第八話(リャーンという世界)
さて、この世界、リャーンについて語ろうか。
地球より、はるかに小さい惑星で水と空気がある。
そして、色が違う。
大地はオレンジで水は緑、植物は透明。
水と植物の色反対じゃないかと思った。
土がオレンジなのは普通になじむ。
地球の道路で塗装されたものがあるからか、そんな違和感ないのかもしれない。
水は飲む分には緑茶だと思い、洗濯物する時は変な感じだが、
色付く訳ではないし綺麗になるんだから問題はない。
体洗う時は温泉の元とか入れたんだと思うことにする。
でも、植物でちょっと困ったことがあった。
花とか木々が透明だけど、よく見ると形が分かる程度に不透明な部分があるんだが…
当たり前だが良く見ないと分からない。
何が言いたいかというと。
例えばお店の透明のガラスが開いていると錯覚してぶつかりそうになったり、
ぶつかったという経験は誰しもあると思う。
つまり…ぶつかりました。
草ならまだしも木は痛かった。
慣れたかなーとか思っても、うっかりぶつかりそうになって、
リーダーや奥さんに引っ張って助けてもらった。
(はあ…仕方ない。出掛ける時は私に捕まれ)
最終的にリーダーに呆れ混じりに言われました。
リーダーとしては俺の考えが筒抜けになってしまうと俺が負担になるだろうと配慮して、
接触するのを控えるようにするつもりだったそうなので、出鼻をくじいてしまいました。
後、食物が透明だと不思議だ。
出されても器に生のままだと、本当に食べ物あるか分からない。
木の器だと器自体も一瞬分からない。
そして、口の周りに食べかすとかあっても気づけない。
(あらあら、ついてますよ)
奥さんに仕方のない子ね~と微笑まれながら拭かれた。
恥ずかしいやらちょっとドキッとしたやらで慌てているとリーダーにどつかれました。
(っ…馬鹿者…)
一回睨まれてすぐ視線をそらされた。
次の食事から俺が食べる物は全て着色されていた。
まあ、それでも、一回たまたま付いていた時があってリーダーに拭かれた。
食べ方は汚いほうではないと思うんだけど付いてしまい…。
また睨まれるかなとびくびくしてしまったが。
(気をつけなさい)
そして視線をそらされたけど、睨まれなかった。
あれ?何でだろう。
そして奥さんが意味深に笑っていた。
何でだろう?
あっそうそうリーダー達と触れ合うと意思が共同になるって言ってたけど、
俺の考えは筒抜けでも、リーダー達の考えは全部は分からない。
考えている言葉と伝えようとしている言葉が別になるらしい。
えっと、プライベートはリーダー達は守られるって言ったら良いのかな?
あっそうだ!サトリと言う妖怪をご存知かな?
人の心を見透かす妖怪で、それが、リーダー達で、俺は読まれちゃうほうと考えてもらえれば。
(妖怪とは失礼だな)
(本当ですわ)
って冗談でからかわれました。
俺も例えがそれしか出なかっただけで、妖怪だとは思っていませんって知ってるからね。
なぜそうなるかは分からないが、
異種族同士ではやはり、構造が異なるからそうなるんだろうと。
そして、文明は発達していないらしく農業のみで生活している。
やっぱり働かざるもの食うべからずというように働かないと思って農業を手伝ったのだが、
手つきの危ういこと危ういこと。
こんな時佐久間君や森永さんが学校に作った畑を思い出す。
「自給自足できるようでないとね!」
と園芸部と共同で作っていたのだ。
そしてそれを収穫したら近くの施設に寄付したりしていた。
佐久間君も森永さんも手際よかったな。
でも肥料の知識とか水の通し方とかの知識は話していたのを少し覚えていて、
ちょっと役に立てたかもしれない。
2人が此処にいたらもっと役に立ってたろうに…。
また、俺はリーダー達の村でしか生活していないが都市部と呼ばれる場所もあるそうだ。
人口が多くなった以外は特に生活は変わらずで、農業での生活。
そちらは人口444人となんて不吉な。
ちなみにこの村の人口56人を足すと500人になる。
後500人居て、10個ほどの村に分かれているそうだ。
どうやら1000人ぴったりいるらしい。
地球の人口に比べるとかなり少ない人数しかいないのだ。
そして、リーダー達のような言葉の分かる知的生物は他にいない。
むしろ生物がリーダー達以外には植物しかないそうだ。
そう、動物がいないのだ。
なので、自然とベジタリアン生活。
うん、正直つらかった。
肉食ではないけど、やっぱ食べられないと食べたくなる。
佐久間君と森永さんも肉がない世界については語っていなかったな。
草食動物だけの世界だと食物連鎖の関係ではわかりやすい。
万が一植物が進化して動き、身を守る為に攻撃ようになったりしない限り、外敵はいないのだ。
そして、温厚で平和を好むので争いごとはない。
いや嘘だった、小さな諍いはあるが、殺戮とか戦争というものはない。
すべて話し合いで終了させているそうだ。
話し合いで終了とかそんなことが出来るのは人数が少ないからもあるだろうが、
それでも分かれて住んでるし、領地問題とかあるのではないかな?
いやでも、皆、贅沢しようとかなく征服しようとかの意識事態がない。
地球でも一部は平和に暮らしてるけど、その一部でも色々ある。
皆仲良くなればいいけど難しい。
色々考えてしまうな。
後、異世界から人とか動物…まあ生き物がくるのはよくあるらしい。
俺が778番目にきた生き物らしいからかなり歴史ある。
何十年かに一度くらいのペースできている。
因みに年数の数えとかはだいたい地球と一緒。
でも、たまに連続してくる事もあるそうだ。
前回はちょうど二年前…二年前か…あれやっぱり…。
(久保、またセブン達について考えているのか)
そうそう、二年前に来た旅人は俺の発言によりセブンと呼ばれるようになってしまった。
なんか…うん、ごめん。
(久保は気づくと元の世界について考えているな)
(働いている時は特に佐久間、森永というお二人についてですね)
(この世界について考えるときはセブンの事だな)
(ふとした瞬間では家族やお友達についてです)
(お前も…はやく帰りたいんだろう…)
リーダーも奥さんも捨てられた子猫のような目で見ないでくれ。
「正直に言うと、やっぱホームシックにもなるし、帰れるならすぐ帰りたい」
でも、リーダー達と離れるのは寂しい。
せっかく仲良くなれたのに帰ったらもう会えないかもしれない。
(久保君は…私達を喜ばせるのがうまいな)
(本当に)
この日は3人でしんみりとしてしまいました。