私を襲い、私は集中力を切らしてしまった。
その瞬間、身体全体でとてつもない痛みが沸き起こる。
…痛い…痛すぎる…⁉︎
私は激しい痛みの元である腹を触った。外套も消失した今、もう身体を守るものは薄い服だけ…しかしその服も腹の部分、いや胴全体の布が消え去っていた。腹を触った右手を見ると、真っ赤に染まった手が、オーガキングの脅威を表す…。
「はあっ‼︎」
デンジがオーガキングの攻撃を肩に掠りつつも、オーガキングの腹を裂く。だが、そのデンジもオーガキングの攻撃のせいでバランスを崩し、転倒する。
「くそッ…このままじゃ、オーガキングに殺される…‼︎」
デンジはそう言いながらも起き上がり、剣を構える。
「グルガアアアアア‼︎」
オーガキングはそんな状態のデンジに大剣を振る。
…デンジは死なせない‼︎
「ぐっ…⁉︎」
私は剣を構え、オーガキングに突進し、振り下ろされる大剣の軌道を逸らした。しかし、力が強すぎるせいか、剣が折れてしまった。
…くそッ、剣が無かなったら、もう…⁉︎
「グガァ!」
オーガキングが私に目を向け、再度大剣を振り下ろす。
「危ねぇ…‼︎」
オーガキングの攻撃が当たると思った矢先に、デンジが私を抱え、オーガキングの攻撃を避けた。
「デンジ…⁉︎」
「レイを死なすわけにはいかねぇんだ…‼︎だから、少し辛抱してくれ…‼︎」
デンジは私を抱え、オーガキングから遠ざかっていく。オーガキングも追いかけてくるが、素早いデンジには追いつくことが出来ない。
デンジはオーガキングとある程度の距離をとると、すぐ近くにあった洞穴の中に入った。
「「ハァ…ハァ…ハァ…‼︎」」
洞穴に入った所で、デンジは私を解放し、その場で倒れる。私も先程の戦闘の疲れが押し寄せて来たため、壁に寄っ掛かり、息を整える。
「ハァ…れ、レイ…‼︎腹は…大丈夫、か…?」
「だ、大丈夫よ…出血の割にはそこまで傷は深く無いから…。」
「そ、そうか…なら、良いんだが…。」
とデンジには言っているが、この傷はかなり深いだろう。何せ、大剣の一撃を直接食らってしまったのだから…。
「それにしてもレイ、あの野郎を倒すにはどうすればいいと思う…?」
デンジは肩で息をしながら、私に聞いてくる。
「…分からない…だけど、倒すことは出来ると思うわ…‼︎」
「…⁉︎そ、それは本当か…⁉︎」
デンジは私の発言を聞き、目を大きく見開く。そんな彼に、私は倒せると思った理由を話した。
「ええ…!あのオーガキング、随分と力があるけど、スピードは無いわね…。その点では私達の方が有利ね。そしてオーガキングは目に留まった者に攻撃を仕掛けるわ。だから、片方が奴をずっと引きつければ、もう片方はずっと攻撃し放題だわ。魔法も広範囲攻撃も無いから、引きつけられていない方に攻撃が飛んでくる心配は無いわ…。」
「なら、その引きつけ役は俺がやる…‼︎俺なら、あのオーガキングの攻撃を避けれる…‼︎それに何かあった時は、両手である俺の方がどうにか出来ると思うんだ…!」
私が理由を話した直後、デンジがそう言う。
私はそれを断ろうとしたが、デンジが「やらせてくれ…!」とこちらに迫ってくる。ここから進展するには、流石に私が受け入れるしか無いだろう。
「…分かった。じゃあ、お願いするわ…‼︎」
私達は作戦を決めると、洞穴を出た。先程走って来た方を見ると、オーガキングが私達を探しているのが見えた。
「アイツ…俺達を探しているのか。って、レイ、剣が折れているじゃないか…⁉︎」
「えっ…ああ、そう。攻撃を受け流す際に折れてしまったわ。」
