パートナーの距離
目が覚める。
もう朝だ。
眠れそうにないと思っていたが、案外寝れたらしい。
左に顔を向けると、楓はまだ眠っていた。
「ん、──おはよう」
「お、おはよう、楓」
どうやら起こしてしまったらしい。
「起きる?」
目覚めだばかりの楓にそう問いかける。
「うん」
二人で朝食をとる。
昨日買ったグラノーラに牛乳をかけて食べた。
起きてからあまり会話をしていない。
少し気まずい。
まぁそう思っているのは私だけかもしれないが。
楓に話しかけにくいのは、昨日の夜の事が頭に残り続けているからだ。
楓の気持ちが知りたい。
でも、どう聞けばいいのかもわからない。
私には『楓からもキスしてくれたけど、楓も私の事好き?』
とそのままストレートに聞く勇気はない。
ただ、実際一番気になっている所はそういう事だ。
どう聞くか考えているうちに、朝食を食べ終わってしまった。
「勉強しよっか」
「うん」
楓に声をかけられて私は頷く。
勉強中はあまり喋らない。その間に考えよう。
二人で勉強し始めて二時間ほどたって、私は意を決して楓に話しかけた。
「ちょっと休憩しない?」
「そうだね」
「楓さ、」
「?」
「その、昨日の夜のことだけど
ご、ごめんね。急にキスして」
私はうつむきながらそう言った。
楓の顔を見る勇気がない。
「でさ、その、楓からもしてくれたじゃん?キス。
楓は、どう思ってるのかなって気になって」
私は楓の方を見た。
肩あたりまでのばした綺麗な黒髪が目に入る。
しばらくして、楓が答える。
「その、瑠海にキスされた時はびっくりしたけど、嫌じゃなかったよ。
むしろ嬉しかったし。
だから、私からもしたの」
「そう、なんだ」
もしキスが嫌だったなら、パートナーとしての距離も考え直さなければならなかったが、ひとまず安心した。
そう思っていると、楓に声をかけられた。
──「今からでも、する? キス」
「!?」
私が混乱して答えられないでいると、楓が私の方に近づいてくる。
楓の顔がはっきりと見えて、昨日の光景を思い出す。
体温が上がっていくのがわかる。
楓の手が私の肩にふれる。
私は小さな声で楓に言った。
「いいよ……」
楓はそれを聞くと、私に顔を近づける。
「目、とじて」
楓が囁くように私にそう言った。
言われたとおり、私はゆっくりと目をとじる。
少しして、唇にやわらかいものが触れた。
唇から、彼女の体温が伝わってくる。
昨日もした事のはずなのに、全く違うもののように感じる。
10秒ほどで、唇が離される。
「もう一回していい?」
楓が私にそう言う。
「……いいよ」
開いた目をとじて、また唇から彼女を感じる。
先ほどよりも少し長いキスだった。
「もういっ──
楓がまた聞く前に、インターホンが鳴った。
「……」
「……私出るね」
楓がそう言って玄関の方へ行く。
私もそれについて行く。
扉をあけると真奈さんが立っていた。
「やあ、差し入れもってきたよ。おやつの時間に食べてねー」
「あ、ありがとう、ございます…」
「あれ?なんか二人とも顔赤くな──あっ、お邪魔だったかな?
うんうん、じゃあ私はこれでー、ごゆっくりー」
真奈さんはそう言って、持っていた袋を私達に渡すとすぐに行ってしまった。
「……」
「……」
朝よりも気まずいじゃないか。どうしてくれるんだ。




