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0 月めぐり

 一番の宝だと言った、その名。


 ――― 随分長い間、娘は月に祈ってきた。

 何度も、何度も……。



「いつかまた、このひとが私の名を呼んでくれるように」


「いつかまた、このひとの名を私が呼べますように」



 幾度も重ねられた、月のめぐり。


 その先に叶えられた願い。





□ □ □ □ □



「……でも、あの子と私を間違えたのは、やっぱり赦しがたいわね」


 再び共にある夜。

 円い月明かりの下、ふたり指を絡め寄り添う中で、彼女が零した。


「うぅ。だったら、どうすれば赦して貰えます? 」

「――― そうね…… 」


 少しだけ間を置いて考えた彼女は、隣に横たわった彼の胸元に半身をのせ、見上げるように顔を向けてきた。

そして、月の灯りを含んだ森色の瞳をとろりと細め、甘やかに乞うのだ。




「…… あなたの口から、今のあなたの名前を聞かせて? 」






 ――― 再び、新しい月が廻り始める。


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