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第44話「スパルトイ達の楽しみ②」

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 ダンはスパルトイ軍団を魔境の湖へ連れて来た。

 以前スオメタルと鱒を数多釣った場所である。


 大自然の素晴らしい景観に感動するスパルトイ達に対し、

 人生の楽しみを与えたいと告げたのだ。


『結論から言おう。お前達に釣りを教えたいと思う』


 言葉を返して来たのは、やはり彼等のまとめ役スパルトイリーダーである。


『釣り? というと、ダン様。半農半士の私達も行っておりましたぞ。竿、釣針、釣糸等々の道具で主に魚を採捕する行為……でございますな』


『ああ、そうだ』


『具体的に説明するのなら、食糧確保の為、餌を使い、魚を釣り上げると……失礼な言い方ですが、真新しいものではありませんな』


『ああ、真新しくない。でも釣りは単に食料確保だけじゃない、魚との駆け引きなど戦略を楽しむゲームでもあるんだ』


『な、成る程……魚との駆け引きなど戦略を楽しむゲーム……ですか? あまりピンと来ませんが』


『皆へこれを渡す』


 スパルトイリーダーの疑問に答えないまま……

 ダンは収納の腕輪から、糸が巻いてある木製リール付きの釣竿を取り出した。


『おお、これは……どうされたのですか? どこかの街でご購入されたのですか?』


『いや、違う。全部自作さ』


『おお、自作ですか! これは凄いモノですぞ』


『褒めてくれて嬉しいよ。俺、ジャンク屋で本来、モノを直す修理屋だけど、いちから作るのも大好きなんだ』


『素晴らしいと思います。で、餌は? パン、もしくは畑に居るミミズか何かを使うのですか?』


『これさ!』


 ダンが続けて取り出したのは、どこかで見た憶えのある金属性のものである。


『こ、これは!? スプーンの丸い先端のみでございますか? 何故か金属フックが付いておりますね』


『ああ、これが疑似餌だ。これも俺の自作』


『き、器用でございますね、ダン様は』


『何とか、見よう見まねで作った。で、この疑似餌に魚が喰い付く。そして金属フックに魚の口がかかって釣り上げる。別にスプーンじゃなくて魚との相性が良い光る金属片なら、何でも良いんだけど』


『ほう……』


 ダンが取りだしたスプーン疑似餌は、これまでの使い古しを加工したものだ。

 スオメタルには、大いにチェックされてしまったが……

 以前、王都の金物屋で買った新品と入れ替えたのである。


 スパルトイリーダーはスプーン疑似餌を見て、不思議そうに言う。


『ダン様、これで魚が釣れるのでございますか?』


『以前ヴァレンタイン王国の漁師が金属片を疑似餌にして釣ってるのを見た。ウチの城にスプーンもあったから、真似したんだ』


『成る程!』


『よし! 論より証拠。早速釣ってみよう。俺が手本を見せる』


 ダンはそう言うと、スプーン疑似餌を糸に付け、湖面へ投げ入れた。

 投げ入れられたスプーン疑似餌は、ぽちゃんと音を立て水中へ沈んだ。


 沈んで行くスプーン疑似餌の行方を凝視しながら、ダンは説明を進める。


『この疑似餌が光を反射しながら水中を進むのが、魚には餌になる小魚に見えるらしい。俺も素人だから、そんなに上手くはない。けれど、基本はあまり速く巻きすぎず、時には止めたり、遅く動かしたりして魚を誘う』


 魔境のこの巨大な湖は人間が入らず全く場荒れしていない。

 先日、スオメタルと一緒に餌で釣った時は入れ食い状態だった。


 それはスプーン疑似餌でも全く変わらなかった。

 ばくっと、巨大な鱒がスプーン疑似餌に喰い付いたのだ。


 5分以上の格闘の上、鱒はしっかりとダンに釣り上げられた。


『おお、ダン様! やった~!!』


 スパルトイ達から、大きな喝さいが上がった。


『よっし、慣れるまでは上手く行かないかもしれないが、レッツラゴー。あ、フックが付いてるから、周囲に気を付けて疑似餌を投げてくれよ』


『お~~~っ!!!』


 心と心の会話、念話だから響かないのだが……

 スパルトイ達の鬨の声は確かにダンの心に届いていたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 1時間が経った。


 ダンも含め、初心者だらけの釣りは……

 結構な大漁だった。


 スパルトイ達の『腕』には各自差があったが、皆意外に器用であり、

 釣果なし、いわゆるボウズは居なかった。

 それだけこの魔境の湖は魚影が濃いのである。


 当然スパルトイ達は上機嫌だ。


『ダン様! 釣りは労働の一環だと思っていましたが、違いました! こんなに楽しいものなのですなあ!!』

『本当に! あっという間に時間が過ぎましたぞ!』

『最高です!!』


 ここでスパルトイリーダーが尋ねて来る。


『素晴らしい技法を教えて頂き感謝致します、ダン様。でも何故我々に教えてくれたのですか?』 


『ああ、お前達を見てスオメタルの事を思い出してな』


『スオメタル奥様の事を?』


『ああ、不死者アンデッドのお前達には分かるだろう。スオメタルは人間の魂を宿した自動人形オートマタだ』


『………………』


 スパルトイリーダーは答えなかった。

 だが、沈黙は肯定のあかしであろう。


 ダンはそのまま、話を続ける。


『お前達には言っていないが……あいつは悪魔に父親を殺されたんだ』


『………………』


『スオメタルには、生きる楽しみをあげたかった。俺に協力して悪魔の王たる魔王を倒した後、仇を討ったあいつには生き甲斐がなくなるのかなと、ふと思った』


『………………』


『だからガルドルドの遺跡に残っていたマニュアル、全世界の魔導工学士に会って、必死に学んだ』


『………………』


『あいつに食べる機能……食事機能を付けてやりたかったんだ』


『………………』


『おかげであいつは毎日食事を楽しみにしている。心が浮き浮きしているのが分かるんだ。生活に張りがあるんだ』


『………………』


『本当は、スパルトイのお前達にも食事の機能を付けてやりたい。何か方法があれば、学びたい、何とか習得したい。亡霊のタバサにもだ。しかしすぐは無理だ』


『………………』


『毎日、コツコツと働き武技を更に磨く。それがいけないとは言わない。でも何かお前達の心に潤いが欲しいと思ってな。何か、やれる事はないかと思い、釣りを教えたくなった』


 ここで、ずっと無言であったスパルトイリーダーが反応した。


『ふふふ、骨だけの私達スパルトイに心の潤いですか?』 


『………………』


 今度はダンが無言となった。

 構わず、スパルトイリーダーは言葉を続ける。


『申しわけありません。皮肉ではないのです。我々は……凄く嬉しいのです。ダン様の思い遣りが……出会ったばかり、加えて押しかけ同様の我々にここまでして頂いて……』


『いやいや、お安い御用さ。こうして出会ったのも何かの縁だもの。俺は支えてくれる者には最大の感謝で応えたいんだ』


 スパルトイリーダーはダンの言葉を聞き、同胞達を見やった。

 分かっていると言うように、スパルトイ軍団は全員が頷いた。


『ダン様、我々の心はひとつです。文字通り、粉骨砕身の思いで、貴方と奥様にお仕えして行きます』


 スパルトイ達から、熱い思いを告げられ……

 ダンも心が熱くなるのを感じたのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


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