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一から始める異世界ギルド  作者: 山外大河
二章 ブラインド・ブラック
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04 術式考察

 それがら三時間程経過した。


 風呂を借りた後、俺は使われていない一室に来客用の布団を引いてもらい横になっていた。

 本来ならば女の子が使っている風呂に入った事によるちょっとした興奮があっても良いだろうが……やはり魔術に対するカルチャーショックが俺の脳内を埋め尽くしてそれ所ではなくなっていた。


 あの後アリスとの会話の中で、俺が立てた憶測は真実だった事が判明した。


 この世界の魔術は地球の魔術より一歩……いや、二歩程進んでいる。

 地球では成し得ない術式の自立化に成功している……完全なる上位互換。

 それが地球より科学技術が劣っているこの世界に存在する魔術だった。


 そしてその事実が俺に与える、忘れていたもう一つの疑問に対する真実。


「死んだ佐原の爺さんは……一体何者なんだ」


 あの時は切羽詰まっていて考えられなかったが……良く考えると佐原の言っていた事は無茶苦茶だった


 封印の様な扱いになっていた魔道書の封印が、爺さんが死んだ時に解かれた。

そもそもの所、佐原の爺さんが亡くなったから解かれたなんてのはおかしい筈なんだ。


 基本、何かを封印するなんて物騒な事があった場合、そこに用いられるには魔術ではなく科学だ。魔術で何かしようとしてもその人間が術を持続して発動させているか、もしくは誰かが定期的に引き継ぐという形で維持していかなければならない。

 前者はそもそも人間の体力敵に無理な話だ。丸一日持たせるだけでも相当な物。後者に関しても常に誰かが付近で術を発動させていなければなたない上に、その術者に何かあれば封印が解かれるから、人件費敵にもセキュリティ的にも成り立たない。

 故にそういうのは科学の範疇。魔術に出る幕はない。

 そしてその場合、佐原の爺さんが死んだからと言って、結界が解かれたりはしないはず。

 つまりは矛盾しているが、やはりその封印は佐原の爺さんが行っていたという事になる。


 ……という事はだ。


「……この世界の魔術の事、知ってたのか?」


 少なくとも地球の魔術で、魔術による封印なんてのを行うのは不可能だ。

 まあ亡くなって術が解けるというのなら、完全な自立化はできていないのだろうけど、それでもこの魔術テクノロジーをある程度流用しでもしない限り実現は不可能。

 そしてその憶測が正しかったとすれば、佐原の爺さんはこの世界に来た事があったのだろうか?

 そしてこの世界に渡る効力を持っていた術式が記されているその魔道書を封印するに至った。

 そういう事になるのだろうか?


「……まあそれは俺が考えても仕方が無い事か」


 というよりも……考えない様にした。

 この仮説がもし本当だとすれば、一つ確定する事実がある。

 それはあの魔道書の効力が何処かに飛ばすではなく、確実にこの世界へ渡るための転移術式であるという事。


 稀ではあるが、何処かしらに対象を飛ばすなんていう効力を持った術式も存在するのだ。まあ稀ではあるため、そこに飛ばされたらそこに飛ばす術式なんだと考えるのが常識。そして佐原の爺さんの事が確定してしまえば、その常識以外はほぼ起こり得ないという事になる。


 そこから導き出される事は……あの魔道書の中身を知る者であるならば、この世界へ渡る事ができるという事実。


「ちょっと待て。だったら……いや、それは無いか」


 佐原の性格からして、そんな異様な物をなりふり構わず教えたりしない。自分だけが使える物として、自分だけが知る知識として保有する筈だ。


 そしてその佐原はあの魔術の詳細を知らない。そのうち知れると思っているかもしれないが、俺が元の世界に戻らない限りそれは知り得ない。結果的に俺が完全に行方不明扱いになって、結果的に実質的に文字通り人一人を消す魔術である可能性を認識をせざるをえなくなる。


 そしてそういう可能性が孕んでいる何が起きるかまるで分からない物を、これ以上誰かに……ましてや自分に使うとは思えない。

 カツアゲとかそういう次元では無く、結果的に誰かを自らの手で殺してしまったかもしれないという可能性。そんな物を抱いた状態で使える訳が無い。


 まあ封印されていて、転移系の魔術である事意外本当に何が起こるか分からない様な代物を俺に振るった時点で考えなしの馬鹿野郎……というよりややサイコパス染みてる奴だという事は分かるが……何が起こるか視覚的に分かった以上、アイツは多分一線を超えない。少なくとも自分では越えようとしてこない。

 普通の神経をしていれば……越えられる訳が無い。


「……越えられる訳が無いんだ」


 俺は最後にそう呟いて、もうこの事は考えまいと目を瞑った。

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