19/19
0 月めぐり
一番の宝だと言った、その名。
――― 随分長い間、娘は月に祈ってきた。
何度も、何度も……。
「いつかまた、このひとが私の名を呼んでくれるように」
「いつかまた、このひとの名を私が呼べますように」
幾度も重ねられた、月のめぐり。
その先に叶えられた願い。
□ □ □ □ □
「……でも、あの子と私を間違えたのは、やっぱり赦しがたいわね」
再び共にある夜。
円い月明かりの下、ふたり指を絡め寄り添う中で、彼女が零した。
「うぅ。だったら、どうすれば赦して貰えます? 」
「――― そうね…… 」
少しだけ間を置いて考えた彼女は、隣に横たわった彼の胸元に半身をのせ、見上げるように顔を向けてきた。
そして、月の灯りを含んだ森色の瞳をとろりと細め、甘やかに乞うのだ。
「…… あなたの口から、今のあなたの名前を聞かせて? 」
――― 再び、新しい月が廻り始める。




