セリーと食事に行くそうです
その後、報酬を受け取り、セリーのギルドカードを発行してもらった。
「セリー、よかったね、ギルドカード発行してもらえて。」
「はい、ありがとうございました、ご主人様。」
「ねぇ、セリー、私のことご主人様って呼ぶのやめてくれない?」
「え、どうしてですか?」
セリーは少し悲しそうな顔をする。
なんか申し訳ない気持ちになってきた。
「いや、そういう意味じゃないからそんな顔しないで。
ただ、なんか距離を感じるから名前で呼んでほしいっていうだけだから。」
僕がそう言うとホッとした表情になった。
「わかりました、ではジュン様と呼ばせていただきます。」
嬉しそうな顔でそう言った。
「よし、セリー、そろそろご飯食べに行こうか。セリーもお腹空いたでしょ?」
嬉しそうにするかと思ったけど、むしろ表情が暗い。どうしたんだろう。
「どうしたの?」
「はい、あの、ジュン様の残したものでもいいので食べさせてもらえませんか?」
セリーが少し言いにくそうにそう言った。
「何言ってるの、セリーの好きなもの食べたらいいよ。」
この世界の奴隷は主人の残したものを食べるのか。でもそんなのは僕には関係ないからね。
「え、いいんですか?」
「当たり前だよ、さっきもずっと私のところにいるって言ってくれたんだし、食べないと戦えないしね。」
「はい、ありがとうございます…」
セリーの目から涙がこぼれた。まだ食べてもいないのに。
「ほら、セリー、こんなところで泣いたら目立つよ、好きなもの好きなだけ食べていいから泣き止んで?」
「うぅぅ〜」
セリーはさらに泣き出してしまった。
袖で拭っても、どんどん涙が溢れてくる。
「ちょっ!セリー、泣かないで。
わかった、私が悪かったから、ねっ?」
セリーは力強く首を横に振る。
「ジュン様は、何も悪くありません…。うぅ…。すいません、今までそこまで苦労はしなかったけど、奴隷の生活と言うものを先輩の奴隷から聞かされて覚悟はしていたので…。」
しばらくするとセリーは落ち着いた。
泣いているセリーをおんぶして、人目の少ない裏通りに運んだ。
「すいませんでした…」
目を赤くしたセリーが少し下を向きながらそう言った。
少し照れててかわいい。
「ううん、いいよ。それにしてもちょっと意外だったよ、セリーがそんな生活を覚悟していたなんて。」
冒険者ギルドではそんな覚悟をしているようには見えなかった。
「その先輩からよほどひどい主人じゃなければ、できるだけ主人との距離は縮めた方がいいと言われていたので。」
「どういうこと?」
「そうすれば、情が湧いてしまい、そこまでひどいことはされなかったり、最低限の食事はさせてもらえると聞きました。」
下を向きながらそう言ったセリーの声色は暗かった。
奴隷を買う人ってそんなにひどい人ばかりなのかな?
まぁ僕が買った以上、早いとこそんな常識は捨てさせないといけない。
「セリーも元気になったし、ご飯にしよう。」
「はい!」
今度こそ嬉しそうにセリーは返事した。
レイアさんには悪いが、今日は宿ではなく、外のお店で食べることにする。
今日はセリーが来た記念日だから、少し贅沢しようと思っている。
すれ違う冒険者に少し高めのオススメの料理店を聞いて、お店に到着した。
ちなみにここに来る前に服屋に寄っている。
セリーは「私の服は古着屋で十分です。」と言ったが、年頃の女の子だ、誰が着たかわからない服を着るのは嫌だろう。
別にお金に困ってはいないので、半ば無理やり着替えさせたのだ。
断ってはいたが、嫌ではなかったのだろう、途中からは嬉しそうに自分の服を眺めていた。
買った後の「ありがとうございます!」と言ってきた時の笑顔を見て、僕も嬉しくなった。
「ジュン様?どうしたんですか?」
セリーが僕の顔を覗き込んでくる。
「ううん、その服似合ってるなぁ、と思っただけだよ。」
僕がそう言うと
「そうですか?えへへ、ありがとうございます。大切にしますね。」
とだらしない笑顔で言った。かわいいなぁ。
やっぱり買ってよかった。
食事を食べ終わった僕達はお店から出た。
「セリー、美味しかった?」
「はい!私、あんなに美味しいご飯久しぶりに食べました!ありがとうございました!」
「そう、ならよかった。」
「私、本当にジュン様に買ってもらえてよかったです。頑張りますので、見捨てないでくださいね。」
「うん、わかってるよ、もしセリーが戦えなかったとしても、奴隷商館に戻したりしないから安心して。」
「はい!戦えるように頑張ります!」
セリーはやる気に満ち溢れた顔でそう言った。




