2/5話『電車内でエッチな行為はご遠慮ください!』
「頼む、昨日のは夢であってくれ……」
通学電車に乗る直前のホームで、俺はバッグを抱えながら現実逃避をしていた。
昨日、あの出来事。地味子先生だと思ってた担任が、まさかの超絶セクシーなお姉さんモードで俺を翻弄してきたやつ。
「今日こそは何も起こらない……はず。うん、何もない。普通だ。普通がいい……!」
何度も心の中で唱えるけど、足は妙に落ち着かないし、視線はきょろきょろさまよう。
その時、甘い香りがふわっと漂ってくる。
この香水の匂いは――。
『ま、まさか……!?』
俺の鼓動は一気に加速。
電車がホームに滑り込む直前、背筋に冷たい汗がツゥと流れた。
「もう、勘弁してくれって……!」
そして電車のドアが開くと、満員の人波に押し込まれるように車内へ乗り込む。そんな俺の目の前に、“例の”山田先生が現れた。
『――って、なんで昨日よりもさらに大胆な服装なんだよっ!?」
胸元のボタンは一つ多く外され、ピタッとしたタイトスカートがそのプロポーションを容赦なく強調している。
『先生がそんな格好で電車乗っちゃダメでしょ!? いや、眼福だけど! でも心臓もたない!!』
「……あら、偶然ね?」
先生が俺にだけ分かる声色で微笑む。その瞬間、脳内警報フル稼働。
『やっぱり夢じゃなかったァァ!!』
混雑する車内で身動きが取れない中、先生は俺の真正面。目が合うたびにニヤニヤと微笑むから、俺の視線は迷子になりっぱなしだ。
「あっ……」
電車が軽く揺れて、先生のバッグが俺の足元に落ちた。
「ごめんね、ちょっと取ってくれる?」
「あ、はい」
俺が条件反射でしゃがんだ瞬間——タイトスカートの裾がわずかにずれた、そして視界に飛び込んできたのは、黒いレースの……。
『絶対ワザと! 確信犯だコレ!!』
でも解釈一致! ありがとうございます!
エロい女教師のパンツスーツに黒下着は完全に俺の中で解釈一致ですけど!
顔を真っ赤にして一瞬フリーズした俺に、先生は口元を押さえてクスクス笑っている。
「ありがとう、翔太くん。優しいのね」
耳元でふわっと囁かれて、酸素が足りない! マジで呼吸困難レベル!!
その瞬間、電車がカーブで大きく揺れ、先生が俺に全力で倒れ込んできた。
『ちょ、待って待って!? 柔らかい! 近い! これはアウト!!』
胸元の柔らかい感触がはっきりとわかるほどで、俺は呼吸を忘れかけた。
先生は頬を少し赤くしながらも、楽しんでいるような微笑みを浮かべている。その視線が艶っぽくて、こっちの理性が試されてるとしか思えない!
「へぇ……翔太くんって意外と鍛えてる?」
その声は、甘くて、耳に心地よく、でも危険な香りがして全身に電流が走るようだった。心臓がバクバクと暴れ出しそうだ。
「チャ、チャリ通で鍛えてますから……」
蚊の鳴くような声で返した俺に、先生は唇を少し尖らせて「ふーん?」と答えると、まるで悪戯っ子のような顔を見せてきた。
「ふふ……じゃあ下半身もすごいんだ?」
『やめてぇぇぇぇ! 今そんなこと言われたら意識飛ぶから!!』
頭の中で全力ツッコミしていると、さらに追撃が来た。
「……生物学的にね、男の子がドキドキすると身体に出る現象を知ってる?」
艶やかな視線が俺の顔からススス、と下に向かう。そして白く細い先生の指が、俺のナニカに触れそうなくらい近づいてくる。その瞬間、俺の理性は大爆発寸前。
『ムリムリムリ! 限界突破!! 誰か助けて!!』
ようやく駅に到着するアナウンスが流れ、俺はその音に一瞬だけ救われた気持ちになる。
『……オレ、まだ生きてるのが奇跡だよな!?』
ホームに降り立った瞬間、ようやく全身の力が抜けて膝が笑いそうになる俺。だけど、まだ終わりじゃなかった。
人混みを抜けた先、駅構内のちょっとしたスペースで、先生が俺を振り返る。
「翔太くん、制服……乱れてるよ?」
そう言って、するりと近づいてくる先生。距離ゼロ。
いや、ゼロどころかマイナスだ!
