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閑話休題 宗方誠の家にて



 あの後2人は家の方向が分かれたので解散した。


 帰宅後何をするでもなく部屋過ごしているうちにあっという間に夜になり、リビングに下りて終わりない受験勉強でストレスが溜まっている妹に絡まれていた。


 誠にとっては、これがいつもどおりの日常。学校では態度と目付きで人から話しかけられることはなかったが、話しかけられれば話すし話したくなれば自分からも声をかける。


 決してフレンドリーな態度とは言えないが、人間関係を全て拒絶しているわけではなかった。


 しかし現状、中学に引き続き高校生活でも孤立しているのには間違いない。


 けれど、今日は違った。

 猿渡もサクラも壁を作る誠に話しかけた。

 どちらも誠の言葉を飾ろうともしない態度に呆れて離れていかなかった。驚きだった。


「お兄ちゃん!ねえ!ねえってば!わたしの話聞いてる?」


「はいはい。聞いてるよ」


「お兄ちゃん聞いてるだけじゃダメなんだよ!すこしは意識しないと!」


「はいはい精進しますよ」


 誠はまったく心のこもらない声で答えた。葵はいつにも増して上の空の兄に頬を膨らませて抗議の意を唱えた。しかしやはりどこか心ここに在らずで、葵は兄を注意深く観察することに切り替えた。


 やがてご飯を食べ終えた誠は自室に戻った。


 しばらく部屋の机の椅子に座って読書をしていると、不意に扉をノックする音が聞こえる。


「お兄ちゃん入るよ!」


 誠の反応も待たずに葵が部屋に入ってきた。


「葵、返事を聞いてから入れっていつも言ってるだろ?」


「ごめんごめん!いいじゃん!やましいことある訳じゃないんだし」


「やましいこと?」


「気にしなくていいの!」


 葵は余計な想像をしたらしかった。

 誠はお互いのためにスルーすることにした。


「…ところで葵なんの用だ?」


「あー…お兄ちゃん数学教えて?」


「仕方ないな…いいぞ。どこがわかんないんだ?」


 誠はなんだかんだ言っても、妹には弱い兄だった。


 勉強を教えながら、時間は過ぎていく。


 合間を見て葵がすこし言い出しにくそうに、誠に問いかけた。


「お兄ちゃん……なんかいいことあった?」


「うん?なんもないぞ?なんでだ…」


 誠はいつものように表情変えずに答えた。


「ううん…なんとなく今日のお兄ちゃん変だし…でもなんだか嬉しそうだから…」


「…そうか」


 思ってもいなかった妹の指摘に誠は思案する。


「兄妹なんだから、普段無表情でもわかるよ…ねえねえ、友達でもできた?」


「まぁ…友達ではないけどな…それに近いことはあったな…」


 それを聞いた葵が顔を輝かせた。


「お兄ちゃん!良かったね!」


「すまんな…心配かけて…」


「ううん…いいんだよ…今度は…ちゃんと友達になれるといいね」


「あぁ…そうだな」


 葵からみた誠の横顔は、すこし複雑そうに見えた。

 それは家族だからこそ分かる微妙な違いだった。


 葵はこの不器用で頑固で優しい兄に友達が出来ますようにと密かに祈る。



「あっ、お兄ちゃん、次は古文教えて!」


「お前な…」


  


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