第十四話
俺はどうする事も出来ない毎日を送っていた。
俺達はもう二度と逢えないのだろうか…
今更って感じもしたが久し振りに真也を訪ねて見た…
…真也の部屋からは何も答えはない…
また明日にでも来てみようと思い、階段を降りようとした…
その時、隣りの部屋のドアが開いた。
「知り合いの方!?」
不思議に思ったが返事をした。
「はい…友達なんですよ…」
「理由は解らないけど、お隣りの方、実家に帰ってるみたいよ」
「そうなんですか…ありがとうございます…」
軽く頭を下げてその場を立ち去った。
実家に帰った!?…
どうしたんだろう…
とりあえず真也の実家に行ってみる事にした。
真也の母親は暖かく俺を部屋に案内してくれた。
「俊一君、ごめんなさいね…こんな事になってしまって…」
「…いえ…大丈夫ですよ…!?」
俺は意味が解らなかった…
「俊一君、ゆっくりしていてってね」
俺は真也の部屋のドアを開けた。
「真也…色々、悪かったな…」
「俊一…」
俺は言葉を失った…
「真也!お前なんだよ!その怪我は!」
真也の右手にはギブス…顔は腫れ上がり、傷だらけの姿がそこにはあった。
「俊一…悪いなぁ…隣り街で喧嘩して負けちゃったよ(笑)そんな事より怪我が直ったらまたバンドやろうぜ!お前の片思いも終わったんだからさ(笑)」
俺は部屋を出た。
「俊一! おい! 何処行くんだよ!」
俺には解っていた、真也が誰と喧嘩したかを!
あいつはきっと何も言わないだろう…
俺と違って喧嘩の弱いあいつが…負けるとわかってる勝負をする筈がない!
帰り際に真也の母親に言われた。
「病院の先生に言われたの…あの子の右手は元には戻らないかも知れないって…それでも頑張ってリハビリをすれば、希望は有りますよって…」
俺には誰も守れないんだって思い知らされた…
「俊一君!馬鹿な事、考えないでよ!」
あの男だ!
俺の大切な物をすべて壊しやがった!
あいつはあの最終電車で帰って来るだろう…
駅に向って歩きだしながら、色々と思いだしていた…あの子との出会い、真也との出会い…
あの二人が何も言わずに俺の為にしてくれた事…俺は助けられてばかりだ…
ちょうど改札口からはあの男達が馬鹿騒ぎをしながら出て来る所だった…
「おい!そこのロン毛の馬鹿バンドマン!」
次の瞬間、頭は真っ白だった…俺の目の前には、血だらけの男が三人転がっていた…
俺はこの馬鹿達に叫んだ!
「おい!ロン毛野郎!二度と真也にも亜矢にも近くな!次は本気で殺しに来るぞ!聞いてんのかよ!?わかったかぁ!?」
「勘弁して下さい…二度と二人には近付きません…」
こんな事やっても、何も変わらないし…意味もない…
俺はやっぱりただのパンク馬鹿だ…