第七話
翌日から俺は孤独な作曲作業に取組んでいた…80年代のパンクばかり聞いていた俺だったけど、今は邦楽を勉強中だ。
デモテープも、かなりの数になった頃にあの子から電話がきた。
バンドのメンバーが二人見つかったらしい…
とりあえず明日、二人に会ってみる事にした。
翌日、あの子の部屋に呼ばれて二人を紹介された…一人は彼女の幼馴染みでフリーターの女の子、キーボードが出来るらしい…もう一人は彼女がバイト先で知り合った、ニルヴァーナを愛する男でベースが出来るらしい…そして俺がギター…後はドラムが見つかればバンド活動が出来るはずだった…
それから俺達はライブハウスに集まる事になっていたが、いつも来るのは俺とベースの真也の二人だけだった…
それでも俺は真也と二人で次々と曲を完成させていたし、真也も俺の親友になっていた。
真也は良い奴だった!
俺は自分の事を色々と話した…
前のバンドを辞めた理由も、他の男を夢中で追いかけてる女を好きになった事も、なによりこのバンドの意味を!
真也は何も言わずに話を聞いてくれてた。
ただバンドとして何も変わらない毎日で、あの子もライブハウスには一回も顔を出してない…バンド活動も相変わらずで…俺達は先に進めずにいた。
そんなある日、話があるからって真也が俺の家を訪ねて来た…
俺達だけで新しいバンドをやろうって言う誘いだった。
真也は親友だし、お互いに良き理解者だ…悩んだけど答えは決まってた。俺は真也に言った…
「そんな事出来ねぇよ!俺はあの子を裏切れないし、あの子が好きな音楽って言う場所まで俺が連れてくんだよ!」
しばらく真也は黙っていたが、最後に親友として同じバンドマンとして俺に向かって話し出した…「ムカつくかも知れないけど…最後まで黙って聞いてろよ!このバンドはダメだよ…ここまでだ!
お前の好きなあの子はライブハウスには来ないし…お前がどんなに想っても…頑張っても…きっと来ないよ…
…あの買ったギターも弾いてないだろうし、お前が渡したバンドスコアもデモテープも部屋で転がってるだけだよ!
あの子が好きになったのはお前じゃなくて、お前の才能だよ…ただの都合の良い男だな…
俺はお前とずっと一緒にバンドやっていたかったけど今日で終わりにしよう…
きっとあの子は今日も笑顔で片思いしてるよ…」
俺は何も言えなかった…
「俊一!色々言って悪かったな!お前の片思いが終わったら、また バンドやろうぜ!」
涙が止まらなかった…
俺はいったいどうすれば良いのだろう!?
真也の言う通り、俺はただの都合の良い男なのかも知れない…
でもどうする事も出来ない、そんな事よりも恋愛感情が前に出てしまう…
涙が止まらない…
ただ涙が止まらない…
…俺は部屋からギターを持ち出した…
近くの公園までギターを引きずって歩いた…
その夜、俺は公園でギターを燃やした。