第六話
「バンドやろうぜ!」って言ってから一週間が過ぎた。
俺は何も出来ずにいたが、とりあえずあの子の為にスピッツのバンドスコアを買ってみた。
ブラウン管からは相変わらず好きになれない音楽が流れていたし、たしかオリコンの一位はドリカムのLoveLoveLoveだったと思う…
俺はスピッツのバンドスコアをなかなか渡せずにいた…切っ掛けもなかったし、会う口実も見つからなかったからだ。
その夜に俺はあの子の為に作曲した…パンクを愛し、アナーキスト気取りのこの俺が、あの子に似合いそうな曲を!
翌日、俺は彼女の家まで行って、迷いに迷って…結局、郵便ポストにスピッツのバンドスコアと自作のデモテープを投げ入れてそのまま家に帰った。
連絡もなかったが、自宅の郵便ポストには彼女からの贈り物として小さな木で出来た、しおりが入っていた。
本なんてあまり読んだ事がなかったけど、とりあえず三島由紀生の小説を買ってみた。
バンドを辞めてからはやる事もなく、もちろんバイトもしていない…たまに小説を読み、気が向けば作曲するそんな毎日だった…
俺はギターを担いであの子に会いに行った。
意外にも「なんで来てくれなかったの!?」って言われたよ、恋愛なんてこんなもんだよなぁ…
初めて聞いた彼女のギターはすげぇヘタクソだった(笑)
これじゃバンドにならねぇよ(笑)
俺は彼女からギターを取り上げて言った!
「歌ってみなよ…」
「とりあえずメンバー探しだなぁ…俺の周りにはパンク馬鹿しかいないからな」
「それとあのデモテープの曲には詞がないから頑張って書いてみてよ」
あの子は笑ってた…すげぇ嬉しそうに笑ってた…