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森の中の逃避行

リリーナ・レギンは森の中を逃げていた。



王都を離れ、数日。

視察の旅のため街道を進んでいたはずが、野盗に襲われ森に追いやられた。


いつの間にか護衛とも分断され、森の奥へ奥へと逃げていた。

御者のアイリスが必死に声をかけてくれる。



「リリーナ様、大丈夫です!賊は少しずつ減っています!!あと少しで逃げ切れます!」



本当に逃げ切れるだろうか。

追ってきている賊が減っているのは護衛が体を張ってくれたからだ。

その護衛は今一人もいない。



(この襲撃は偶然じゃない……多くの護衛に囲まれた馬車を襲うのは簡単じゃない。護衛との分断も手際が鮮やかだった。計画的なものだ。)



不安にさいなまれながら、頭は冷静だった。



(逃がさないように周到に準備しているはず。森には追い込まれた。このまま何事もないことはないでしょう。)



ここまでた。

心はすでに諦めの念を抱いていた。



(王家に産まれて17年。短い人生だったな……)



思い出すのは、貴族の子女とのお茶会でのお話。

ピンチのときに助けにきてくれる、騎士の物語。


リリーナは王女だ。

恋愛はできない、そう思っていた。

貴族の子女が楽しそうに話す姿に、興味がない素振りで返した。

しかし、心は強くひかれていた。


いつか私も、素敵な騎士と出会い助けられ、添い遂げられたらと年相応の女の子のような憧れを胸に秘めていた。



(叶わない願いね……私は王女。……でも、恋とかしてみたかったかな。)



「うぉっ!」



その時、声が聞こえた。

続いて、アイリスが叫ぶ。



「伏せてください!」



――ガタンッ



強い衝撃とともに馬車が倒れた。

リリーナは馬車の壁に身体を打ち付ける。


馬車のドアが開き、リリーナは外に引きずり出された。

下卑た男の顔が目にはいる。



「こりゃぁ上玉だ!さすが姫さんだぜ!」



男は欲情した目付きでリリーナを見る。



「無礼者!この手を離しなさいっ!」



「うるせぇなっと!」



――ガツンッ



男はリリーナを殴り付ける。

リリーナは痛みで身がすくんだ。



「兄ぃっ!こっちの御者も上玉ですぜっ!」



アイリスを見ると、別の男に髪をつかまれていた。

どうやら気を失っているようだ。



「お姫様よ、気の毒だが、あんたはこれから慰みものになったうえで死体になる。せいぜい抵抗しないで楽しんだ方が得ってもんだぜ。」



リリーナは思考が定まらなかった。

とにかく怖かった。

死ぬのもそうだが、こんなところでこんな男にされることを想像すると、胸が潰されそうになった。



(……こんなっ!こんな最後だなんて……)



男の手でドレスの胸元が破りとられる。



(いやだ……怖い……帰りたい……)



「ひゅーっ!さぁーお楽しみだぁー!」



(アイリス……お父様……誰か……)



男の手がリリーナの胸にかかる。

リリーナは目を閉じた。



(助けて!!)



――ゴッ



鈍い音に目を開けたリリーナの目の前に、男の姿はなかった。

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