鼻先が触れそうなほど近い距離で、ゆっくりと俺のネクタイを直してくれる指先がやたらと柔らかくて、香水の甘い香りが鼻をくすぐる。
「朝から立ちっぱなしで疲れちゃった? 足もケガしてるんだし、無理しないでね」
耳元でそっと囁くように言い残して、先生は軽やかな足取りで改札の向こうへ消えていった。
『俺の心臓……あと何回耐えられるんだ!?』
その日の午後。
生物学の授業が始まり、先生はいつもの地味な姿で教壇に立っていた。でも俺だけは知っている——あの小悪魔スマイルと挑発の裏側を!
「はい、今日は小テストを配るから、みんな真剣に取り組んでね」
先生が教室を歩いてプリントを配ってくる。
その姿はきっちりスカート、真面目な表情、地味メガネ。
なのに——あの電車での姿を思い出しただけで俺の脳内は大渋滞。
『いやいやいや、同一人物!? 切り替え能力どうなってんだよ先生!!』
受け取ったプリントを持つ手が震える。問題なんて頭に入ってくるはずがない。
視線を上げると、教壇から意味深に微笑む先生とバッチリ目が合ってしまう。
『ああもう、こっち見んな! 動揺するから!!』
結果は言わずもがな、赤点確定。返却された答案用紙の端に、小さな丸文字で可愛らしいメッセージが——。
『放課後、秘密の補習しちゃう?』
もう無理だ。顔が赤くなるどころか沸騰して、机に突っ伏したままジタバタするしかなかった。
『俺の平凡な日常、完全に終了……!』
放課後、バイト先のカフェで皿を拭きながら、俺は完全に魂が抜けかけていた。
頭の中は今日の出来事でいっぱいだ。
電車でのあの密着事故、赤点答案用紙に書かれた秘密のメッセージ……どれも男子高校生の理性をギリギリまで削り取るには十分だった。
「翔太せんぱーい?」
「……うぇ?」
「もう、仕事中にぼーっとして!」
ハッと振り向けば、後輩の桜井美咲がジト目で俺を見つめていた。
派手な見た目のギャル系女子だけど、内面は意外と純粋で一途。ぷくっと頬を膨らませて、上目遣いで見てくる姿が可愛すぎてズルい。
さらに無意識なのか、俺との距離をぐっと詰めてくる。
「なんか最近、顔がにやけてますよ? なにかいいことでも?」
「い、いやいやいや! そんなことないって!」
全力で手を振って否定する俺に、美咲は唇を尖らせたまま俺のシャツの裾をくいっとつまみ、
「ふーん……私といるのに考え事ですか?」
と、さらに追い打ちをかけてくる。
一瞬で冷や汗が背中をつたう。
「そ、そんなわけ……ない!」
「うそ。先輩、めっちゃ分かりやすいもん」
『俺ってそんなに顔に出るタイプ!?』
「なんなら、私でよければ相談、乗りますよ?」
そう言いながら、美咲は俺の腕に自分の腕を絡ませてきた。柔らかい感触が直に伝わってきて、思わず呼吸が止まりそうになる。
にこっと微笑んだその瞳は、完全に俺を試すように細められていた。
『無理だ! 先生のことなんて絶対口が裂けても言えない!』
苦し紛れに笑ってごまかすと、美咲は「むーっ」と頬をふくらませ、プイッと顔を背けてしまう。長い髪がふわりと揺れて、ほのかに甘いシャンプーの香りが漂った。
——そしてバイト帰り、駅に向かう道すがら。
人通りの少ない裏道で、女性と男性が言い争う声が聞こえてきた。
『……なんだ? この声、聞き覚えがあるぞ? それに、なんかトラブルっぽいんだけど!?』
振り返るか、それとも無視して通り過ぎるか——迷う間もなく、好奇心、不安、そしてなぜか少し期待する気持ちが背中を押した。
『これ、絶対ただじゃ終わらない気がする……!』
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女教師に黒レースの下着、いいですよね……
ガーターだとなお良きですわ(ド変態)
みなさんは何色がタイプですか?(巻き込んでいくスタイル)