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第15話「リフォーム依頼」

 ダンとスオメタルはタバサとスパルトイ達へ留守を頼むと……

 更に城の周囲に魔法障壁もセットして、転移魔法で一気に跳んだ。

 

 しかし、行き先はヴァレンタイン王国王都……ではない。

 

 全く違う場所である。


 ふたりの行き先は、魔境と国境を接する、

 ドワーフことドヴェルグ族の巨大な地下国家、イングズの王都ザガズである。

 

 このザガズに、城のリフォーム工事を依頼するドヴェルグの職人オルヴォ・ギルデンを訪ねるのだ。

 無論、ザガズの正門近くまで、跳んだのはいうまでもない。


 何故、ダンはドヴェルグ族と親しいのか?

 

 実は以前、ひょんな事から、ダンとスオメタルは……

 デスヘルガイザー麾下の魔王軍と交戦中であったオルヴォ達、ドヴェルグの絶体絶命の窮地を救ったのである。


 一族滅亡の危機を防いでくれた勇者ダンを、ドヴェルグ達は称え、敬った。

 それ以来、何度か遊びに行き、とても懇意となたのである。 

 

 通常なら厳重なチェックのある入国も、馴染みであるダンの顔を見た門番がすぐに通してくれた。

 

 あるじのオルヴォは自身の店で、部下である他の大勢の職人達と共に仕事をしていた。

 店といっても人間が営む商会に近い規模の超大型店である。

 

 このオルヴォは職人ギルドの長も兼任していて、年齢は200歳と少し。

 背は約160cmで体重は100㎏を超えており、筋骨隆々。

 硬い茶色の短髪で、顔の半分が同色の髭。

 豪放磊落ごうほうらいらくな性格で大の酒好きでもある。

 ここでは念話で話をする必要がない。

 肉声での会話である。

 

「いよ~っ、ダン、スオメタルちゃん、久しぶりだな! 元気か!」


「こんちわ! ああ、元気だよ」

「万全且つ完璧でございます!」


「おお、それは良かった! で、わざわざこのザガズまで来るとは、今日は何の用だ?」


 オルヴォに聞かれ、スオメタルは目くばせをした。

 ダンから先に伝えて貰いたいらしい。


「オルヴォ、実は俺、この子と、スオメタルと一緒に住むんだ」

「はいっ! スオメタルは大好きなマスターと一緒に住み、ゆくゆくは結婚するでございます!」


「おお、そうか……頑張れよ!」


 オルヴォは……『スオメタルの秘密』を知っていた。

 彼女の真の身体がこの世界のどこかに隠されている事も。


 もしもスオメタルの真の身体が発見された時、自分の命が尽きていたら、

 どうか力になってあげて欲しい。

 

 スオメタルには内緒で……

 ダンは頭を下げて頼み込み、オルヴォへ多額の現金を渡してあったのだ。


 そんな経緯を知っているから……

 ダンがスオメタルと結婚すると聞き、オルヴォはついまぶたの奥が熱くなる。


 先述したが、ドヴェルグ族は豪放磊落、酒好き、そして涙もろく情に厚いという。

 このオルヴォは典型的なドヴェルグなのである。


「そ、それで、ダンよ! 具体的な頼みを言ってみな! 俺が超特大サービスしてやらあ!」


「おお、それは助かる! じゃあオルヴォのお言葉に甘えよう」


「わははは! どんと来~い!」


「オルヴォ、実は褒美に貰った城がオンボロなんだ。リフォームを考えているんだ!」


「成る程! お安い御用だ。お前の転移魔法で俺と配下の職人全員、現場へ連れて行ってくれや!」


 現場へ……

 と気安く言うオルヴォの笑顔を見て、ダンは歯切れが悪くなる。


「え、ええっと、悪いが……場所は、ほぼ魔境なんだ」


「ほう! ほぼ魔境ねぇ」


「ああ、人間やドヴェルグを喰らう魔物が、うじゃうじゃわんさか居る」


 ダンは、はっきりと事実を告げた。

 現在住んでいる土地は危険な場所なのだと。


 しかしオルヴォの笑顔は全く変わらなかった。


「いやいや、ダン! 現場が危険でも、お前とスオメタルちゃんが守ってくれるんだろ? 格安で受けてやるぜ」


「りょ、了解! ありがとう! オルヴォ達を守るくらいお安い御用だ。あと、ついでに増築もやっておきたい。この店では《建売仕様》のいろいろな上物うわものを売りだしていたよな?」


 ダンの言う上物うわものとは、土地の上にある建物等を指す。

 オルヴォは笑顔で答える。


「おお、バンバン売ってるぞ!」


「それらをぜひ買いたい! 高品質のオーダー品じゃなく、既製品、いや展示用のサンプル品で良いんだ。まとめて買うから安くしてくれないか?」


「了解だ! お前は転移魔法や収納魔法を使えるから、本日速攻お持ち帰りだよな?」


「速攻お持ち帰りって……時と場合によっては、ちょっと誤解を招くコメントだと思うぞ」


「ははははは、考え過ぎだって! サンプル品の現物お持ち帰りは運送や解体、組み立て費用諸々が不要だ。その分、安くなるぜ! で、予算は?」


「ああ、ひっくるめて金貨3,000枚だ!」


 金貨3,000枚……

 普通に考えれば結構な金額だが、ドヴェルグの作る建物の価値を考えれば、

 充分とはいえない。

 

 しかしオルヴォは分厚い胸を「どん!」と叩いた。


「おっと! 魔王を倒した勇者なのに、景気が悪いのか? 思ったより持ち合わせが少ないじゃね~か! でも任せろ、ダン! 悪いようにはしない!」


「いやあ、低予算で申しわけない! 助かる! 欲しいのは厨房設備付きの店舗、大型の宿舎、同じく倉庫、家畜小屋、中型の馬用厩舎、宿泊室&応接室付きの会議棟、そして牢獄だ」 


「おお、そんなに要るのか? それと店舗って! お前、何か売るのか?」


「まあ、……いろいろ将来を考えて」


 ダンはそう言うと、ちらとスオメタルを見た。

 彼女は無言で優しく微笑んでいる。


 大丈夫……突っ込みはない。

 ダンはホッとした。

 実は、いずれジャンク屋を再開しようと考えていたのである。

 厨房設備付きにしたのはその方が使い勝手が良いと考えたからだ。


 一方、オルヴォはうんうんと頷いている。


「ふむ! 会議棟とか、牢獄とか、えらく渋いのも入れてるじゃねぇか! よっし、トータルぴったし金貨3,000枚でオッケーだ。リフォームは高品質の材料を使う』


「あ、ありがとう!」


「それと増築だがよ。大は少を兼ねるっていうから上物を全部大型にしといてやる! 但し、全部展示用のサンプル品だぞ!」


「大丈夫! 俺も自分で手直しする! 本当に助かるよ! ありがとう!!」


「良いって事よ! 我等ドヴェルグはお前に一族存亡の大ピンチを救って貰った! その恩は一生忘れねぇ! そうだ! 例のみやげもたっぷり用意してある! 来たら渡そうと思ってた! 持ってってくれや! がっははははは!」 


 豪快に笑いながら……

 見えないように涙をぬぐったオルヴォは、

 口の中で「頑張れよ」と呟いていたのである。

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