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38 王子来訪とニコラス

ニコラス視点の回です。

 ホランド国から大勢の護衛を引き連れて王子がやって来た。僕たちは我が家の玄関の外で出迎えた。


「やあ、ニコラス、久しぶりだな。ずいぶん背が伸びたじゃないか」

「エドワードじゃないか……フィリップが来るんじゃなかったのか……」


 僕の言葉を聞いてエドワードがニヤリと笑う。


「エドワード様、だろ。どうしても僕が来たかったから、出発直前に弟に代わってもらったんだ」

「まだそんなことやってるのか。相変わらずの駄目兄貴だな」

「生意気言うな、僕より年下のくせに」


 僕たちは顔と顔を近づけて小声でやりあってる。僕がホランド語でエドワードはロマーン語だ。互いに外国語。これは互いの意地だ。僕はほんとにこいつが苦手だよ。


「はい、その辺で仲良し同士の挨拶は終わりにしてくださいな。エドワード殿下はお疲れでしょうから、まずはお茶にいたしましょう」


 カタリナ伯母さんが間に入ってお茶になった。エドワードの後ろ姿を見ていたらフローラが僕に近づいて「ニコ兄様、エドワード様って素敵な方ね」と耳打ちした。


 かー! 見る目ないんだなフローラ。あいつは性格悪いよ? まあ、すらっとしてるし銀色の髪に濃い青い目だから王子様らしいっていうか見目麗しいってやつだけど、中身と見た目を足して二で割れば平均以下だぞ? とは思ったが口には出さなかった。フローラに嫌われるから。



 我が家の客間でお茶してる間も、フローラはニコニコしながらエドワードを見てる。まったく、男は見た目じゃないだろうが。中身だろうが。歳を取ったらあいつのキラキラは消えるんだぞ?


「フローラ嬢、すっかり美しいレディになりましたね」


 エドワードが嘘くさい笑顔でフローラに話しかけたら、フローラのやつはピョンと飛び上がったかと思うほど驚いてる。


「え?あっ、私、ホランド王国へ行った時は小さかったので、殿下のことは何も覚えていないんです。申し訳ありません」

「そうだろうな。ヨチヨチ歩いていて僕に抱きついて来て可愛かったよ」

「だっ、抱きついたんですかっ?」


 フローラが真っ赤になった。


「うん。僕と廊下で鉢合わせしたら、両手を差し出して走って来て、僕に抱きついたんだよ。僕を見上げて笑ってくれて。天使みたいだった」

「まあ!恥ずかしいです」

「オエェ」

「ニコラス!」


 しまった。思わず声に出してしまった。お母様とお父様とカタリナ伯母さんが同時に三方向から睨んでるよ。失敗失敗。って、エドワードが「ざまあみろ」みたいな顔で僕を見てる。ちっ!


 そのあとはエドワードが公開庭園と療養所と運動用水槽を見たいというから、ゾロゾロとみんなで回って歩いた。

 やはりエドワードもツリーハウスが気に入ったようで、フローラと二人で登ってキャッキャやってた。そこでフローラが……あー、これ、何回思い出しても笑えるんだけど。


 エドワードと一緒の時のフローラは(お前誰だよ)って思うほど上品ぶって可愛子ぶっていたのに、ツリーハウスから出た時に、うっかりいつもの癖で仰向けの大の字で落下防止用の網に飛び降りちゃったんだ。


 フローラはツリーハウスで数え切れないほど遊んでいるから、最近では降りる時に梯子を使わずにいつも網の上に両手両足を広げてバフッて飛び降りてるんだよね。つい出ちゃうから習慣て怖いよね。

登る時は上品ぶって登ったのにね。


「えっ!」って驚くエドワードの目の前で網の上に飛び降りちゃって、仰向けの状態で(しまった!)って顔してるフローラが面白くて面白くて、僕、涙が出るまで笑っちゃったよ。


 カタリナ伯母さんはこめかみに指を当てて目をつぶってるし、ホランドの騎士さんたちも口をあんぐり開けてた。ツリーハウスは結構な高さだからね。レディは普通、飛び降りないよ。くっくっく。


 そのあとはジークやカール、僕が施設の説明をした。

 エドワードは療養所の目指すものや回復訓練用の水槽について、ずいぶん熱心に聞いていたな。


 質問もなかなかいいところに目をつけていた。なんだ、思ったより馬鹿じゃないんだな。ホランド王国のためには良かったな。そんなことを思ってたらエドワードが僕のところに近づいて来た。


「ボイラーはうちの王宮で大活躍している。君の母上はやはり天才なのだな」

「あれは最初の構想は母だけど、効率化を図ったのは僕だから」

「何事も最初の発想が貴重なのだ。愚か者め」


 それ、お前にだけは言われたくない。

 まあ、そんなこんながあって、夕食時はハロルド兄さんがエドワードの相手をしてた。エドワードはハロルド兄さんに対しては丁重で敬意を持っているようだった。


 夕食後、大人たちはお酒を飲みながら会話してたけど、子供部門はみんなで果実水を飲みながらおしゃべりをした。


 フローラは網に飛び込んでしまって吹っ切れたらしくて、可愛いふりはやめて普通になった。そしてソファーの下に潜るのが大好きとか、乗馬と木登りは大人には負けないとか喋ってた。それは素を出しすぎだろ。


 エドワードはそんなフローラの話をニコニコして根気強く聞いてたよ。ハロルド兄さんとは王になるための教育の話で盛り上がってたな。ホランドとロマーンでは王になるための教育で時間をかけるところが微妙に違うらしい。ホランドは工業国だからかな?


 最初は嫌々もてなしてたけど、お互いあれから七年も経ってるから、まあ、それなりに仲良く過ごせたよ。

 

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コミック『超!!! 天才発明令嬢のパワフル領地改革1・2・3・4・5巻』
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