ステータスが異常に上がっているらしいです
僕は辺りが暗くなる前に冒険者ギルドに到着した。
中に入るとやっぱりアレクさんが素材の買取をやっている。
「ジュン!帰ってきたか。
今日も買取はするだろ?こいつらの換金が終わるまでちょっと待て。」
しばらくして、他の冒険者の買取を終わらせたアレクさんは買取の仕事を他の職員に任せ、ギルド長室に僕を案内した。
「アレクさん、なんで買取だけなのにここに通してくれたの?」
「ん?なんでってそりゃ、お前さんがモンスターの魔石やら素材やらをあそこで出したら騒ぎになるだろ。」
どうやら気をつかってくれたしい。
目立ちたくない私としてはとても助かる。
「ありがとうね。」
「構わんさ、俺だってあんまり騒ぎは起こしたくないし、お前さんには期待しているからな、あんまり嫌な思いをさせたくないんだよ。」
そうなのか、あまり期待されても困るのだけど、好意は素直に受け取っておこう。
「で、どれくらい狩ってきたんだ?」
「今日は依頼を受けてるんだけど、その分の魔石とかってどうするの?」
「あぁ、討伐系のクエストだったら魔石は見せるだけでいいぞ、ギルド職員なら見ただけでいつ狩った魔石か分かる。」
「その魔石は買い取ってもらえるってこと?」
「そうだ。
素材の収集が依頼になることもあるが、その場合の報酬は素材込みの値段になるから討伐系の依頼の方が得ってことはない。
そうじゃないと誰も収集系の依頼を受けなくなるからな。」
なるほど、確かにその通りだ。
「でも素材とかって冒険者ギルドから買えないの?」
「普通の素材は買えるが、高価なものや、珍しいものは買い手が多いからな。なかなか手に入らないんだよ。
だから貴族なんかは余分に金を払ってでも珍しい素材とかを冒険者に依頼することがある。」
そっか、直接依頼すれば競争相手がいないから確実に手に入るってことか。
やっぱりどこの世界でも金持ちはずるいね。
「今日はオークとウルフは依頼の数しか狩ってないよ。
ゴブリンは見つけたら倒してたから多いけどね。」
そう言って僕は魔石とドロップ品をアイテムボックスから取り出した。
「あのステータスを見たからそれほど驚かないが、やっぱりすごい数だな…。
これだけあれば、Fランクまでは上がるだろう。
すぐに上がるとは言ったが、お前さんならDランクの依頼に出ているモンスターなんて余裕で倒せるだろうからDランクまで数日もかからないだろう。
他の冒険者が気の毒になるな。」
そんなこと言われてもある程度稼ぐことができる高ランクになりたいんだから仕方ない。
「とりあえず、依頼を達成したことを報告して、お前さんのランクを上げてくるから、悪いがちょっと待っててくれ。」
「わかった。」
そう言ってアレクさんは部屋を出ていこうとした。
「ちょっと待って、魔石は持っていかなくていいの?」
「俺はギルドマスターだそ?その俺がこの目で見たんだからいいんだよ。」
ドヤ顔でそう言った。
「おいおい、そんな目で見るなよ。
お前さんが思ってるよりギルドマスターって偉いんだぞ?」
おっと、ムカついたからジト目で見てしまったみたいだ。
「ごめんごめん、わかったから早く行ってきてよ。」
「わかってないだろ。そんな笑顔で見やがって…
もういい、行ってくる。」
しばらくしてからアレクさんは部屋に戻ってきた。
「これでランクがFになったはずだ。
あれだけモンスターを倒してレベルも上がっているだろうから確認してみろ。」
言われてギルドカードを取り出し魔力を流してみる。
名前 サイトウ ジュン
ランク F
種族 人族
年齢 16歳
ジョブ 剣士 魔道士 暗殺者
LV 20
STR 36695
DEX 30579
VIT 12231
INT 36695
AGI 24463
スキル
・風魔法
・水魔法
・治癒魔法
・異世界言語理解(隠匿)
・解析眼(隠匿)
・アイテムボックス(隠匿)
・神の加護(隠匿)
レベルは20に上がり、スキルに治癒魔法が追加されていた。
ちゃんとランクはFになっている。
「ついでに見せてもらってもいいか?」
「いいよ」
スキルは隠匿できているので、特に問題はない。
僕はアレクさんにステータスを見せた。
ステータスを見て固まったアレクさんの頬からは汗が流れた。
「おい、ジュン…どうしてステータスがこんなに上がっているんだ…?」
「え、レベルが上がったからじゃないの?」
何をそんなに驚いているんだろう。
前にステータスは見せたはずなんだけどな…。
「バカ言うな、11レベル上がっただけでここまで上がってたまるか。
俺達ギルド職員は冒険者のステータスを1回見たらそいつのステータスが何レベルでどれくらいになるかくらいはある程度ならすぐにわかる。
元々お前さんのステータスは今までに見たことがないくらいに高かったが、これはその倍くらいはあるぞ…」
「そうなの?でも普通に森でモンスター狩ってただけで、特別なことは何もしてないよ。」
実際思い当たることがない。
僕と他の冒険者との違いは隠匿してるスキルだけくらいだし。
「まぁこれだけ狩ってくるだけで普通ではないんだがな…。」
アレクさんも少しはショックから立ち直ったようだ。
僕の言葉に呆れたような顔をしている。
「もうステータスのことはいい。お前さんもわからないんじゃ、どうしようもないからな。」
なんでそんな顔をされなければいけないんだ。
何も悪いことはしてないのに。
「ステータスのことはもういいが、水魔法ってなんだよ。
お前さんは風魔法の使い手じゃなかったのか?」
「今日使えるようになったばかりだから前回のステータスは間違ってなかったよ。」
僕がそういうと、アレクさんは驚いた後に、何かを諦めたような表情になった。
「なに?私何かおかしなこと言ってるの?
風魔法が使えたんだから水魔法だって使えるでしょう?」
ちょっとだけイラついてしまう。
「おかしなことしか言ってねえよ、普通の冒険者は魔法が使えるだけでも充分珍しい。
二種類の魔法が使えるのなんてホントにごく一部だ。
それなのにお前は三種類だぞ?
しかも治癒魔法なんて魔法はギルドマスターの俺でも聞いたことがない。ホントに何者なんだよ…。」
最後の方は消えかかっていたから独り言だろう。
でもこの世界の冒険者は何種類も魔法を使えないのか、それは知らなかった。
でも治癒魔法ってなんだろう、そんなの使った覚えがない。
もしかすると、二種類の魔法を使えるようになったからかな。
「ジュン、さっきお前、風魔法が使えたんだから水魔法も使えるだろうって言ったよな?」
「言ったけど、どうしたの?」
「まさかとも思うが他の属性の魔法も使えるのか…?」
「まだ使ったことはないけど、多分使えると思うよ。」
そういうとアレクさんは絶句した。
いきなりブックマークが倍くらいになって驚きましたが、とても嬉しかったです。




