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第十三話(喧嘩)

異世界の料理の話をあらかたして、森永さんが頬を染めながら笑った。


「えへへ、実はね。大久保君とは僕達ずっと話してみたいと思ってたんだ!!だからこうして話せて凄く嬉しいんだ」


「えっ俺と!?」


「ああ、大久保君は文化祭の時毎回来てくれていたし、一度もからかわなかったからとても嬉しかった」



「そんな人たくさんいるって」


「ううん…居なかったよ。君だけだったんだよ」


「ああ、文化祭に展示を見に来た人達は面白いとは言ってくれるが、本気でやっているとは思わないさ」


「いやいや、あんなに熱意ある展示を見て真剣じゃないなんて思わないわけないじゃないか」


「ありがとう、でも、内容が内容だからね」


「そんなことないって!」


「大久保君は珍しい人なんだ、俺達に挨拶してくれたのも、天気の話ふられたのも初めてだった」


「前に僕達2人がロッカーに入って身を潜めていた時、庇ってくれたの聞いたよ」


「えっ庇った?…って言うかちょっと待って、遮って悪いけど質問。ロッカーってこの掃除用具が入った、どう見ても一人しか入らない狭いロッカーに2人入ってたのか」


俺の真後ろにあるこのロッカーをついつい指差してしまう。


「ああ、一応掃除用具は全部出した。まあ密着はしてしまうが、森永は小柄な部類だ。ほどほどに空きスペースもある」


虚を疲れたような顔をする佐久間君。


「満員電車に比べたら余裕だよ~あっ!一緒に入ってみようよ」


先までの切なそうな顔が一転して楽しそうに提案する森永さん。


だが、待て。


「そっそれは不味い!」


あんな狭い中に入るとか密着とか何の試練だ。


「えっ…僕とは嫌…」


「そういう事でなく森永さんが嫌とかでなく。男女が一緒に入るのが問題で」


「良かった~嫌ではないんだね~。うーん仕方ないじゃあ佐久間と入る?」


「スペース的にキツいが…まあ入れない事はないし入るか」


「嫌だ」


「即答…俺の事嫌いか」


「いやいや、そういう問題じゃなく…嫌いとかじゃないからな。でも、何が悲しくて男同士でロッカーに入らねばならないんだ」


「じゃあやっぱり僕と!!」


「それは俺がドキドキしてしまう為駄目です」


「えっー」


「…そういう特異な状況を作ったら、異世界に行けるかなとか思ってやったんだよな?」


「「ビンゴー」」


「そうだよな。2人がやる事って最後そこに行く為だからな。でも、若い男女がそんな所に入ってたら駄目だから!」


「1人で入って何事もなかったから一緒に入ったんだよ」


「2人で入っても何もなかったがな…3人で入ったらもしかして!」


「3人も駄目です。ロッカーは人が入るものではありません」


そうだコレが一番大事。


「だって扉に似てるから間違えて異世界に繋げてるかもしれないよ」


「うっかりさんがきっといるはずだ」


「それなら開けて分かるだろう。潜まなくても確認だけでいいし」


むしろラブハプニングは起こるかもしれないが…

それよりも、


「異世界なら真夜中の教室でこっそり開けた方が繋がってそうだ」


学校の怪談的な感じで。

うわ…絶対嫌だ。


「「…!?」」


2人顔を見合わせ再び此方に向き直って


「確かに扉なら潜まなくてもいいな」


「夜の教室、そんな事考えてなかったよ」


目を輝かせながら言った。


「でも、教室に入り込むってどうしよう」


「校則でも7時までだしな。同好会で遅くなる時って…」


基本2人とも真面目だ忍びこむってでてこないな、まあ言ったら、

やりたいけどどうしようって悩むだろうから言わないが。


「星の観察したいから合宿したいとか言えばいいんじゃないかな」


出来るか知らないが前に「宇宙と異世界について」って話して文化祭でも天文部?

ってくらい調べてたし。


「合宿…うん、やろう!」


「先生の所に行って許可を貰ってくるから大久保君待っててくれ」


「僕も準備してくるから大久保君待っててね」


そう言って駆け出した2人の背中を眺め


「まさか、俺も合宿参加なのか…」


と呟いていた。

そんな訳ないよな、別に会員でもないし…うんまあ、

待って「後は頑張って」と言えばいいか。


俺、あの2人程熱意ないから邪魔になりそうなんだよな。


でも待ってたら変に期待されてしまうかもしれない。

軽い気持ちで関わったら失礼になるし、此処は何も言わず立ち去ってた方が良いのかな。


約束、まあ一方的にだが守れないのは申し訳ないが、俺が悪い奴って事で。

よし帰るかと立ち上がり、ふっとロッカーを見た。

異世界へ繋がる道か…本当に繋がってたら喜ぶだろうにな。

と思いながら開けて見たら、そこには青空が。


閉めた。


一瞬にして閉めた。


心臓がバクバクいってる。

とにかく、もう一度あける勇気はない。


でも、これは2人を呼んだほうがいいのだよな。

そして2人を呼びに行こうと教室を出たら


「くーぼーくんwww」


近藤君がいた。


「あっ近藤君どうしたの?」


何時もは教室に2人がいるから絶対近寄らないのに。


「うんwww久保君が昨日電話してきたじゃんwすっげー気になるから今日話そうと思って久保君家お邪魔してたんだけど中々帰ってこないからさ…」


「えっ今何時って…」


暗くなってきていたのは知っていたがもう8時前。

あれ?鐘なったのに気づかなかったのは分かるが、

先生が巡回して帰るように促すはずなのに来なかったよな?


「先生来なかったな…」


「アハハwww来てたと思うけどあの女に睨まれて注意できなかったんじゃねwww」


さっきから思ってたけど、近藤君、目が笑っていない。


「久保君が珍しく馬鹿な話しに加わって盛り上がったから、邪魔されるの嫌だったんじゃねwww」


…棘がある。


「近藤君、その言いたい事があるなら…」


作り物の笑みが消え、真顔になる。



「…なんで、あいつらに先に話すんだよ」



決して、荒げることはないが、怒気を含んだ声が教室に響いた。



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