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森の中2

大和 光は森の中を歩いていた。



空腹に、自然と独り言が多くなる。



「腹減った……なにか果物とかないかなー……ないなー……」



歩き始めてからそう時間はたっていない。



「果物とかないかなー。ってないかー……いやどこかにあるだろー……あってください……」



そうして歩くこと数分、目の前の茂みに小さな赤い実を見つけた。



「これ、食べられるかな……」



光は実をつまみ、一つ口に運ぶ。



「酸っぱ!」



あまりの酸っぱさに、光は食べるのを諦める。



(こりゃあダメだな……すっぱすぎる。というか、適当に歩いてるけど案内とかなにもないな。ほんとにここどこだろう。ていうかなんでここにいるんだろう。こんな森、近所にないぞ。おれ、誘拐でもされたのか……先生、探してくれてるかな……今日の日替わりランチ、とんこつラーメン食いたかったな……夕飯、なんだっけな……)



空っぽのお腹と、まとまらない思考を抱えて、光は森を歩き続けた。



そうしてしばらく歩き続けるが、まわりの景色は一向に変わらない。

日も傾き、だんだん薄暗くなってきた。

光は焦りと不安を感じていた。



(やばい……なにもない……腹減った……だんだん暗くなったきたし、そろそろ本気でやばいんじゃないか……おれ、迷ってるよな……出口どこだよ……携帯も繋がんねぇし、やべぇよな……この森、熊とかでるのかな……そういやぁ猪なんかも結構危ないんだよな……)



――がさっ



「……っ!」



突然の音に驚く光。

音のした繁みをしばらく見つめるが、続く反応はない。



「……勘弁してくれよ。」



光は理解不能な現状と、どこまでも続くような森に精神を削られつつあった。

しかし、立ち止まっていてもなにもかわらない現実を前に、ただ歩き続けるしかなかった。




光は歩いた。

あの木の影からなにかが出てくるかもしれない。


光は歩いた。

この道はさっきも歩かなかったか。


光は歩いた。

もう帰れないのかもしれない。




もうどれ程歩いたか、あたりはすっかり暗くなっていた。

まだ出口は見えない。


光はいつしか繁みの中に座り込んでいた。



(……)



光は思考停止していた。

空腹のまま、意味もわからず歩き続け、恐怖を映し出した森に疲れきっていた。



遠くから音が聞こえてきたのはそんなときだった。

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