表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ショートショート集

しかえし

作者: 鳴海

「相談したいことがあるんだ。聞いてくれないか?」

 部活終わりの放課後。駅近くのファミレスに来ていた。

 友達から相談を受けることなんてまずないから、いささか緊張していた。最近の彼の顔は以前よりやつれていて、部の仲間もしんぱいしていたから、なおさらだ。

「まずは、事の成り行きから説明しようと思う」席に座るやいなや、彼は話し出した。

「俺に双子の兄がいるのは知ってるな」

 僕はうなずく。

 兄の方も一緒の部活動に所属しているので、もちろん知っている。

「兄貴に彼女が出来たことも知ってるな」

 これも、知っていた。部のマネージャーだから自然と噂がながれてきた。

彼の話を要約してみると、つまりはこうだ。俺の方が先に彼女のことを好きになったのにズルい。告白の準備をしていたのに、奴はそれを見越して、先に告白しやがった。いつも割を食うのは俺の方だ云々。

 どうやら、長年の恨みや悩みが鬱積して爆発したようだ。しかし肝心の本題が見えてこない。

 しゃべり終えてから、黙ったままだったが、いきなり宣言した。

「俺の×××をちょんぎってくれ」

 いきなり何を言い出すんだこいつは。頭がおかしくなったのか。公衆の面前で。

 僕の怪訝そうな顔を見て、不安に思ったのか、彼は

「おい、覚えてないのか? 俺たち双子のこと」と言った。

 そう言われて思い出した。

 一卵性双生児。遠隔感知能力。

 三か月前。練習中の不注意で弟の方にボールが当たったと思ったら、兄の方が痛がっていて、あるはず方に傷がなく、無いはず方に傷があり、血が流れていた。

 つまりは、そういうことだった。

 だがいったい、なぜお前のあれを切る話になるのか僕にはわからはい。彼は滔々とまた語り始めた。

「さっきメールが来て、今日は家には帰らないつもりだから、親をごまかしておけ、と書いてあった。そして二人とも今日は部活にきてなかった。分かるだろ? しかえしてやるんだ。だから……頼むよ」

 言い終えた後にポケットから鋏を取り出して、頭を下げてきた。

 僕はしぶしぶ了解して、トイレの個室に二人で入った。

 ……個室なのに二人。この状況でもう……何か恥ずかしいのに今から……

 やはり止めよう。そう思い立ち話を切り出そうとしたら、もうベルトはずし終えてるじゃないか。気が早いぞ。

「さぁ思い切りやってくれ」

 いわゆる、あれを露出して、じりじり近づいてくる。

 僕は手に持った鋏とあれを交互に見やって決意した。

「き、汚らしい粗末な物を向けるな、この変態」

 突き飛ばそうとして、勢い余って、蹴り上げてしまった。

 その隙に一目散に逃げ出した。

 男子トイレの前でもう少し考えるべきだった。

 家に着いたら温かいお風呂に浸かってすぐに寝た。




 結果として、彼の頼みには答えたことになったらしい。

 兄の方はふられてしまったらしい。

 まぁ良かったということにしよう。

 …………最近、背後から妙な視線を感じるが気のせいだろう。

 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] これは新しい設定ですねー! 話も予想外で非常に楽しめました!
2012/02/04 19:07 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