第十話 手紙(2)
君と出会ってからは毎日悩んでたよ…電話しても良いのかなって…
…だって私には好きな人がいたし、自分の気持ちも良く解らなくなってたんだ。
だから私、電話する事にしたんだ…自分の気持ちを確かめる為に。君は何か素っ気無い感じの返事を繰り返していたけど、会う約束をしてくれたよね…
待ち合わせ場所はあの駅にした…
あの駅ではいつも泣いてるだけで、良い思い出なんて一つもなかった。
だからかなぁ…逆にあの駅にしたかったの、あの駅で笑ってみたかったんだ(笑)
くだらない話をしながら城跡を見学したり、近くの公園で時間を潰したりしたね…なんか中学生みたいだったなぁ(笑)
でもね私はずっと楽しかった…すごく楽しかったよ…私の新しい恋が始まったって思った。
最後まで何て呼んだら良いのか解らなくて、困っていたのを思い出すなぁ。
バンドの練習の時間が近付いて来た君を駅まで見送った。
別れ際に…
バンドって楽しい?って聞いてみた…
いっぱいわがまま言って困らせたよね…
どうしてあんな事言っちゃったのかなぁ…
きっと、またこの駅で一人になってしまう…そんな事、考えてたからだね。
君がバンドやろうって言ってくれたから、ギターを弾き始めてみたけど、ギターって難しいよね、全然弾けなかった(笑)郵便ポストには私の好きなスピッツのバンドスコアと君の作ったデモテープが入っていた…
うれしかったよ…でも私ってわがままだから、どうして会いに来てくれなかったんだろうって思ってた。
会いたくて…逢いたくて…毎日、君の事ばかり考えてた。それでも君には会いに行かなかった…私は辛い恋しか知らないから怖かったの…君の自宅の郵便ポストにプレゼントを入れて帰る…それだけしか出来なかった。