閑話休題 誠とサクラの家にて
誠とサクラは途中まで一緒に帰ったあと、そのままどこに立ち寄るでもなくあっさりと別れた。
そして夜、誠の家では…
「お兄ちゃんまたご飯食べながら本読んでる!」
「あぁ…ごめんごめん」
「そんなに本が面白いの?なんの本読んでるの?」
「あぁ…犬のしつけ方の本だ…」
「まさかのHowto本!でもうち犬いないじゃん…飼うの?」
「いや飼わない…ただ今後の勉強にはなる!」
誠は力強く断言する。
「まったくお兄ちゃんは、たまになに考えてるんだかわからないよ…」
葵は兄はやっぱり少し変わっていると認識を強くした。
「まぁそんな褒めるな…」
誠はなぜか少し喜んでいる。
「褒めてないんだけどね…」
そんな会話をしつつ、そのうちに誠はご飯を食べ終えた。
しかしそのまま部屋に戻らずに、一緒に夕ご飯を食べていた母親に話しかけた。伝えなければいけないことを思い出したのである。
「そういえば母さん…明日母さんの仕事場に人連れていっていいか?」
「急ね!別に構わないけどどうしたの?」
「母さんに仕事を頼みたいんだ…」
「なになに、誠の友達?」
急に降って沸いた誠のお願いに、母親は色めきたつ。
「いやクラスメイトだ!」
「あんたが珍しいね、いいよ!1時頃でもいい?」
「ありがとう!あぁそれで大丈夫だよ!」
「どんな子か楽しみだわ〜」
「お願いだから普通にしてくれ」
「お母さん写真撮って送ってねー!」
「絶対にやめてくれ」
こうして宗方家の夜は過ぎていく。
同時刻、サクラの家では…
サクラは誠から借りた本の表紙を見ながら悶々としていた。
「宗方くんから本借りたけど…なんでこんなマニアックな本あるのか聞けば良かった…すごい気になる…」
しばらく考えてみたが答えは出なかった。
仕方ないのでまずはゴリラでも分かるコミュニケーションの取り方の本を開いてみた。
「こ、これはすごいわかりやすい…」
サクラは本の内容がわかりやすいことに驚愕した。
「ゴリラの名称から種類、好物や出生地まで事細かく載ってる…しかもイラストや漫画、飽きさせないようにクイズまである…」
本は確かにわかりやすかった…
「コミュニケーションというかドラミングについて詳しく書いてるんだけど…もうゴリラの図鑑だよね…これ!」
サクラは誠と話していた時とは違い、思いっきりツッコミをいれた…
サクラは一人だと饒舌になるタイプだった。
ひとまずゴリラの本を置き、あまり期待は出来ないが、哺乳類の友達の作り方の本を手に取った。
「これもまたすごいなぁ…」
サクラは本に対して感心した。
「うん…やっぱ哺乳類の図鑑みたいなものだよねぇ…うすうす気づいてたよ…」
イルカや鯨、ラマなどの水陸の哺乳類について詳しく習性だとかが載っていた。
「珍しい動物も載ってるんだねぇ…すごいよこの図鑑…でもなんで宗方くんは所々に付箋貼ってあるのかな…気になったのかな…」
サクラは図鑑をパラパラと捲っていく…
ひとつのページに目が止まった。
「これは…またゴリラにも付箋がついてる…宗方くんはゴリラ好きなんだね…伝わったよ」
サクラはパタンと本を閉じた。
「さて…明日なに着てこうかな?」
ただ普段無表情の誠の意外な一面を知れてすこしほっこりしたのはサクラだけの秘密である。
こうして明日に向けて夜は更けていった。