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第19話「抱き枕の拝命」

 ここはダンの寝室。

 収納の腕輪から出したベッドで、彼はぐっすり眠っていた。


 しかし、ダンはいつもの癖で「ぱっ」と目を覚ました。

 潔く飛び起きる。

 セントヘレナの王宮に滞在していた時、勇者になる訓練の為、いつも起きていた時間である。


 改めて見やれば、部屋に置いた魔導時計はまだ午前3時過ぎ……

 日付けは変わっていたが、朝とはいえない。


 窓から見える外は、当然の事ながらまだ暗かった。

 この時間では、夜はまだ明けていないのだ。


 ダンは苦笑し、手足を思い切り伸ばした。

 解放感が満ちあふれる。


「魔王討伐からは、すっぱりお役御免になった。さすがに訓練のさぼりはNGだが、これからは、もう少し寝ていようか……な」


 と、ダンが独り言ちたと同時に。

 やや低いが元気の良い、挨拶の声がかけられる。


「うふ、おはようございます! まだ眠っていて構いませぬよ、でも相変わらず早いでございますね、マスター」


 自然に反応したダンではあったが……


「ああ、おは……よう、って……」


「うふふっ」


「ええっ!? 何で? スオメタルが、そんなカッコで俺のベッドに居るのぉ?」 

 

 何と!

 ダンの傍らにスオメタルが居た。

 白い肌が透けて見える艶っぽいレースの下着姿である。


 驚くダンに対し、スオメタルは微笑みながら淡々と告げる。

 

「何で? と仰られても困るでございますが……仕方ありません。私がここに居る正当な理由を、マスターにちゃんとご説明するでございます」


 話し方はいつものスオメタルである。

 ダンはいろいろな原因と状況を思い浮かべたが……

 まずは彼女から話を聞くしかない。


「あ、ああ……頼む」


「はい! 私とマスターは夫婦……いえ、まだ夫婦になる予定の婚約者同士ではございますが、愛し愛される者同士、同衾どうきんするのは当然でございますゆえ」 


 夫婦?

 婚約者同士?

 

 違うと思う。

 スオメタルの事は愛おしいが、ダンの気持ちはそこまで到達していない。


「いや、婚約者同士とか、愛し愛される者同士、同衾どうきんするのは当然とか違うし……第一、お前の個室兼寝室とベッドは、ちゃんと用意していたじゃないか?」


「昨夜、ふと気が変わりましたゆえ、元の私の部屋は急きょ客室に変更致しました。この城の寝室は、愛と効率を考え、私とマスターの共用に致しました。何か問題でも?」


 「ぐいっ」と身を乗り出し、迫るスオメタル。

 真摯で気合のこもった眼差しに、ダンは気圧されたようになる。


「何か問題でもって……ま、まあ、良いか」


「ノープロブレムという事で……OKでございますね」


「ああ、わ、分かった」


「では! 私スオメタルは! マスターより抱き枕としての任務も拝命致しましたので、粛々(しゅくしゅく)と務めさせて頂きます」


「分かった、分かったって、え? 抱き枕ぁ!? そんなの! め、め、命じてね~って!」


「華麗にスル~。はい、スオメタルは今後、マスター言いなりの抱き枕となり、より一層、甘えさせて頂きます。とりあえず今朝の分と致しまして、マスターが私の名を優しく呼び、ぎゅっとして頂ければ、任務完了でございます」


「…………」

 

 ダンがすぐ返事をしなかったので、スオメタルは不安を感じたようだ。


「もしかして……お嫌でございますか? 私を抱き枕にするのは……却下でございますか? マスター」


 スオメタルは切なそうにダンを見つめ……

 寂しそうに俯いてしまった。

 

 ダンは……もう、今迄の認識を捨てた。

 

 やはりスオメタルは『妹』ではないのだ。

 真摯に熱く自分を慕ってくれる素敵な可愛い恋人なのだ。

 そんなスオメタルを愛しいと感じる。


「……分かった! スオメタル、おいでっ!」


「は~いっ! マスター、大好きっ! でございますっ!!」


 『お許し』が出たスオメタルは元気に返事をし、嬉々として、

 ダンに抱き着き、ぎゅっとして貰った。


 やはり……

 スオメタルは、ツンデレ。

 ダンに対してだけは、超が付く甘えん坊だったのである。

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