第五話
数日後、あの子から電話がきた…
「ギター買ったんだ!こん度教えてね!」
「そうなんだ…じゃ今度ギター持って遊びに行くわ…」
俺はそれだけ言って電話を切った…この間の別れ際は微妙だったし、なんだか今日は照れくさかった。
その後俺はバンドの練習に出かけた、この日は普段通ってるライブハウスではなく、隣り町のライブハウスに行く事になっていた。
いつもの駅から隣り町のライブハウスまで行き、「なんか揉め事でもあればおもしろいなぁ…」
なんて考えてたけど、退屈な毎日に刺激があるような出来事もなく…平凡に練習は終わった。
俺はあの時間の最終電車に乗った。
バンド仲間とくだらない話をしていたが、俺達のすぐ後ろの連中の馬鹿騒ぎにイライラしていた、見た感じは俺達と同じバンドマン!ただ違ってたのは女の話ばかりで遊んでる奴等だなって思った。
先輩からは
「あんな連中ほっとけよ!」って言われたけど、うるさ過ぎて嫌でもあいつらの会話が耳に入って来やがる。
しばらくしてから俺は気付いた、たまに出てくる「亜矢」って言う名前に…
色々と思い出してみた…
あの子の好きな奴は…
バンドマンで女好きで
だらしなくてどうしようもない奴だった…
あの子が「近付きたいよ」って言ってた男はこんなくだらねぇ奴なのか…
ぶん殴って説教でもしてやろうかって思ったけど、俺は何も出来なかった…こんな男でもあの子が愛してる男だ、俺に何が出来る訳でもない。
イライラしたまま、いつもの駅でおりた。
…俺にとってこの最終電車はなんなんだ!?毎回、毎回、問題ばかり運んで来やがって!
…俺はただ壊したくなった!今の自分の現実も、今のあの子の現実も!
だから俺は先輩に言った
「今日でバンド辞めますよ」って!
お陰様で死ぬ程、殴られたよ(笑)
血だらけの体を引きずって、近くの公衆電話に向かった…
ポケットから汚れた10円玉を探し出してあの子に電話した…
「バンドやろうぜ!」
それだけ言って電話を切った。
これで少しはあの子の明日は変わるかな…