第二話
その後は就職もしない、バイトもしない、無職生活の始まりだ。
何にもない毎日だったけど、唯一やってる事はバンドのメンバー探しとたまに彼女と会う事位だ。
俺の彼女は隣り町に住んでいた、朝方に眠り、夕方にやっと起き…シド ヴィシャスになりきっては中央線に乗り、彼女に会いに行き、いつもの最終電車で帰って来ていた。
彼女と会えない日はひたすらメンバー探しだ。雑誌に投稿しライブハウスをまわってはビラを張る…そんな毎日だった。
いつものライブハウスに顔を出すと、中学の時の先輩に会った、しかも俺の記憶じゃすげぇヤンキーだった先輩!
嫌な予感はしたけど案の定、無理矢理メンバー入り決定だよ…
でもこれが意外と良かった、このバンドはパンクだった(笑)
バンドも客もアナーキーだった!あっちこっちで喧嘩はしてるし、まるでピストルズの記録映画だよ。
もちろん俺の彼女も毎回ライブは観に来てたけど最後はいつも泣いてた…
「俊一の演りたい音楽ってこれなの!?」
「俊一の追いかけてる夢がこれなの!?」
「本当はなんでも良いんじゃないの!?現実から逃げたいだけじゃないの!?」
…見透かされてるようでムカついたし、喧嘩ばっかだった。
家に帰っては一人で泣いてた、悔しかったし、図星だったから…
それでも俺達は別れたりはしなかった、お互いに初めての彼氏、初めての彼女だったからだ。
俺は無職のバンドマンであいつは美容師の卵…当然、負い目はあった。
この頃から
「就職でもしてみたら?」なんて言われては最終電車に揺られては家に向かった。