第4章 高校生活と友達の作り方
学校でのいじめ事件から、1週間が経過しようとしていた。
あれから誠とサクラは、友達づくりに奮闘していた。
と言っても誠が案を出してサクラが実行すると言うものだが、結果は散々だった。
最初に考えたのは、朝のあいさつをするというものだったが、サクラの不器用さを誠は甘く見ていた。
それはいじめ事件の次の日から始まる。
ふと誠は朝から暗い顔をしているサクラに話しかけた。
「おい、お前それが友達を作ろうとしている顔か?」
「む、宗方くんおはよ…だって…」
「だってなんだ?」
「いやぁ昨日小説読んでたら、寝不足になっちゃいまして…」
「おい…お前は友達作る気あるのか?」
「ありますよ…」
「まぁいい…友達を作るためにまずは印象を変えないといけないな」
「印象?」
「そうだ!ただでさえお前は暗いんだから、まずは笑顔であいさつをすることだな。すこしは印象も変わるだろう」
「は、はい!わかりました!やってみます!」
朝早くから誠のアドバイスをサクラは聞いて実行に移す。
ただクラスメイトにあいさつをした彼女は、声が小さくて、元気とはかけ離れていた。そして笑顔がぎこちなかった。
致命的となったのはあいさつをしたあと、サクラは次の言葉が出てこなく、そのままトイレに逃げ込んでいったことだ。
結果的にあいさつをされた女子生徒からは、不信感が残る形となった。
トイレから戻ったサクラは、わかりやすく落ち込んでいた。
「お前は不器用なのか…」
「そんな…言わないでくださいよ…」
誠は深くため息をつくと、また次の手段を考えた。
「そうだな…まずは見た目か…」
「見た目ですか…どうすればいいのでしょうか?」
「そうだな…次の土曜日お前暇か?」
「え、え…と、特に用事はないですけど、なんでですか?」
「よし、それなら駅前に朝の11時に集合な?理由はその時に教える!」
「なんで理由教えてくれないんですか…!」
「まぁ来たらわかるさ…」
桜は普段無表情が常の誠なのに悪役のように見えるのはなぜだろうと疑問が浮かんだが、それ以上は聞けなかった。
その後、作戦第二弾としてうっかり消しゴム落とす作戦を行ったが、気付かれず徘徊中の教師に拾われ失敗。
前の席や横の席に話しかけようとするも、朝のあいさつのトラウマがよみがえり、サクラの心は折れた。
そのまま放課後となり、誠はちらっとサクラを見たが完全に生きた死人のようになっていた。
教室では誠とサクラの二人きりとなっていた。
「おい…大丈夫か?」
「宗方くん…疲れました…」
「まぁ全部うまくいかなかったもんな…お前の不器用さに驚愕してるところだ」
「うぅ…これでもがんばったんですけどね…」
「まぁそれは伝わった」
誠はそう言ってパックのイチゴミルクをサクラの机に置く。
「宗方くん!これは?」
「まぁがんばったからな…褒美だ」
「宗方くん…ありがとうございます!」
「いやいい…頑張ったときは褒美をあげるのが効果的とこの本に書いてたからな!」
「へ、へぇ…ちなみになんの本ですか?」
「あぁこれか?これは犬のしつけ方の本だ…」
「宗方くん…いつも読んでるの小説じゃなかったんですね…」
「なにを言ってるんだ?小説も読むぞ。たまたま今日はこれなだけだ!」
「そ、そうなんですか…いろいろ聞きたいことありますが…怖いので止めておきます…」
「そうか…あと、これ読んでおけ!」
「なんですか?」
そう言って誠は二冊の本を鞄から取りだし、サクラに渡した。
「宗方くん…ゴリラでも分かるコミュニケーションの取り方って…」
「役に立ちそうだろ?遠慮せずに読んどけ!」
「は、はい…」
サクラはもう一冊の本を見て固まった。
「どうした?もう一冊も役に立ちそうだろ?」
「ねぇ…宗方くん…哺乳類の友達の作り方ってなんですか?」
「まぁあながち間違ってないだろ…」
「う、うん…間違ってないけど…お友達の幅広くないですか?」
「まぁ細かいことは気にするな!」
サクラは誠の方を向いたが、相変わらずの無表情で本に目を通しており、サクラは自分のためにもこれは誠なりの善意で持ってきてくれてるのだと思い込むことにした。
「あ、ありがとうございます!読んでみます!すこし内容は気になりますし…」
「あぁ…明日は土曜日だからな?忘れるなよ?」
「は、はい!わかりました!」
そう言って二人は教室を後にした。