一話目 日常
「・・・・・・だるい」
朝授業が始まる、ギリギリに高校に着いてから、この一言を呟くのが日課になっていた。
もちろん誰かに向かって発した訳じゃない。単なる自己嫌悪の代物だ。
朝起きて、学校へ行って、勉強させられて、行きたくもない部活へ連行されて、(僕は帰宅部レギュラーだが)帰って夕飯食べて寝る。
毎日毎日同じことの繰り返し。
これで飽きるな、なんて誰にも言えないだろう?もはや不健康男児として、完全に身体が機能してきたとき、さらなる頭痛の種が駆け寄ってきた。
「おはよーさーん。どうしたどうした、そんな世の中の不景気全部突っ込んだみたいな顔して」
一体どんな顔だ。百文字以内で言ってみろ。
この馴れ馴れしい、軽薄そうな男の名は白河啓吾通称ケイハク。
名は体を表すをそのまま実行したような男だ。非常に不本意だが、一応幼なじみとして十数年来の付き合いがある。
ちなみにこいつも僕も、全く同じ黒のブレザーとズボンを着ている。
別にペアルックなんて趣味はなく、たんに制服というだけだ。
「とりあえずなんの用だ。用が無いなら席に戻ってくれ、僕はこれから二度寝をする予定なんだ」
「おいおいそんなつれなくするなよ。大体なんだ、その自己チューな理由は」
「朝の二度寝は頭の働きを良くするだけでなく、目を覚ますのに最も効果的なんだよ」
「なんだそりゃ。また爺さんの影きょ・・・・・・」
「いや、僕の持論。用はそれだけか? なら再三言うけど席に戻ったほうがいい。そろそろ担任が来るだろ?」
何故か表情が後悔の念に色づけられたケイハクは、しばらくどうするか逡巡していたようだったが、とりあえず保身的行動に出ることにしたらしい。
去り際に一言なにかを言って、こちらをうかがいながらも席に座った。
それを待っていたように教師がクラスに入ってきた。いつも通りのの挨拶をいつも通りに出席を取って、いつも通りに授業が始まった。
けど、僕は退屈な前口上なんて聞いていなかった。
なんであいつはあんな顔をしてたんだ?
あいつはさっき何を言ったんだ?
最後の一言がしこりになって、他のことが一切考えられない。
あいつがあんな顔するなんて珍しい。実に久しぶりだ、“あの時”以来じゃないか?
一体何を・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・ああ、そうか。分かった。
『すまん』だ。
「・・・・・・だるい・・・な」
主人公登場です。今後彼を中心にどんな話が繰り広げられていくのか! それは読んでのお楽しみ、ということで。次回第ニ話タイトル未定(笑)お楽しみに。