第九話 手紙(1)
俺は朝まで街を彷徨った…疲れ果て、自宅に戻ると何通かの手紙を見つけた…
その手紙にはあの子の想いが…
「俊一君、ごめんね…
違うよね…「君」って呼んだ方が良いのかなあ(笑)
電話も繋がらないし、会って話す事も出来ないから、手紙を書く事にしました。
君と会えなくなってからどれぐらいの時間が過ぎたかなぁ…私は最近、君と初めて出会った頃の事を思い出しています 。
あの頃の私は片思いしてたよね(笑)
どうしようもない恋をしてた…私の想いが届かなくて、ただの都合の良い女になってるのも解ってたよ…
でも何も出来なかったんだよ、私には自分を変える勇気もなかったんだ…
あの日…私はいつもの駅でいつものように大好きな人を待ってたんだ。
…来ないのは解ってたけど待ってる事しか出来なかったから…
いつもの最終電車を見送った後、私は泣いてた…今日も来てくれなかった、私なんて死ねば良いんだって思ってた。
近くの公衆電話でポケベルを打ったけど、やっぱり返事も来ない…
私は辛くて、悲しくて、悔しくて、ずっと泣いてたんだ…
そんな時に君が声を掛けてくれたんだよ、第一印象はね…
破れたTシャツに安全ピン…真っ赤なパンツを履いた金髪の危ない感じの人(笑)
たしか…早く家に帰りなさい!!って言ってたよね(笑)私は子供じゃないんだからねって考えてたら、何だか笑えて来た。
久しぶりに笑った…だからね私、この人に愚痴でも言ってやろうって思ったの…君は何も言わずに、私の話を聞いてくれたね、何だか不思議な感じだった…初めて会った人なのに私の全てを話せる気がしたんだよ。
気が付けばすっかり朝になっていて君はドラマの主人公みたいに何も言わずに帰ろうとした…
だから聞いたの、君の自宅の電話番号を…
私には電話をする勇気もなかったけど、一つだけ変わったの…
いつもの駅で、いつもの最終電車まで、来るはずもないあの人を待っていた毎日が…
今日も来てくれなかった…
でも涙は流れなくなったよ…
なぜなら君が来てくれそうだったから…