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森の中の邂逅
大和 光は静かに音を聞いていた。
最初はなんの音かわからなかった。
ただこっちに近づいていることはわかった。
しばらくして、音は大きくなってきた。
なにかが走ってきていると思った。
そのうちに人の声らしきものも聞こえ始めたとき、光は繁みから飛び出した。
遠くにたくさんの灯りが見える。
(人だ!)
光は助かったと思った。
この訳のわからない状況が終わると思った。
「おーい!助けてくださーい!」
光は叫んだ。
灯りはどんどん近づいてくる。
馬車が見えた。
「……馬車!?」
馬車の後ろに馬が見えた。
「……馬!?」
馬車はけっこうなスピードで近づいてくる。
御者台に人が見えた。
視線があった気がした。
「すみませーん!」
光は手を振りながら呼び掛けた。
しかし馬車はスピードを緩める気配がない。
そしてそのまま、馬車は光につっこんできた。
「うぉっ!」
光は馬車を避けて繁みにダイブした。
馬車はそのまま走りすぎ、続いて馬が走り抜けていった。
「……いっつ……待ってください」
起き上がり、馬車が向かった方向を見たとき、馬車が横転するのが見えた。