これから
「バイト、ですか?」
真奈さんの提案に私は首をかしげる。
「そう、私がやってるカフェ覚えてるかな?
最近忙しくなってきたから、二人に手伝ってもらおうと思って」
私は一昨年彼女が開いたカフェを思い出す。
このアパートからも遠くはなかったはずだ。
「あの、バイトって保護者の許可とか必要なんじゃありませんでしたっけ?」
「あー、大丈夫じゃない?身内だし。
仕事はお手伝いで、給料はお小遣いみたいな?」
楓の問いに真奈さんが答える。
しかし、私は彼女の言葉に少しひっかかった。
「え、給料でるんですか?」
「え、まぁ、バイトだし?」
真奈さんが当然のように答える。
彼女には、この部屋も家賃も代わりに払ってもらっている。
さらにお金をもらうのは少し申し訳ない。
「まぁまぁ、貰っときなって。結局他の人雇ってもでるお金だしさ。
それで、働いてくれるのはOKでいいのかい?」
「私は大丈夫ですよ」
楓が答える。
「瑠海は?」
「まぁ、楓が良いなら」
「よし!決まりだね」
私の言葉を聞いて、真奈さんが小さく手を叩く。
「二人には、夕方頃に働いてもらおうかな。
平日の昼間とかに働いてたら不審に思わちゃうからね」
確かに、学校がある時間帯に働いていたら必ず何か聞かれるだろう。
「わかりました」
「シフトとかは決まったら連絡するよ。じゃあ、私はそろそろお暇するね」
そう言って立ち上がる真奈さんに私は声をかける。
「あの」
「?」
「お母さんから、なにか連絡はきましたか……?」
「……いいや、叔母さんからは何もきてないよ」
「そうですか」
母は、私がいなくなっても真奈さん達に伝えてすらいないらしい。
私はため息をついた。
「なにか連絡がきたら伝えてください」
「了解」
真奈さんを見送った後、楓に声をかけられた。
「ねぇ、瑠海……やっぱりショックだった……?」
「まぁ、ちょっとね。
お母さんに全然心配されてないんだってね」
「瑠海……」
「でも、大丈夫。
だって本当に心配されてたら、この生活も終わっちゃうでしょ?
私は、楓ともっと一緒にいたいよ」
そう言うと、楓は安心したように息を吐いた。
「うん、私も瑠海と一緒にいたい」
私は楓に一歩近づく。
楓のほうが身長が高いため、私は少し背伸びをして口づけをした。
唇を離して見つめ合い、また唇を重ねる。
楓と一緒にいるこの日常を、このままずっと続けたいと思った。




