旅出
初投稿です。
文章に拙い部分があっても暖かい目で見て下さると幸いです。
「ゴードン様」
「どうしたハク」
「やはりその子を……」
「お前には関係ない事だ、失せろ」
「はあ、それはよろしいのですがもしかすると復讐に来るかもと思いましてね」
「ありえん、まずあの森で生き残ってはいけないだろう、もし生き延びたとしてこの事を覚えてはいまい」
「それならいいのですが……」
「解ったならさっさと仕事に戻れ!」
「へ、へい!承知いたしやしたぁ」
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俺の名前はヤミル。
この名もなき森に魔物として生まれてきたみたいだ。
俺は魔物の中でもかなり賢くそれを利用し生きている……と自負しているが実のところこの森から出たことがないので森の中で相対的に見て賢いということに過ぎない。
見た目はどんなもんかというと体は黒に近い紫で頭には角が一本生えている。
手には鋭い爪が生えていて、先が尖った尻尾があるというような具合だ。
今日は住処であるほら穴から食料が無くなってしまったので狩りに出かける
今日の獲物は大きな2つの耳が特徴の毛玉のような魔物だ。
こいつの肉は特に美味くてほら穴周辺にたくさん生息しているから森での生活に必要不可欠なんだ。
どんなやり方で狩りを行うのかというと奴は逃げ足が異常に早いので、茂みに潜みながら近づき、特徴である爪で一突き、というふうなものだ。
こう見ると簡単な様に見えるが奴らは耳もいいので音をたてないよう近づくのも大変なのだ。
獲物は5mほど先にいる。
昨日はここで木の枝を踏んで音を鳴らしてしまったから奴を逃してしまったから、今日こそヘマは出来ない。
獲物を目の前に捉えて、振り返ってこない事を祈りながら飛び掛かって爪を突き刺し、
「ギッ!」
という鳴き声がして奴の死を確認して、俺は安心してホッと息をついた。
住処のほら穴に入り今日狩りで得た肉を食べながら、このまま森での日々を過ごしていくのだろうかと考えたら突如、頭の中に声が聞こえた。
「このまま森で一生を終えるのか」
「外の世界を観てみたくはないのか」
「他の知性ある魔物と関わりたくないのか」
俺は鳴き声が出そうになるのを抑えながら眼を大きく開いて驚いた。
今は夜なので鳴き声を上げると凶暴な夜行性の魔物に居場所が知られてしまうかもしれないからだ。
俺は自分の親に会ったこともないし自分の名がどうしてヤミルなのかということも分からない。
そんなことを考えているうちにどうしようもなく好奇心が湧いてきた。
これがあの声の作用なのかどうかは分からない。
ただ明日にでもこの森を出る方法を探ろうと思った。
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