ランクが上がったそうです
混乱したセリーを僕とアレクさんで落ち着かせようとしている。
「私が見た中で一番強い冒険者のステータスの最高値は8000でしたよ?
もしかしてあの人って実は弱かったんでしょうか。いやでも、実際すごい強かったし…」
セリーはまだ混乱しているのかブツブツ独り言を言っている。
「いや、安心しろ。その冒険者はかなり優秀だ。普通の冒険者は最高値が7000くらいいけばいい方だ。
お前のご主人がどうかしてるんだよ。」
失礼な。確かにそうかもしれないけど、他にも言い方はなかったのか。
「ん?ちょっと待ってください、確か御主人様のスキルって…」
「確かジュンのステータスの半分だったな。」
「私も人外になってしまったわけですか…」
セリーが何かを諦めたような表情になっている。
そろそろ悲しくなってきた。
さっきからセリーを落ち着かせるために僕のことを化け物だの、異常だの言われて僕が落ち込みそうだ。
「いや、でもセリーの場合ジュンの奴隷でいる間だけだからまだ大丈夫だと思うぞ。」
「いえ、確かにこんな大変なことになってしまいましたが、私はご主人様の奴隷でいたいです。
まぁそんなこと奴隷の私が決めることではないですしね。」
「私もセリーを手放す気はないよ。もしセリーが私の奴隷が嫌だって言うなら考えるけど…」
さっきからダメージを受けている私の心は
「全然嫌じゃありませんよ。
だからそんな悲しそうな顔をしないでください。」
そう言ってセリーが慰めてくれる。
「お前達仲良いな。」
「そう?」「そうですか?」
セリーと声が重なった。
「あぁ、少なくとも俺の知る奴隷と主人の関係とは全然違うな。」
「そうなんだ。まぁ奴隷というよりは友達としてやっていきたいからね。」
「ご主人様はもう少し主人という自覚を持ってほしいですけどね。」
「え?どうして?」
まさかセリーにそんなことを言われると思わなかったから少し驚いた。
「私に優しくしてくれるのは嬉しいんですけど、本来の奴隷と主人の関係を忘れてしまいそうなので。」
そういうことか。
「セリーはずっと私の奴隷でいてくれるんでしょ?だったらそんなの忘れても何の問題もないよね?」
「それはそうですが…」
「じゃあそれでいいでしょ。」
「あー、お前ら、そういうのは後にしてくれ。
別に見ていて気分が悪いとかではないんだが、会話に俺の入り込める隙間がないと俺が寂しいだろうが。」
「アレクさんその見た目で寂しがり屋なの?」
「見た目は関係ないだろ!お前な、俺とセリーがお前に分からない会話をしていたらおもしろくはないだろう。」
確かに、僕もセリーとアレクさんが2人だけで話していたら寂しくなる。
「あー、ごめんね。」
「それで、どれくらいモンスターを狩ったんだ?」
「あ、そのこと忘れてた。」
「お前なぁ、何しに来たんだよ…」
アレクさんが呆れている。
僕はアイテムボックスから素材を取り出した。
「今日はこれくらいかな。」
「これだけあれば昨日のと合わせるとランクEに上がれるか。」
「え?ちょっと待ってください。これソロで1日で狩れる量じゃないですよね?
それに昨日のと合わせると?まさかとは思いますが、2日でランクが上がったなんて言いませんよね?」
セリーがまた混乱しだした。せっかく落ち着いてたのに。
「セリー、思い出せ、お前の主人のステータスを。」
アレクさんはセリーに哀れみの目を向けながらそう呟いた。
それだけでセリーは納得したかのように静かになった。
なんとなく僕は納得いかないが、セリーが落ち着いたならそれでいいか。
「じゃあしばらく待っていてくれ。」
そういっていつものようにアレクさんは部屋から出て行った。
「あの、ご主人様、さっきのアレクさんって、あのギルドマスターのアレクさんですよね?」
「どのギルドマスターかは知らないけどあのアレクさんはギルドマスターらしいよ。」
「ここに来たばかりの私がそれを聞いたらとても驚いたでしょうね。
なんかさっきのやりとりで色々感覚がマヒしている気がします…。」
「そう?ギルドマスターだろうが何だろうがアレクさんはアレクさんだよ。」
あの人がどれだけ偉くても敬語は使わないと思う。
「そう思うのは多分ご主人様だけですよ…。」
「おぅ、待たせたな。ってどうしたセリー、そんな疲れた顔して。」
アレクさんはしばらくしてお金が入った袋を手に持って帰ってきた。
「いえ、少しご主人様と意見の相違がありまして…」
「セリーがアレクさんに敬語を使えって言うんだよ、今更そんなの気持ち悪いから嫌だって言っても、なかなか引き下がってくれなくてね。」
「あぁ、俺はそんなことあまり気にしたことないぞ。
確かに思うところがないわけではないが、ジュンだしなぁ。」
「奴隷の私がご主人様に意見するのは少し心苦しいですが、ご主人様がこのまま敬語を使わずにどこかの偉い人の気に障ったりでもしたらと思うと…」
「誰にでも敬語を使わないわけじゃないからそれは大丈夫だよ。」
僕がそう言うと、セリーは少し迷った後に
「わかりました、でも本当に気を付けてくださいね。」
と、そう言った。
僕のことを心配してくれているのはわかるんだけどセリーは少し過保護なのかもしれない。
僕だって敬語を使わないといけない相手がいることくらいわかる。
ただ、その相手がアレクではないだけだ。
ふとアレクさんを見ると、セリーにも妥協されたことで、なんとも言えない表情になっていた。
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