第2話
朝、携帯に設定していたアラームの音で目が覚める。
まだ眠い目を擦りながら布団から出て洗面所で顔を洗う。
夢を見ていた気がするけど、なんだっけ、思い出せないな。
何か食べようと、制服に着替えて台所に行く。
机の上にはヨレヨレの千円札と小銭が少し。その横には『お昼』と走り書きのメモがあった。
お母さん、もう行ったのか、ともう慣れてしまった寂しさに溜息を吐く。
「……いってきます」
返事のないのを分かっていながら呟いて、玄関を出る。
「あ、おはよ~悠那ちゃん」
同じ団地の友達に声を掛けられる。
今日から高校2年生、始業式だ。
家から学校までは徒歩10分かからないくらい、凄く近い。
始業のチャイムの少し前に教室に入る。
今日で一年のクラスとはサヨナラで、二年からはまた別のクラスになる。
ホームルームが始まって、担任の先生が一人ずつクラスを発表する。
「悠那、…水元悠那、5組」
「はい」
5組かぁ、誰が居たっけ。と他の皆のクラスに耳を傾ける。
「私3組だった~!」
「4組じゃん~、最悪」
それぞれクラス振りに不満があるようだけれど、知っている人に同じクラスの人が居ないような気がしてきた。
「担任は…」
次は担任の発表。クラスメイトよりか、担任の先生が誰かという事の方が気になる。
「5組、坂崎先生。…生物の先生だな」
誰だろう…と、窓の外を見ながら、知っている先生を思い浮かべていた。
すると、体育館の渡り廊下に見覚えのない白衣の先生を見かけた。
誰だろう…、あの先生、新しい保健の先生かな。
その先生は、白衣の胸ポケットから煙草の箱を取り出して、ライターで火をつけて吸い始めた。
いけないんだ。学校で煙草吸っちゃいけないんだ。
ぼーっとその先生を見ていると、先生はどこからかの視線を探すようにあたりを見回し始めた。
おもしろいわけでもなく、無意識に目で追っていた。
すると、その先生は此方に気付いたのか、顔を上げる。
目が合うと、先生は驚いた顔をして煙草を捨てて足で踏んだ。
「……ふふっ」
「何見てるの?悠那ちゃん―――」
「なんでもないの、もう移動?いこっか」
次に渡り廊下を見たときには、その先生は居なかった。
そのことを私は特に気に留めず、体育館へと向かうのだった。