「なら、俺の剣を貸すぜ。切れ味は凄いから、役に立つと思うぜ。ただ、剣で攻撃を受けることは出来ないから気をつけてくれ…。」
「…‼︎分かった…ありがとう。」
私は剣を振ると、折れてしまった剣を鞘に仕舞う。そしてデンジから剣を借りると、スイッチを入れ、光の刃を出現させる。
「さあ、リベンジだ…‼︎今度こそ、絶対に倒してやる…‼︎」
デンジがそう言って、走る体勢をとる。私も気持ちを引き締め、デンジの横に並ぶ。
「…GO‼︎」
デンジの合図で私達は同時に走り出した。その走る速さは、私に気づいたオーガキングが目で追えないものであった…。
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「ハァ…ハァ…ハァ…‼︎」
デンジがオーガキングの攻撃を避け、オーガキングの腕に傷をつける。
私はデンジがオーガキングに攻撃を仕掛けると同時に、オーガキングの背中を斬る。
デンジがオーガキングの攻撃を避け続け、もう一時間が経つ。オーガキングの身体は傷だらけだ。しかし、こちらの体力もそろそろ限界だ。
「ハァ…‼︎」
オーガキングがまた剣を大きく振るので、デンジはギリギリの所で回避する。そして反撃の一撃を浴びせる…。
「ハァ…こんなに攻撃を浴びせても、まだ倒れんとはな…‼︎」
「…思ったよりも頑丈…‼︎」
予想通り以上のオーガキングの頑丈さだが、まだ諦めない。私達はこのオーガキングを倒すと決めたのだから…‼︎
「グフォッ⁉︎」
オーガキングがいきなり血を吐いた。これはつまり…オーガキングも限界が近いってことだろう。
「今だ…‼︎」
デンジがオーガキングに沢山の斬撃を浴びせた。私もそれに続く。
「グルガアアアアア‼︎」
オーガキングが叫んだ。私達はマズいと思い、後ろに下がる…が。
ザシュッ‼︎‼︎
「…⁉︎」
避けるのが少し遅れてしまい、私の右脚が吹き飛んだのだった。思わず、叫んでしまう所だったが、グッと噛み締める。
…今はデンジがいる。そんな彼の側で情け無い姿を見せれば…‼︎
「…‼︎」
…これ以上、温存している場合じゃない…‼︎
私は<覚醒>を発動させた。咄嗟に身体が軽くなり、片脚でも素早く動くことが出来るようになった。
デンジが私を止めようとしたが、もう遅い。私が<覚醒>を発動させた時には、私は既にオーガキングの肩に立っていた。
「グルガアアアアア‼︎」
オーガキングが肩にいる私に気づき、肩を叩くが、それよりも早く動くことでそれを難なく回避する。
…このオーガキングにさっさとトドメを…‼︎
「グルガアアアアア‼︎」
オーガキングの叫びが森の中で響く…。しかし、それは勝利を確信したものでは無く、救援を求めるものだ。
「…はっ‼︎」
私はその叫んでいるオーガキングの腕を斬った。切断された腕がボトリッと落ち、切断面からは血が噴き出る。
「グオッ⁉︎」
オーガキングは腕が斬り落とされたのに気づき、その腕を見る。が、それは無駄な行為だ。
「…はあ‼︎」
私はオーガキングの首を斬った。首は宙を舞い、そして地に落ちた。そのオーガキングの目は大きく見開いており、今にも動きそうだった…。
「ハァ…ハァ…ハァ…‼︎」
…本来、この<覚醒>は切り札としてとっておくものだった。しかし、脚を失くしたショックと自身の体力の限界、そして何よりもパートナーであるデンジを守るために使ってしまった。これでもう、私は動けないだろう…。
「レイ…‼︎」
「ハァ…デンジ…ハァ…ごめんなさ…⁉︎…ガフッ⁉︎」
私は精神も限界が来てしまった。血を吐き、<覚醒>も解除され、終いにはデンジの前で倒れてしまったのだった…。