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森の中の救出劇4

リリーナ・レギンは戦いを見ていた。



炎鳥に追われ、もうだめだと思った。

青年のあの速さには驚愕したが、賊の作った土壁を壊せなかった。

攻め手に欠け、そのうちに体力がなくなって倒されてしまうと思った。



しかし、轟音が響き、衝撃波が吹き抜けたかと思ったら、賊が死んでいた。



(助かったの……?)



信じられない目の前の光景に、しばし頭が動かなくなる。

その間も、リリーナは青年の姿から目が離せなくなっていた。



その隙を狙い、アイリスを襲っていた賊がリリーナの背後から近づき、リリーナを拘束した。



「おい、ガキ!動けば王女を殺すぞ!!」



リリーナは下唇を噛んだ。



(油断した……せっかくの好機だったのに……)



諦めていた心、怯えていた恐怖、そこに生まれた生き残るチャンスがこれでなくなったと、そう思った。


しかし、それは誤りだった。

目の前の青年はなんでもないように言う。



「あなたは王女様でしたか。今お助けします。」



なにを?と思う間も無く、目の前に青年が現れ、背後の男を倒していた。



青年との距離が近い。

青年の息づかいを感じ、リリーナは恥ずかしさを感じる。



「あっ……」



青年はリリーナをまっすぐ見つめて言う。



「これで全員倒しましたかね。では王女様、改めまして。」



見つめられたことに戸惑い、リリーナは頬を上気させて息を詰める。



「あなたの名前を、教えて下さい。」



リリーナは気が抜けた。

緊張が解け、くすりと笑って答える。



「リリーナ・レギンと申します。助けてくださり、ありがとうございます。大和 光様。」



リリーナは思い出していた。

貴族の子女が話していた騎士物語を。

密かに憧れていた騎士と姫との恋愛を。

騎士はどこからともなくやってきて、姫をピンチから救うのだ。


目の前の青年は騎士とはかけはなれた格好で、状況に合わないとぼけたことを言っているが、なぜか彼が、姫を救いにきた騎士に見えた。



「きれいなお名前ですね……。」



目の前の青年はそう言ったきり静かになった。

リリーナは潤んだ瞳で話さなくなった青年を見て、まつげが長いな、なんて思った。



やがて青年の顔がゆっくりとリリーナに近付いてきた。

リリーナは戸惑いつつ、目を閉じた。



――ぽふっ



これが物語の騎士と姫の口づけか、と思い目を閉じていたが、想定外の衝撃が胸元に走った。



衝撃の走ったところを見ると、裸の胸元に、光が顔をうずめていた。



「……え?」



リリーナは思考が停止した。

今、どういう状況なのかわからなかった。


彼は命の恩人。

キスくらいならば構わないかなと思っていたが、これは流石に想定外だ。


しかしやはり命の恩人。

無下に扱うことはできない。


そうしてしばらくどうするべきかと頭を悩ませていたが、いつまでたっても光が動かないことに気づいた。



大和 光は気を失っていた。

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